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92.それぞれにサポートが

サファイア様の虹には神殿の人たちは驚いた。

しばらく神官6人でヒソヒソ相談している。だけど、

「白系統ではないのでケセランが現れなかったが、適任者だと他の現象で示したのだろう」

という判断になり、結局私たち3人が、別室に呼ばれて、少し待つ事になった。


なお、待っている間に、ミルキィ様と私の周りに浮いていたケセランは姿を消した。

サファイア様の虹のは、金属を手放した途端に消えている。


『ねぇねぇ、きみはなんて言う名前なの? ぼく、気になるんだ』

「エーリテ、駄目だったら」


サファイア様は、なんだか肩のあたりに出て、私と話をしたそうな精霊を焦ったように止めている。

ミルキィ様はつまらなさそうに無言で座っている。


私も、黙ってじっと待っている方が良さそうだけど・・・。

この後、どうなるんだろう。心配だ。


カチャ、と扉が開いた。

ハッと見ると、神官に連れられて、入ってきたのは・・・。


「メーメ様!」

嬉しそうに声を上げ、立ち上がって駆け寄るミルキィ様。

ものすごく分かりやすい。

先ほどまでの詰まらなさそうな様子から一転、キラキラした輝きさえまとって現れたメーメ様を潤んだ目で見上げている。


「ミルキィ。適任者になったと聞いた。流石だな」

メーメ様が優しく甘い顔をしてミルキィ様に声をかけられる。

ミルキィ様は頬を染めてうっとりとした。


「きみは素晴らしい女性だ。私の自慢だ。きみのお陰で、私も神殿の機密部分に入ることができるそうだ。どれほど感謝しても足りない。可愛い愛しいミルキィ」

「・・・嬉しい」


「相変わらずだな、メーメのところは」

メーメ様の先に部屋に現れた貴族令息が苦笑している。初めて見る。どなただろう。

なんだかとても個性的な人だけど、顔立ちは整っている。他と違う。

背がものすごく高くて、片眼鏡をかけている。いかにも知的。

知的と言うと、メーメ・ヤギィ様だ。そのメーメ様は『一人でいたい学者タイプ』っていう雰囲気なのに対して、この人は『色んなところに行って知識を得ていく』というか、なんか行動的な印象。なんか日焼けしていて体格も良い。

うん。攻略対象者っぽいイケメンだ。


でも、それより。

トラン様がおられる。

私も立ち上がる。私もミルキィ様みたいに駆け寄りたいけど、そんな急な行動を今私がしていいのか分からない。

だけど嬉しいと伝えたくて、笑顔で見つめる。

私に笑ってくださった。お顔が見れて私はほっと安堵した。


「サファイア。きみ、何したんだ」

「まぁ、失礼な」

一方、見たこともないご令息と、サファイア様が仲良さそうに、少し言い合いを始めている。


「指名を受けて、適任者だと判断されただけ。私が名乗り出たわけでもないのよ」

「相変わらずだなぁ」


「そんな事言って。・・・呆れてしまった? アウル・・・」

「俺がそんなヤツだと思っていたのか。失礼だな」


「冗談よ、冗談」

「分かっている」


アウル、と呼ばれた貴族令息はサファイア様のところに。軽い言い合いをしながらも見つめあってもいて、仲が良さそうだ。


「キャラ・パール嬢」

トラン様も私のところに来てくださった。

「無事でよかった。適任者に選ばれたらしいな・・・」


「はい、そうみたいです」

「何をするのか、説明はあったのか?」


「いいえ、まだ・・・」

答えて、神殿の人を見る。だけど神殿の人たち同士で連絡事項なのか、話をしている。


「トラン様、お会いできて嬉しいのですが、トラン様はどうして?」

「きみが適任者に選ばれたので、サポート役が必要だと言われて、俺に話が来た」


「そうなんですね」

「あぁ。来れてよかったが、他の皆様の様子を見ると、婚約者にあたる者が選ばれているようだな」


「そうみたいですね・・・」

恥ずかしいと思いつつ、ちょっとトラン様に近づいてみる。

「・・・」

トラン様も無言になる。


「あそこは初々しいな」

「私たちにあんな時代ありましたでしょうか」

と、サファイア様とアウル様というご令息が私たちの様子を観察していた。


「あの、トラン様・・・」

「あぁ」


「あの、サファイア様と一緒に居られる方は、どなたでしょうか・・・」

「あぁ」


私の小さな確認に、トラン様は気づいてサファイア様たちを見て、それから部屋の中を見回した。

「きみが知らないのは、あの方だけだな?」

「はい」


「紹介しよう。こちらへ」

トラン様が少し手を引いてくださって、サファイア様たちのところに少し近づく。


「アウル・フクロウ様。紹介させてください。彼女はキャラ・パール嬢。平民で今年から学院に通っている生徒です」

「あぁ。初めまして、キャラ・パール嬢。アウル・フクロウだ。よろしく」

サファイア様の隣の令息が、私に笑顔を見せて挨拶してくださった。


「初めまして。キャラ・パールです。どうぞよろしくお願いいたします」

「あぁ」

「キャラ・パール嬢。こちらがアウル・フクロウ様。俺の2つ年上、チュウ・ネズミン様と同じ年の方だ。アウル様、キャラ・パール嬢はポニーやスミレ・ヴァイオレット嬢と同じ年齢です」


「なるほど。この中では、俺とサファイアが一番年上だな。17歳だ。メーメたちが一つ下で16、トランは15。キャラ・パール嬢は14歳か。俺たちが14だった時、こんな風だったのかな、なぁ、サファイア」

「どうでしょうか。私たち、幼少期より色々ありましたから・・・」

サファイア様が少し言い淀みつつ答えている。


「そうだな。きみに色々巻き込まれた」

「まぁ」


「お陰で俺も鍛えられたから、それで良いんだが」

「・・・」

サファイア様が少し視線を落とされたので、アウル様が優しく顔を覗き込むようなことをされた。

「!」

気づいて顔を赤くしたものの、見つめ合うサファイア様とアウル様。


このまま見ていていいのか。

キスとかされそうな甘い気配が・・・。


トラン様が私の腕を少し引くようにして、そっとそこから離れてくださった。

促されて無言で、ソファーに並んで腰かける。

私とトラン様で、年上の方々の仲睦まじい様子をみる。なんだか互いをチラチラみて落ち着かなかった。

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