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66.呪いアイテムのお店と、夜の連絡

午後の授業。


あれ? ひょっとして、テニスコートの様子って、結構いろんな人に見られている?


と思ったのは、なんだか妙にチラチラと私を見て、ヒソヒソご令嬢同士で話しているからだ。

明らかに話題の中心になっている感じ。


居心地の悪さを感じつつ、授業は普通に始まり、普通に終わった。


ちょっと覚悟していたのだけど、モモ・ピンクー様が私のところにやってくることは無かった。

レオ様との婚約関係を解消されたから、もうあんな風には来られないんだろうか。

いえ、別に嫌がらせに来て欲しいと思っているわけじゃないんだけど。


***


さて、今日は私は放課後の部活は無しなので、呪いのアイテムのお店にアルバイトに行く。

私が依頼されている古いアイテムは細かな作業が必要でまだまだ時間はかかりそう。ずっとこれを直している。

でも、お店のおばさん的にはこれが大助かりなんだそうだ。


「そういえば、カレンさんも、白系統なんですか?」

と作業しながらおしゃべりもする。


ちなみにカレンさんというのが、お店のおばさんのお名前。呪いのアイテム、カレンさんも作ったりしているみたい。


「いいや。私はねぇ。世間じゃ稀で、赤と青と緑の系統だ。多色持ちだから、全部の系統のを作ることができるんだよ」

「へぇー」


「ついでに教えておこう。白は、何も無いところから作ることができる。黒っていうのもいてね。黒は書き換えができる。私は、全部できる」

「カレンさん、ものすごいですね!」


「私の腕は確かだよ」


ニヤリ、と笑って見せるカレンさん。

知らない事をいっぱい教えてくれるし、良いお給料ももらえるし、本当に良いアルバイトだ。


***


夜。寮の自室。


トラン様から連絡があった。

初めは「明日テニスの試合ですね」なんて話をしていたのだけど・・・。


ふと、トラン様がこんなことを言った。

『・・・実は。放課後にモモ・ピンクー嬢が俺のところに、苦言を呈しにきた』

「えっ!?」

モモ様、トラン様の方に行ったの!?


『その・・・。なんというか。色々聞かされたんだが、きみ、レオと抱き合ったらしいな・・・』

「え、違います! いえ、そうですけど、状況が! 私が疲れてコケてしまって、レオ様がとっさに庇ってくださって、それで、そんな感じになっただけです!」


『そうか。いや、うん、分かってはいるんだが』

私も焦っているが、トラン様がなんだか歯切れが悪い。


「モモ様、他に何を言われたんですか!?」

『・・・あぁ』

「私、別に変な事していませんよ!?」

我ながら必死。


『・・・レオとイチャイチャして最後は抱き合って互いに頬を染めていて、その、公衆の面前であのような行為許せません、というような話を』

「レオ様のサーブのボール拾いで、私後輩ですから! もう大変でヘロヘロで、ラケット取ろうとしたら足がもつれて、その、アクシデントです!」


『・・・俺が練習見たかった』

「え?」


聞こえた言葉に耳を疑った。今なんて。

脳内で再生して、なぜか、コケそうな私をトラン様が助けくれるイメージが脳裏にポンと出てきてブワッと照れた。


は、恥ずかしい・・・。


そして互いに無言。


「えっと」

『あぁ』


「モモ様には、どう答えられたのですか?」

『テニス部での練習だ、抱き合っているかは俺は見ていないので分からない、と』


「語弊が・・・」

『いや、その時は、ルティアたちが戻っていないので事実確認できずに、まぁ』


「あれは本当に、救助といいますか」

叱られてるわけじゃないんだけど・・・。


少し黙り込んで、トラン様が少しそっと話し出す。

『メーメ・ヤギィ様とも仲が宜しいようです、とも言われたんだ』

「図書館でたまにお会いします」


『知っている』

「そこはどうお返事を?」


『知っている、と』

「・・・」


『きみはそう言うが、実際、メーメ・ヤギィ様は一人がお好きで、自分から話しかけるのは珍しい』

「・・・」

そんなこと言われても。


『・・・まぁでも、モモ・ピンクー嬢が俺のところに文句を言いに来たこと自体はなかなか嬉しかった』

え?

「どうしてです?」


トラン様が笑った気配がする。

『きみと一番仲が良いのは俺なのだろうなと』

「・・・トラン様以外、毎日ランチしたり夜にお話したりしませんよ」


『ありがとう。なぁ、明日は試合でランチは一緒に取れないんだが、明後日、放課後に一緒に買い物に行かないか?』

「え。はい」

何を買われるんだろう。


『良かった。楽しみにしている』

「はい」

嬉しくなって声が弾む。


『それで、仮面舞踏会に一緒に行かないか。エスコートさせてほしい』

「え!? いえいえいえ、私なんて行ったら大変なことになります!」


『大丈夫だ。きみだとバレないようにしよう』

「え、でもトラン様がいてくださるんですよね? それで分かると思うんです」


『なるほど、そうか』

「でもトラン様がおられない方が怖いので、だから参加は無理です」


『だが、企画委員長のチュウ・ネズミン様が、きみも参加して良いように色々動いておられる。なのに参加しないのか? 俺個人の感情抜いても、きみは参加の方が良いと思うぞ』

「えぇ? 私、アンケートに『無理です』って・・・!」


『チュウ・ネズミン様は、その無理を解消していく人だからな。・・・うん。まぁ、そういうわけで一緒に出よう。心底嫌なら仕方ないが』

「あの、正直、どういう格好で行けばいいとか本当に・・・」


『あぁ。だから、明後日一緒に町に出よう』

「え」

ひょっとして、買い物って私のを見る?


『お願いだ。無理にとは言わないが、レオやポニーやメーメ様より仲が良いと証明させてほしい』

「証明って、誰に・・・」


『・・・きみと、俺に』

「・・・」


トラン様・・・!

なんか恥ずかしくなるの多いー!!

モモ様の突撃の影響?


仮面舞踏会かぁ・・・。


『良いか?』

「はい・・・」


『良かった』

トラン様もとても嬉しそうな声だった。

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