表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/143

91.適任者選び

不安な気持ちのまま、しばらくそこに留まっている。

ミルキィ様はじっと周囲を見つめておられる。

サファイア様はなぜか微笑みさえ浮かべて余裕のご様子だ。


「お待たせしました。前の方から、順番にこの金属を持っていただきたい。地下神殿に異常が見つかった件、お聞き及びの方もおられることと思いますが、この金属で、適任者か判断いたします。適任者と私たちが判断した方には、残っていただき、修理の依頼をさせていただきます。また、今回適任では無いと判断された方は、すぐにお戻りいただきますので、ご安心ください」


神官の男性が6人も現れて、一人がこんな説明をした。

皆が不安そうにざわざわと動く。


「どうぞ」


一番前にいた女の人に、さっそくその金属を持たせたみたいだ。


「なるほど、ではあなたは戻っていただいて大丈夫です。この度は急な招集に応じていただき有難うございました」

「え、あ、はい」

拍子抜けしたような安心したような声があがる。

それでも一人の神官さんに誘導され、私たちの後ろ、小さな丸が描いてあるところに立たされる。


「忙しいところ申し訳ありませんでした。ご協力感謝いたします」

「いいえ、どういたしまして・・・」

少し苦笑を浮かべて、女性が笑う。

トン、と神官の人が壁を叩くと、女性の姿はスッと消えた。


驚いたけど、状況から考えると、きっと初めにいた場所に送られたんだろう・・・。

私たちが学院から突然この部屋にきたのと同じ仕組みだ。きっと魔法。すごいな。


***


前にいた人から順番に金属を渡されている。そして、今まで全員が帰っている。

ドキドキしてきた。

まさか残ってしまったらどうしよう・・・。


「あら? あなたは、白系統ではありませんのね・・・」

帰る事になった一人が、私たちの傍を通り過ぎながら、不思議そうにサファイア様を見つめた。


サファイア様は困ったように微笑んでいる。


不思議そうにしながら、どこかおっとりしたその人は、神官の人に促されるままに白い円の中に入り、姿を消した。


チラ、とサファイア様を見る。

私の視線に気づいて、サファイア様は気まずそうに視線を逸らせた。


それから、ミルキィ様を私は見た。

サファイア様を、不思議そうに首を傾げて見つめている。ちょっと睨んでいるかのようだ。


あれ。そういえば、今まで帰って行った人たち、なんだか雰囲気が似ているなぁ。

ちょっと独特にのんびりしているようなところがあるというか。マイペースというか。


「もしかして、全員、白系統なのでしょうか?」

気になって、呟いてみる、が誰に聞いて良いのか分からない。


サファイア様もミルキィ様も黙っている。


先ほど女性を送った神官の人が私の呟きを拾ったようで、私にニコリと笑んだ。

「そうだよ。神殿に関わる人は、白系統に決まっている」


え。サファイア様は違う系統らしいです?

そう思って、チラ、とサファイア様を視線で示すようにすると、その神官の人も、少し首を傾げつつ、笑みを浮かべたまま前に戻っていった。


「サファイア様って、ものすごいのですか?」

と話題にした手前、気まずくなってサファイア様本人に聞いてみた。

「え、えぇ、まぁ、色々と功績を上げたので、その結果ですわ」

とどこかツンツンしてサファイア様は答えてくださる。


『フフ』

小さな笑い声が聞こえた。


え。

聞き間違い? 驚くと、サファイア様の左肩に・・・。

「! 精霊!」

「え、あ、駄目よエーリテ!!」

私の驚きに、サファイア様はハッと驚いた。


「精霊ね・・・? 時の精霊、エーリティシモ。どうして?」

ミルキィ様も目を丸くしている。


「偶然! 仲良くなったの! 友達なの!」

「まぁ・・・」

サファイア様はどこか必死で左肩を抑えようとしたが、エーリテという名前らしい、半透明のお星さまみたいな形の精霊は、ふわっと嬉しそうに前に出てきた。


『あれ? きみ、なんて名・・・』

私を、キラキラした目で見つめてくる、この精霊は・・・。

「エーリテ! 戻って!」

サファイア様の悲鳴じみた声に、ヒュッと精霊の姿は消えた。


驚きのまま、私はサファイア様を見つめていた。

だって、今の精霊・・・乙女ゲームの、主人公をサポートしてくれるお助け精霊、そのままだった・・・。


「驚かせて、ごめんなさい、好奇心の強い子なの、それで、その、そうなの、私がここにいるのはこの子と仲良しだからだと思うわ!」

「そ、そうですか・・・」

なんとかそう答えながら、信じられない気分でサファイア様を見つめてしまう。


サファイア様は慌てている。

「ほら、あ、もう私たちの番ですわね、白系統なんでしょう、でしたら先にアイテムを受け取られてはいかがですの、ねぇミルキィ・ホワイト様!」

「・・・」

ミルキィ様は未だに不思議そうにサファイア様を眺めていたが、サファイア様が言ったことも事実だった。

つまり、神官の人がアイテムを持って傍に来ている。


ミルキィ様が無言で、滑らかに光っている金属の板を受け取ると、途端に、ミルキィ様の周りに、白いフワフワしたものが現れた。

雪のよう。だけど、もっと大きくて毛玉みたい。


「ケセラン・・・」

思わずつぶやいた。

ミルキィ様の婚約者の、メーメ様が、私に教えてくださった存在だ。


「おぉ。ミルキィ・ホワイト嬢。あなたが適任者でしたか。どうかこちらへ」

「・・・」

ミルキィ様が神官の人に前に連れていかれる。

ミルキィ様の周りにフワフワ現れたケセランが、そのままミルキィ様の周りに浮いている。ちょっと可愛いな。


そして、じゃあ、もう私は違うから、帰るんだよね?


と思ったのだけど、神官の人が私にもその金属を持ってきた。

一応受け取る。


ふわ、と風が吹いたみたいになって、辺りが白く光ったように感じて。

私の周りには、ミルキィ様と同じくケセランが浮いていた。

「・・・!」

「おお。えーと、きみは・・・名前は?」


「キャラ・パールです。平民です・・・」

「いや、身分は問わない。ではキャラ・パール。きみも適任者らしい。こちらへ」


「いってらっしゃい」

と言われてみれば、サファイア様だ。面白そうに私を見ている。


そんなサファイア様にも、金属が渡されて・・・。

「!」


パァッと光り、サファイア様の周りに3重の虹が現れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ