表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/143

90.神殿に

「少し。それに関わっているのでしょうか」

「えぇ。誰かが、助けないといけないでしょう」


「サファイア様。どうして、サファイア様も神殿に?」

ふとミルキィ様が会話に入られた。不思議そうな声だけど、どこかじっと観察するようにサファイア様を見つめておられる。


「どうしてって、どういうことかしら、ミルキイ・ホワイト様?」

「サファイア・ブルー様は魔法使いですわ。神殿と関わるのは白系統のみ。白は魔法使いにはなれませんの」


え、魔法使い!?

驚いてサファイア・ブルー様を見ると、私の視線に気づかれたようで、ちょっと焦ったようにサファイア・ブルー様は目を逸らし、けれどツン、と顎を上に向けて澄ませた。


「秘密にしておりますのに、軽々しく人前で言わないでくださいませんか。淑女にあるまじき思慮のなさです、ミルキィ・ホワイト様」

サファイア・ブルー様がツンツンしている。

「サファイア様は、神殿とは関われない系統のはず」

ミルキィ様は、睨んでいる。


なに、このお二人、仲が悪いの?


どうしよう。どうしようもできないけど。

困ってトラン様の腕をつついて、トラン様と視線を交わす。トラン様も困った様子だ。


「学院長はどこに。呼び出しておいて先生方がおられないとは」

「すぐに戻るはずですわ」

とサファイア・ブルー様。

どうやら、サファイア・ブルー様が一番、何が起こるのかを知っている様子だ。


だけど、まだ誰も来ないし、動かない。


なんだか緊張して、私はこの空気を変えたくて、後、実はやっぱり興味があって、口を開いた。

「あの、私、魔法使いに憧れていて・・・」

皆が、ピク、と私の言葉に反応して私を見てくる。


「その、本当に魔法使いなのですか・・・?」

恐る恐る、そうサファイア・ブルー様に尋ねてみる。


サファイア・ブルー様は偉そうに髪を肩のところで後ろに払いつつ、どこか自慢げに私に答えた。

「そうよ。その、いろいろ、私は幸運だったの。その・・・そう生まれついたのよ」

「すごいです」


「ふん」

サファイア・ブルー様が、なぜか気まずそうに見える。どうしてだろう。

そして、ミルキィ様がなぜかサファイア・ブルー様を睨みつけている。


怖いよー。トラン様も困惑している。


***


やっと学院長の先生が来た、と思ったら、急かされて移動するように言われて、ついて歩く。

棟を出て外の道を歩いて、入ったことのない場所に連れていかれた。

白い廃墟みたいな建物があった。なに、怖いんだけど。


「昔の教会だな。今は使われていない建物だ」

私の傍にいてくださるトラン様が教えてくださる。


「まずいな。俺が傍にいれない状況になるかもしれない。お守りはきちんと持っているか?」

「はい。ポケットに」


「サファイア・ブルー様は実力のある方だ。もし俺やルティアたちが傍にいれない場合、サファイア・ブルー様を頼れ」

「はい・・・」


「数々の武勇伝も持っておられる。隠しておられるが、英雄なんだ。きっと助けてもらえる」

「はい」


***


白い建物の中に入る事になった。

先生2人があわただしく動いている。

部屋の一つ、床に白い大きな円が書いてある。


「ここから、中央神殿に移転できる。緊急指名されたのは、ミルキィ・ホワイト嬢、サファイア・ブルー嬢、キャラ・パール。円の中に入り給え」

と先生。


「待ってください。使用人や護衛は」

トラン様が焦ったように、学院長に尋ねた。

「移転先は中央神殿だ。不安になる事はない」


「まさか。せめて1人、いや、俺も行きます」

「馬鹿な事を、トラン・ネーコ様。これは、神殿が指名した者にしか働かない。つまりそれだけ安全だという事だ。それほどキャラ・パールが気になるのなら、別の手段で行く他ない」

学院長がトラン様を窘めている。

トラン様が硬い顔をして私を見た。


「すぐ行く」

「無理されないでください」

トラン様の言葉に、そう伝える。だけど不安だ。ルティアさんとも離れてしまう。どうしよう。


「トラン・ネーコ様。キャラ・パール嬢と最も懇意にしているのはきみか?」

部屋の準備をしている先生の一人が、そうトラン様に尋ねた。

「・・・はい」

と、トラン様が真剣に答えてくださる。私も頷いた。


「なら、時間がかかるような場合、きみも呼び出されるはずだ。それに呼び出し先は神殿だ。そこまで心配するな」

「これはどのような呼び出しなのですか」


「トラン・ネーコ様。それほど心配なさらずとも、私がなんとか致しますわ」

サファイア・ブルー様が声を上げた。胸に手を当てて堂々としている。

「神殿といっても人の手で継がれてきたもの、数百年経てば綻びも出てしまいます。それを正す必要があるのです」


「そうなの、ですか?」

トラン様が不安そうにサファイア・ブルー様に確認されている。

「えぇ。私、こうみえて、神殿についても、少し詳しいのですわ、各地の書籍を読んでいた時期がありますので」


「先生? もう動かしてくださいませ」

と、ミルキィ様。なんだか詰まらなさそうだ。

「あぁ」

先生も、ミルキィ様のそんな態度に驚いたようだけど、頷いて、床に手を伸ばして、そこにあった平たいスイッチを入れた。


ピカッ!


急に光った、眩しい!

思わず目を閉じる。


それからそっと目を開けると、さっきまでいた部屋と景色が変わっていた。

広い部屋の中だ。

隣にはミルキィ様とサファイア様お二人ともそろっている。

目の前には、10人ぐらいの、女の人。私より小さい子もいるけど、年上が多い。

みんな困った様子で、私たちに気づいて視線を向けてくる。


「中央神殿よ」

と、サファイア様が教えてくださった。

サファイア様、ここに来たことがあるのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ