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80.放課後の始まり

さて。

午後の授業、私は、ポニー様とは一緒。

きちんと教室まで無事にたどり着いた。


だけど、午後のスミレ様の授業は別だった。

心配するポニー様、ギリギリまでスミレ様のところにいき、開始のベルの本当にギリギリに駈け込んでこられた。

私の事も心配してくださってたのだけど、私はポニー様みたいに早く走れないしね。ルティアさんがいてくださるから教室で一人で大丈夫ですよ。


そして授業終了後も、疾風のごとくポニー様はスミレ様を迎えに駆けて行かれた。


「またね」という挨拶も無し。

昼休みにそう聞いていたし分かっていたけど、ちょっと驚いた。


そうだよね、きっと、スミレ様は、私とは違って、多くの人たちに囲まれてしまってそう。

何となくだけど、スミレ様は他の人たちを怖がっている感じがする。ポニー様と、なぜか私は大丈夫だけど、他の人とは視線を合わせたく無さそうというか。

私は平民だから、権力も無いから何もできない。だから安心なのかも・・・?


さてと。放課後! トラン様と町に出る約束!

楽しみ。嬉しいな。

トラン様とは、昨日私が泊めてもらった部屋で待ち合わせ。


***


トラン様と合流して、一度私の寮に寄る事になった。今日は買い物を楽しむから、着替えもしよう。


寮の管理人さんにトラン様が、私に関する事をお話してくださっている間に、私はルティアさん、それから申請したグレンさんたちと一緒に部屋に向かう。


そして、自分の部屋に入るのが怖くなった。ドア開けて虫がいたら・・・。

立ちすくんで動けなくなった私に変わって、グレンさんがドアを開けてくれた。中に異常がないかも調べてくれた。

そうしてやっと入室。ルティアさんだけが残ってくれた状態で着替えなどすませた。


どうしよう。私、誰かいないと怖くて部屋に入ったりとかできないかもしれない。

学院に泊まれず寮に戻る時、私、大丈夫かな・・・。


少し青ざめながら戻ったら、管理人のご夫婦とトラン様たちが私の様子に目を留めて、そろってじっと見つめてきた。

「大丈夫かい」

とおばさんとおじさん。それにどう答えていいのか分からない。

「何かあればこっちにも連絡しろよ」

「はい」

と、やっと答えた。


***


心配そうにされながら、トラン様と馬車に乗る。隣に座るよう勧められた。

「大丈夫か? 何かあったか? 体調か?」

「あ、いえ・・・。自分の部屋に入るのが怖くて。ルティアさんがいてくださったから良かったのですが、この先の事を考えて、不安になってしまいました」


「分かった。その事も色々話し合おう。無理しなくて良い」

とトラン様が優しく言ってくださった。

「ルティアだけでは難しいならあと数人、女性できみの周りに付けることもできる。家ぐらい借りてやれる。きみの寮の管理人たちにも話をした。きみを支える貴族についても分かる範囲で答えがもらえそうだった。俺もきみが心配だ。不安は言ってくれたら良い。解決していこう」

「ありがとうございます」

感動する。もう本当に頼りきりだ。


「全部、沢山の事を、していただいていて、本当に感謝しています。なんて御礼したら良いか」

「遠慮は無しだ。たまたま俺が金持ちの家に生まれただけだ。言っただろう、平民のきみが使う額などたかが知れているんだ。存分に俺にたかってほしい」


「本当に?」

「本当だ。本心だ」

ニコリ、と笑んでくださる。


私は苦笑した。

「私、悪い女みたいですよ」

「どこがだ。それを言ったら、俺の方が金にものを言わせてる気がする」


「トラン様はカッコいいですよ・・・」

「・・・照れるな」

何か言い返してくださろうとして、急に言葉通りにトラン様は照れて、手で口元を覆い隠すようにして向こうを向かれた。


***


なんと、トラン様は使用人の人に命じて、私のための町の案内コースを作ってくださっていた。


「違う町の出身だと分かったからな。名店を周るのも良いだろう。どの店に行きたい?」

「え・・・」

書き込まれた店名を見てクラクラしそうだ。分からなさ過ぎて。


「わ、分かりません・・・」

「きみは何が好きなんだ? 例えば、身の回りの実用品の小物。筆記具。布。糸。紙、インク。絵画。書籍。菓子。装飾品。花」


「お菓子・・・」

「分かった。途中で軽く菓子を食べよう。あとは、一応このルート通りに回って見るか? 皆が最善と考えた案だ」


「は、はい」

「仮面舞踏会の衣装も考えよう」


「は、い。あの、トラン様はどういう衣装にされるんですか?」

「そうだな。きみに合わせて考えようと思っている」


「・・・」

「気軽に考えて良いんだぞ」

私の顔が強張ったのに気付いたらしくて、苦笑される。


「でも、どんなのが良いのか全然想像つきません!」

「それはそうだ。皆、好きにテーマを決めてそれをモチーフにした衣装を作っている。俺は前回は、『学者』っぽい感じでいった。普段の俺は違うのと、まぁそれぐらいで良いかと思ったからだな」


「他の方は?」

「女性で、魔法使いの恰好をしているのがいたな。あとは蝶とか。チューリップとか。自分の家のシンボルマークを使う人も毎年何人かいる。俺の家ならネコだが、他家ではスプーンとか、矢とかな」


「ネコ・・・」

可愛いですね。

「ネコ・・・?」

とトラン様が真顔で復唱して来る。


ネコって普通に可愛いと思うけど、なんだかあからさますぎますよね。


「パンダ・・・」

「パンダはこの世界にいないはずだ」


「ウサギ・・・」

「あぁ、ウサギのエイティちゃんが好きなんだったか」


「前世、小さい頃ですよ」

「ウサギはやって欲しくないな・・・」

とトラン様。


どうして? と見つめていたら、

「他家のシンボルマークだ。だったらネコが嬉しい」

と拗ねたようにおっしゃるのが可愛い。


「ネコ、良いなって思ったんですが、あまりにもトラン様との繋がり自慢みたいでわざとらしいなって思って」

「そうか? まぁきみと揃えて俺もネコになったら、仮面で隠す意味がないが」


トラン様がいうには、もうあと20日後らしい。

案外すぐですね!

確かに今から準備しなくちゃ・・・。

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