表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/143

83.ドレス選び

淡い紫色の、花みたいに広がるドレスと、パステルブルーの少し大人っぽくはあるけど基本可愛らしいドレス、緑と紫と青をポイントに取り入れてある、シルバーのドレス。


本来通りにしっかり着るのは大変との事で、大分ゆったり着させてもらっている。

本当は体型を整えるところからするらしい。キュッと腰を縛ったりとか。


とにかく、ドレスなんて前世合わせても初めてで、ドギマギする。

鏡を見て、自分の顔にがっかりするハメになるのではと思っていたけど、顔がドレスから浮いていなくてホッとした。そして、やっぱり嬉しい。


トラン様に見せるために、試着用の部屋を出て少し歩く。

ヒールの靴なんてなれないから、ルティアさんが傍にいてくださってなお、ヨロヨロするけど。


「トラン様」

と小さく声をかける。トラン様が、小さな子を愛でるような顔をした。

あれ、そんな反応ですか。

ちょっとおかしくて笑ってしまう。


「きみの小柄さが際立つな」

「それ、褒めてません」

と苦笑する。


「実は、知り合いの女の子がそんなドレスを好んでいて。今5歳だったかな」

「だからそんな反応なんですね」

「気を悪くしたか?」

「いいえ」


「気に入ったら買うぞ」

とトラン様。


「私には勿体ないですよ」

「数着買いたい」


「どこに来ていくんですか?」

「持っていたらどこかで使うものだ」


「そう、ですか?」

真面目に不思議に思って、首を傾げる。


「あぁ。でも、やはり5歳の子を思い出してしまうから、良かったら他のが良いかな」

トラン様が少し笑いながら首を傾げている。

はい。じゃあ・・・。

「着替えてきますね」


***


シルバーに緑と紫と青をポイントに取り入れてあるドレスは、5歳の子の趣味では無かった様だ。

「それ良い。似合っている。買わないか? 買って良いか」

とトラン様。


「本当に、使うところを思い浮かべないのですが」

「そんなはずはない、最低数着いるはずだ。きみ、貴族令嬢と友人関係になったらお茶会などに誘われるぞ。用意しておいた方が良い」


「ご令嬢の方とお友達になれそうには思えませんが・・・」

「スミレ・ヴァイオレット嬢とは友人関係になるのかと思ったが」


うーん。

それはあるかもしれないけど、お茶会にまで誘われるかなぁ。

マナーが酷いって、長期にお休みされる前にハッキリ言われていたし・・・。私のマナー、トラン様とランチして少しは進歩していたら良いけど、絶対『ちょっとマシになった』程度だろうし。


「買いたいので買わせてくれ。俺の自己満足だ」

「・・・はい」

トラン様のお金です、こう言われたら拒否なんてない。


「役に立つ時が来たら、『ほら言っただろう』と言ってやる。得意そうに」

そんな事を言うので、思わず笑ってしまった。

「ふふ、分かりました。じゃあ、トラン様、買って、貰って良いですか?」


「あぁ。それから、あと数着欲しい」

トラン様は、お店の人を見た。

それだけで、お店の人は心得たように次の品を見せて来る。


***


最終的には、何が良いのか判断基準が分からなくて、トラン様は基本的にどれでも「買おう」と言うので、本当にこれ全部買うのか不安になり、ルティアさんたちに助けを求めた。


結果、とりあえず3着を購入。

私の場合、ふわふわしたものより、ちょっとしっとりした生地のドレスが良いそうだ。

よく分からないけど、そうなんだろう。

古典的なエレガントなタイプ、というシルバーに金茶の刺繍がたくさん施してあるもの。

緑と紫と青をポイントに取り入れてある、ちょっと大人目のシルバーのドレス。

そして光沢のある真っ赤な大胆なデザインのドレス。最後のは、夜会用だそうだ。使う事あるのかなぁ・・・。


「私って、シルバーが合うのですか?」

とルティアさんに尋ねてみると、

「似合われているという事もありますが、貴族では色そのものをシンボルマーク代わりに使う家もありますので、被らないようにといたしました。シルバーは神聖な色の一つですので誰が使っても問題ありませんし、レッドは皆が使える人気色ですわ」

「なるほどー」


ドレスの色も、いろんな注意がいるんだ・・・。

覚えているのがすごい。でも覚えていなくちゃいけないんだろうな。


***


さて、仮面舞踏会用の衣装もこちらで頼むらしい。

よく分かっていないのと、トラン様のご希望で、私のテーマは『ネコ』にすることに。


一から作る時間も無いので、ベースとなるドレスを買って、それに装飾を付けてくださるそうだ。

なんだか全部やってもらっていて、本当に良いんだろうか。


不安になってチラ、とトラン様を見るけど、ニコニコしているので、良いんだろうな・・・。


「顔には、口元だけ出る仮面をつけるのが多い。ベースを選んで、装飾する事になる。ベースはどれが良い?」


仮面舞踏会があるとお店は分かっていて、仮面も用意してあるそうだ。

とりあえず、顔の大きさに合うものを選ぶ。


「トラン様はどうされるんですか? 本当に木こりですか?」

「他に思いつかない。それで良いだろう。仮面はこれで良いか」


ご自分のは適当だなぁ。


「斧とか持つんですか?」

「本物は持たない。危ないからな。デザインに取り入れる」


「今から作って間に合うのですか?」

「俺はそこまで気合を入れない。正体がバレなければいいだけだからな。間にあうレベルで作る」


トラン様が優しく笑った。

「パーティに楽しく参加すればそれで良いんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ