表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/143

68.トラン様の試合を応援しよう

いただいたタイムスケジュールに早速書き込む。

授業を受けるつもりで鞄を持っているので、筆記具もある。


一方で、レオ様が私を特別扱いしたと、また周囲が私についてザワザワと噂している。

うぅー・・・。

気になるけど、応援する事に集中しよう。


まず、試合だけど、いきなりトラン様とレオ様の時間が重なっている。

え、トラン様の方のコートはどこだろう。4枚目と5枚目が、コートの場所を書いた地図だ。

遠いところみたいだ。


チラ、とレオ様を確認すると、柔軟体操をしておられる。

トラン様を優先しろっておっしゃってたけど、今ここにいて何も言わずに行ってしまうのも・・・。


よし、もう腹を括ろう!

ギュッと目を瞑って、大声だ。

「レオ先輩! 試合頑張ってくださいー!」


周囲が一瞬、静まり返った。

そろっと目を開けて様子を伺う。


レオ様も驚いた様子で動きを止めていた。私と目が合うと、ニッと、偉そうな上から目線の笑顔を見せてくださった。手を軽く上げてくださった。


キャー! と歓声があがる。


周囲にいたご令嬢の皆様が口々に応援の声を上げ始めた。

「応援しておりますわー!」

「レオ・ライオン様ー!!」

「勝ってくださいませー!!」


レオ様は周囲にも手を上げて見せられたので、またキャーッと歓声が上がった。

レオ様、堂々としておられるなぁ。


そんな中、私はレオ様に礼をとった。

レオ様も気づかれたみたいだ。笑って頷かれた。

う、カッコいいなぁ。


レオ様の様子に、心を残すことなくトラン様のコートへと移動開始。


***


「トラン様、ものすごい人気・・・」


たどり着いたテニスコート。

思わず私は茫然と呟いてしまった。


もう試合が始まるギリギリの時間だからというのもあるだろうけど、レオ様より観戦者が多そうな気がする・・・。

人垣が出来ている中、どこか入れないかと空いているところを一生懸命探す。

二階の窓とかの方が空いている? と思ったけど、自分の教室でないところに行く勇気もないのと、すでに窓にも人は一杯だ。


どこか! と探して、ぽっかりと人がいないところを発見。あそこだ!

行ってみると、どうやらトイレが近くて臭くて人がここにはいないみたい。

でもここで良いや。むしろ空いていて良かった。


私が位置を定めたら、やはりウロウロ場所が無くて困っていた人たちが、匂いを我慢する方を選んだらしくて、あっという間に私の周りにも人だかりが。


周りが口々にお名前を呼んだり声をかけておられるので、ここでも腹をくくって大声を出そう。

「がんばって、くださいー!」


ふとトラン様が顔を上げて視線を動かし、私を見つけてくださった。

ふ、と笑顔を見せてくださってから、何か気づかれたようで少し真顔になっておられる。

周囲、誰かを探しておられる。

何だろう。


審判の人が、試合を始める合図に、笛を吹いた。


***


試合が始まった。

トラン様、めちゃくちゃカッコイイ。テニス上手い。


ひょっとして、レオ様がものすごく上級者だから、トラン様もすごいって気づいてなかったのかも。

ボールを打つ姿が全部カッコイイ。


周りの声援も物凄い。

私も一生懸命応援した。


あっという間に、トラン様の勝ち。ものすごい。


ちなみに、勝たれたのはまず1セット。

今回のルールは最大3セットやることになっていて、先に合計2セットを勝った者が勝ち。


コートチェンジがあって、また始まった。

さっきはこっち側にいたトラン様、次は向こう側だ。

わー、どこから見てもカッコイイ人はカッコイイんだなぁ・・・。


遠くなった分、頑張って応援しよう。


***


周りの声援に負けないようにと息を吸った、ところで、ドン、と後ろから押されて、よろめいて一歩前に出た。


え、誰。

見たけど分からない、それより出てしまってるから戻らないと。

慌てて隙間に入ろうとした。だけど、隙間がぎゅっと詰められる。

「すみません、戻りたいので、開けて欲しいです」

「場所などもうありませんわ」

「私たちに、退けとおっしゃるの?」


不味い。

試合を邪魔するほどではないけど、明らかに観客の垣根から前に出てしまってる。

早く引っ込まないと。


「邪魔ですわ、早く何とかなさって」

と周囲から非難の声が上がる。

「申し訳ありません」

とっさに鞄を抱えて身をかがめる。

だけどやっぱり、他もギュウギュウで、今いた場所に入らせてもらうしかない。

むしろ後ろに抜けよう。その方が良い。


「申し訳ありません、後ろに行きたいので、通してもらえませんか」

「無理ですわ! 試合中ですのよ、じっとなさって! 集中できないではありませんか」

「そうですわ」


困った。じゃあ、この場所で小さくなっているしかない。

背を屈めるようにしてテニスコートの方に向き直れば、ものすごい顔で睨んでいるトラン様と目が合った。


す、すみません! 戻りたいけど戻れないんです!!


バシィ!

物凄い速さのボールがこっちに飛んできた。


うわぁ!

「キャァ!」

「きゃあー!」


周辺のご令嬢方が驚いて悲鳴を上げておられる。

こ、こ、怖い! トラン様!?


「勝者、トラン・ネーコ様!」

審判が宣言し、ウワァッと歓声が上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ