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88.数日が過ぎる


「あの、ポニー様。スミレ・ヴァイオレット様は、その、ポニー様が大好きだからそんな事仰ってるんだと思います、よ?」

差し出がましいけど、ポニー様に小さく私から言ってみる。

「!」

スミレ様が目を大きく見開き、瞬間にパァと顔を赤くして立ち止った。裾もパッと放された。

廊下で立ち止ったまま、次第に涙目で私を睨んでこられる。


「嫉妬、だと、思いませんか・・・?」

「それは、キャラ・パール嬢。友人として僕に注意してくれているの」

困惑しているポニー様は、スミレ様を見つめつつ、私に尋ねた。


「はい。言いにくい事も指摘できる友人でいたいなって」

「ありがとう。そっか、これ、嫉妬して貰ってたのか・・・」

「違います・・・!」

スミレ嬢が泣きそうになっている。


すみません。

だけど、ポニー様にお伝えしたほうが良いと思ったんです。


「僕、人前では、キャラ・パール嬢と会話しない方が良いのかな。スミレ・ヴァイオレット嬢をないがしろにしているつもりはなかったんだけど・・・僕が至らなくてごめんね」

「え、あ・・・いいえ・・・」

ポニー様が立ち止まってしまっているスミレ様のところに数歩戻り、宙に浮かされていた手を取った。

スミレ様が驚きつつ、動揺している。


ポニー様がじっとスミレ嬢を覗き込むように見つめている。

「そっか。嫉妬してくれてたんだ・・・嬉しいな」

「・・・!」

ポニー様が照れたように笑っている。本当に嬉しそうだ。スミレ様が震えてますます涙目だ。

ポニー様がハンカチを取り出して涙を拭かれた。


「行こう。キャラちゃんも、教えてくれてありがとう。あ、間違えた、キャラ・パール嬢だ」

ポニー様が手を取ってスミレ様と歩き出す。

スミレ様が、私にチラと目をやって、文句を言いたそうにしたけれど、恥ずかしそうに顔を伏せてポニー様と並ばれている。


お二人を先に。並んで歩かれている後ろをついていく。


***


今日も、昨日と同じ部屋に案内された。

今日は先にトラン様の方がついておられて、ポニー様とスミレ様の様子を見て、少し驚きつつ、

「仲が良いな。羨ましいほどだ」

と微笑ましそうに告げられた。


スミレ様がまた恥ずかしそうに俯かれて、ポニー様がそんなスミレ様を、嬉しそうに見つめていた。


***


数日が、同じように過ぎていった。


お昼は、トラン様とポニー様とスミレ様と一緒。

貴族の方にとってはなれない料理を恐々試したり、翌日はどんなメニューが良いか話したり。

途中で、モモ・ピンクー様の話題も出た。

学院をお休みされているそうだ。


「テニスの試合に来られていたネロ・ディアース様が、モモ・ピンクー嬢を気にかけていると聞いています」

「あぁ。実は一度ネロ・ディアース様とテニスにと誘われて空き時間に軽く打ったんだが、その時にも協力を依頼された」

とポニー様とトラン様。


「気にかけているというのは、どういう事でしょうか・・・?」

とスミレ様。


ポニー様が答えられる。

「うん。何でもレオの試合を一生懸命応援している姿を見かけて、良い印象を持ったそうだよ。健気だって。なのにレオがモモ・ピンクー嬢を大勢の前で怒鳴った時にも出くわして、心を痛めた様子で」

「レオは時々、頭に血が上るというか、感情そのままに動くところがあるからな・・・」

トラン様がため息をつく。


皆様のお話によれば、ネロ・ディアース様という他の学校の生徒である貴族のご令息が、モモ・ピンクー様を他校に移ってはと勧誘しているそうだ。

そして、多分、その方向になるはずだ、という予想を皆さん立てておられるみたい。


さて、一緒のランチの時間の後は、ポニー様とスミレ様は別室に移動されて本気で休憩を取られている。

登校してから、休憩時間はずっと他の人たちに囲まれて大変そうだ。


そして、私とトラン様はその時間、色々なお話をしてのんびりすごす。

例えば、翌日の庶民メニューとして『ピザ』に決まったけど、どんなピザにしましょうか、とか。ちなみに手で掴んで食べるからか、貴族の料理にはないらしい。だけど平民の料理としては普通に存在している。

ただ、トーストピザが一般的。だけど丸いピザもあるにはある。


せっかくだから、丸いピザを色々食べたいな、と前世持ちの私とトラン様の意見は一致。

じゃあ3種類。マルゲリータとー、ポテトとキノコも良いなー、と、シェフに頼みたいものを色々考える。楽しい。


放課後は、急に図書館通いを止めて不安になったので、トラン様も付き合ってくださって図書館に行って、トラン様に勉強を教えていただいたり。

一度、トラン様は誘われてテニスに行かれたけど、多分その時が、ネロ・ディアース様からのお誘いだったんだろう。


夜はまだ学院に泊めてもらっている。

まだ一人で寝るのが怖い。ずっとこのまま寮に戻れなかったらどうしよう・・・。

学院と話し合って、例えばスミレ様のように、専用に1棟を借りるように、寮を新しく作ってもらおうか、という話も出ているそうだ。

この件についてはトラン様にお任せしている。

スミレ様も、「その方が宜しいですわ」と私を心配するような事を言ってくださって驚いた。

ランチをご一緒するからなのか、ポニー様の影響なのか、少しずつ私と打ち解けてくださっている感じがする。気のせいかな。


***


さて。今日の放課後は、呪いのアイテムのお店にアルバイトに行くことにした。

私が、アルバイトにこのところ全然行っていないことを思い出して気になったから。


だからトラン様とは別行動。トラン様も本当は色々とお忙しいし、その上、私たち家族を支援している貴族について調べたりもしてくださっているし。

ちなみに、今朝、私の家族が住んでいる町に、トラン様の家の方を数人向かわせてくださったと聞いた。手紙もお渡ししている。


「こんにちは」

「あ、来た来た。良かったよ、来てくれて」


お店のおばさん、カレンさんが私を見てほっとしたように笑った。


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