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82.ドレスのアイデア

チョコレートの店の次は、陶器のお店。

陶器で作られた食器や小物を見てまわる。


「欲しいものはなんでも買ってやる。遠慮せずに言ってくれ」

「勿体無いです」

と私は笑った。


こんなお洒落でお高いカップ、とても使えない。

箱に大事に入れたままになりそう。カップだって私なんかに買われたら不満だろう。


「きみにたくさん贈りたい」

「お気持ちだけで十分ですよ。あ、でも、本当に欲しいものがあったら言います・・・」


「本当にたくさん贈りたいんだ」

トラン様が私と向かい合い、真剣にそう言った。

「頼むから我儘わがまま強請ねだって欲しい」

「・・・」

変なの。私はクスリと笑う。


「この店にないなら、次に行こう」

また真剣に言われて苦笑した。


「分かった、早々にドレスを見に行こう。仮面舞踏会に必要だ。アイデアを出すためにあと2店舗は寄るが」

「はい」

ドレスの事なんて私にわかるはずがないから、お任せしよう。


***


絵の専門店、筆記具の専門店に立ち寄ってから、ドレスのお店に。

ちなみに、絵は豪華すぎて趣味に合わず、筆記具も高価すぎてやっぱり使えなさそうなので何もおねだりしていない。

でも、見るだけで楽しい。だけどトラン様は物足りなさそう。


ドレスのお店。先に連絡をしてくださっていたみたいで、お出迎えされた。

入店に立ちすくむ。

お店の人のドレスが豪華すぎて、自分が今着ている平民の服がものすごく場違いで。


「彼女は俺の恩人であり俺の大事にする人だ。彼女に合う衣装を見せて欲しい。それから仮面舞踏会の衣装を頼みたいので提案を求める」

「かしこまりました」


お部屋に通されてから、トラン様の言葉に3人が礼を取って出て行った。


「トラン様。場違い感が半端ないです」

「そうか? きみ、前世でドレスは憧れなかったのか? 好きなだけ夢を叶えるぞ」


どんだけ金持ちですか。問題ないのでしょうけれど。


「・・・憧れました、けど・・・」

「ところで、俺が仮装するならどんな格好が良い? アイデアがあれば是非」


「格好いいのが良いです」

「どんなのが理想なんだ?」


「・・・」

恥ずかしくて目を伏せた。理想と言われましても、普段で十分カッコイイのですが。


「木こりとかかな」

「え!? 格好良い、で木こりですか?」

トラン様の案に驚いてしまう。


「格好いいだろう」

「騎士とかじゃなくて?」


「騎士なんてありきたり過ぎて格好悪いんだが」

「・・・貴族の方のイメージって平民とズレてますね、きっと」


「木こりじゃなかったらなんだ?」

「・・・マジシャン?」


「却下だ。それ、本来のトラン・ネーコのイメージだろ」

「似合うと思ったんですが」


「きみが望むなら、するが」

ものすごく不満そう。トラン様が拗ねている。

「言ってみただけです。お気に召すものをしてください」


「・・・きみ、ネコで良いだろ」

「え。・・・良い、ですけど」


「他家のシンボルマークとか嫌だ。きみがネコ化が嫌じゃなかったら是非」

ネコ化って・・・そんなクオリティなの? 仮面舞踏会。

でも。私は首を少し傾げた。

「ネコ、可愛くて良いなと思います。ただ、トラン様の家のイメージだから、その、なんて言うか」

ごにょごにょ。

嬉しいけど恥ずかしいって言うか、身の程知らずって言われるだろうな、とか。


「きみがネコにしてくれるなら、俺もマジシャンになる」

「そんなにマジシャンを希望してませんよ?」


「本当に?」

「はい。トラン様、嫌そうだから。それに、あの・・・」

ちょっと言い淀む。けど、トラン様が真剣に言葉を待っている。

「マジシャンじゃないトラン様が、大好きなので・・・」


うあああああ!


なんて恥ずかしい事を! 自分でもう無理!


「あぁ、くそ」

とトラン様が悪態をついたのが聞こえた。

驚いて見上げると、トラン様は、顔を片手で覆っていた、けど物凄く赤くなっていた。


私が見ているのに気づいたトラン様は、片手を外して、私を見た。

「いっそ、駆け落ちするか、キャラ・パール嬢」

「・・・」


コホン、と咳払いがした。二人でチラと後ろを見る。ジェイさんだ。


「冗談だ。真っ当な手段を考えている」

ブスッとした声音で、トラン様がジェイさんに文句を言うと、ジェイさんがニコリと微笑んだ。

そのまま私にも笑むので、ものすごく恥ずかしい。


それより。


真っ当な手段・・・。


じっとトラン様を見る。


「俺は不器用だからな。きみだけしか要らない」

「・・・」

心臓がドキドキとする。感動して涙がでそうだ。


「・・・変な噂とか言われても、真に受けないでほしい」


変な噂?


「言われたことが無いなら、良い。気にしないでくれ」

とトラン様が笑った。どこか大人びている。


「噂って・・・」

と私は気になって聞こうとした。


「噂のほとんどは嘘だぞ」

とトラン様が言って、私の耳を両手でふさぐようなふりをした。


***


私のために選んだというドレスを、試着させてもらう事になった。

とにかく訳が分からない上に、知らない人が持ってきたものがものすごく怖い。

正直に、

「虫とかいませんか?」

と聞いてみたら、トラン様に命じられたルティアさんが店の人たちに確認した。


勿論いない、という返事だけど、それでも不安に思っていたら、ルティアさんがチェックしてくださった。

「大丈夫ですわよ」

と優しく言って貰えて泣きそうになる。


お店の人が気を悪くしたようだけど、それについても、『妬みがあって最近、虫が紛れるというような事があるものですから・・・』なんて真実とは違うけれど内容は近い説明で理解を求めてくれた。


ルティアさんー!!

大好きです、いつも本当にありがとうございます!

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