78.これからの予定と、異変
昼休みが終わりに近づき、隣の部屋に行かれていたポニー様とスミレ様と使用人の方々が戻ってこられた。
仲良く手を繋いでおられていてちょっと驚く。再び婚約者同士に戻られるぐらい、やっぱり仲良くなられたんだ。
婚約者って良いな。羨ましい。
「トラン・ネーコ様。くつろいで過ごすことができました。感謝します」
とポニー様。
「いや。互いに大切な時間が過ごせたようで良かった」
とトラン様。
ポニー様が少し目を大きくして、それから私を見た。そして分かったように少し笑んだ。
「それは良かったです。では、ご提案をしても良いですか」
「あぁ」
「僕とスミレ・ヴァイオレット嬢は、しばらく各方面からランチなど色々誘いを受けることになります。ただ、僕たちは戻って来たばかりで、できれば二人で静かに過ごす時間、つまり本当に休憩する時間を持ちたいと願います」
「あぁ」
トラン様が理解したように頷いた。
「今日は、あらかじめ約束させていただいていて本当に良かった。できれば、1週間は、このようにご一緒できれば大変嬉しいのですが」
「俺は構わない。きみは?」
とトラン様が私に会話を振って下さる。
私が嫌がる可能性なんて無いですよ。スミレ様が大丈夫かなと気になりますが。
「私はご一緒できて嬉しいです」
「良かった。ありがとうございます」
とポニー様。
ただ、スミレ様が少し浮かない顔をしている。
トラン様も気づいている様子で、目線でポニー様にスミレ様を見るように教えたようだ。
「どうしたの?」
とポニー様。
スミレ様が、ツイツイ、とポニー様をひっぱり、少し後ろに。
そして手をポニー様のお耳にあてて、何か小さく打ち明けたようだ。ポニー様が頷いておられる。
ポニー様が今度はスミレ様に。困ったようにポニー様を見つめるスミレ様。
ポニー様が笑みを向けている。スミレ様が、しぶしぶ、というように頷いた。
ポニー様たちが戻ってこられた。
トラン様も心配しているようで、先に口を開いた。
「俺たちと一緒という名目でこの部屋に集まるだけにして、ランチも別々というので全く構わないぞ。始まりと終わりだけ一緒に行動すれば良い」
「あぁ。それも良いですね」
とポニー様が気づいたように笑う。
「こちらは、他の交友関係に支障をきたさないかを心配に思っています。トラン・ネーコ様たちと一週間毎日ご一緒する良い名目があれば良いのですが」
「なら、俺が変わった料理を食べるので興味を引かれて、というのでは」
「料理ですか。例えば・・・」
ポニー様が興味を引かれている。スミレ様も視線を上げた。
「今日は普通で良いだろう。今日話題が出たので、明日も約束した、というのではどうだ?」
「はい」
「実は俺も、色々あって試せていない料理がある。平民ではマナーにとらわれず色々な料理があるようでな。ナンというパンのようなもので食べるカレー。明日はそれでどうだろう。少しだけいれて、基本的には普通のランチで良いが」
「ありがとうございます。それでよろしくお願いいたします」
「あぁ」
「感謝いたします・・・」
スミレ様もそっと礼をとられた。私も慌てて礼をする。
いや、スミレ様が礼をしたのに、平民の私がそのまま立ちっぱなしなんてないから。
明日以降のことも軽く決まって、4人と使用人の皆さんと部屋を出て、教室へ。トラン様は私を送ってくださるそうだ。
少しでも長くいれるので嬉しい。
***
しばらく行くと、いつもより学院が騒がしいのに気がづいた。
「何が起こっている。ジェイ、確認してきてくれ」
「ホムラ、報告を」
ジェイさんも動きかけたけれど、ホムラさんがサッと現れて、私たちに礼を取って見せてから、ポニー様を見る。
「皆の前で。共有する」
とポニー様。
ホムラさんがすぐに説明した。
「ご報告します。レオ・ライオン様が、モモ・ピンクー様に罪を問う発言をされました。キャラ・パール嬢が生死に関わる被害を受けられた件で、現場近くに待機していたモモ・ピンクー様の行いだと仰っています。モモ・ピンクー様は違うと訴えておられます。進行中です。ご案内いたしましょうか?」
「スミレ嬢、どうする? きみが大丈夫なら様子を見てくる」
「私は・・・」
スミレ様は俯いておられる。行きたくない様子だ。
「ポニー・ウゥーマ様。もし行かれないなら、キャラ・パール嬢をお願いして良いか。俺は様子を見てくる。だがキャラ・パール嬢は行ってもらいたくない。一人にもさせたくない。頼めるか?」
「分かりました。キャラちゃん、あ、キャラさん。一緒に行こう」
「私が行かない方が良いんでしょうか?」
と私は聞いた。不安だが、自分に関することでのことなら、行きたい。
「きみが強く希望するなら止められない。だが、きみに詳しく伝えていない事まで話に出るかもしれない。聞かせたくない」
とトラン様。
「キャラ・パールさん・・・一緒に、いましょう。その・・・怖くありませんの?」
スミレ様が、私に向けて口を開いた。言い淀みながら、私の事を心配してくださっているのが分かった。
「一緒に、いましょう・・・」
どうしよう、と思ったけど、スミレ様の様子に、私はトラン様を見上げた。
「あの。何があったか、後で教えて欲しいです」
「分かった」
「じゃあ、スミレ様たちと、一緒にいます」
「あぁ」
「キャラさんのことは僕たちに任せてください。ホムラ、行ってきて。報告を待ってる」
「承知しました」




