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55.数日のことと、ヘビと、不在と

数日が特に変わりなく過ぎていった。

夜にはトラン様から連絡が来るので、日常会話として、その日の事などをおしゃべりする。


とはいえ、お守りを朝にお渡しした翌々日に、

『治ったんだ。本当にありがとう。きみのお守りはものすごい威力がある』

と真剣に褒められた。

治ったなら嬉しいけれど、全然お会いできていないから、本当に治ったのか半信半疑。


お会いしたいなぁ・・・。


この数日間ずっと、トラン様はやっぱり元気が無い感じ。

私と連絡ができるのを励みに頑張っている、と何回か言われている。

だから、少し笑えるような、気軽な話題をするように心がける。


私が分かっているのは、ミカン様にスミレ様が暴力を振るわれた件で、トラン様にも何かあったという事。

そして、私には話したくないか、話せない。


だから私は、トラン様が何を抱えているのか、詳しく知らないままだ。

気になるしモヤモヤ・・・。

でも私が癒しになれてるなら嬉しい、けど心配。


それから、トラン様に、呪いのアイテムの店でアルバイトを始めたという事もお伝えした。

古い道具の装飾品が剥がれ落ちているのを、コツコツ、なおす、というのを頼まれて、お店の端っこで作業している。お店は薄暗いんだけど、その方が、石が光ったりしていて綺麗だし、直す場所が分かったりして面白い。


あとは、仮面舞踏会の話題とか。

アンケートを頼まれて、翌日にチュウ・ネズミン様にお渡しした。その時、回答内容をサラッと読まれて、『マナーが心配なら、少し教えてもらえるように頼もう』などと言われたのだ。その時はよく分からないままに、『はい』なんて相槌のように答えてしまったんだけど、頼むってどういうことでしょうか、とトラン様に聞いてみた。


『何だろうな』

とトラン様も不思議そうだ。


ちなみに、仮面舞踏会は、1か月後ぐらいに予定されているはずらしい。

『一緒に出れると良いんだが』

とトラン様が言ってくださったけど、私には何かよく分からなくてやっぱり怖い気がする。出ない方が幸せそう。


***


さぁ、今日も学院へ行こう。

朝食を食べて準備を整え、扉を開けてびっくりした。

廊下、マスクをした管理人のおじさんとおばさんがウロウロしている。


「ど、どうしたんですか?」

さっき、朝ご飯を貰いに行った時は、普通だったのに。


「気を付けて! ヘビが出たんだよ!」

「ヘビ・・・!」

「急いでドア閉めて!」

「は、はい!」

開けっ放しだったドアを慌てて閉めた。鍵ももちろんかける。


「いたぞ!」

おじさんの声に慌てて振り向くと、階段の手すりのところ、細い黄色いヘビがニュッと顔を出していた。

「それ、毒ヘビです!」

図鑑で見た覚えがある! 野外で注意をするべき危険生物って授業でも紹介されてた!


「なんだと!?」

「手袋じゃ駄目です!」

手袋で掴もうとしたおじさんに慌てて声をかける。


「ホウキで追い立てますか!?」

「手伝ってくれるかい!?」

「はい!」

「おい、大きい虫カゴ持ってこい!」


掃除道具入れからホウキを持ち出して、管理人のおじさんとおばさんと私で協力して、黄色いヘビを虫かごに入れることに成功した。


「なんで毒ヘビなんか。どいつが持ち込んだんだ」

「最近廊下の被害が激しいねぇ」


まさか、私の部屋の呪いが効いていて、全部廊下で止めてくれているのかな。その分、廊下に被害が出ている気がする。

それにしても・・・。


「毒ヘビなんて、怖いです・・・」


廊下にもいたけど、部屋に入ってたりしないよね? 小さいヘビが部屋に潜んでいてもなかなか気づけないよ。毒ヘビだよ。怖すぎる。


「共用部分はこれからチェックして周るが、部屋は個人スペースだから入れない。注意して何かあったらすぐ呼んでくれよ」

「はい」

「皆に注意して周った方が良いね・・・困ったね」


***


毒ヘビ捕獲のせいで、授業に遅れてしまった。

足音をできるだけ立てないように廊下を移動していると、ルティアさんが廊下にいて、青い顔して私を見つけ、急ぎ足でこちらに来てくれた。

「何かあったのですか!?」

「寮に毒ヘビが出て、捕まえる手伝いをしていて遅刻しました」


ルティアさんがさらに驚いてしまった。

「ご無事ですか!?」

「はい、大丈夫です、無事に捕まえられました」

ルティアさんが私の両腕を掴み、上から下までを眺めて、少し安心したようだ。肩の力が抜けたのが分かる。


「これから、授業に出られるのですか?」

「はい」

私の返事にルティアさんは頷き、一緒に教室まで急ぎ足でついて来てくれた。


***


教室の後ろ、ドアをそっと開けて入室する。

教師が私に気付いたので、礼を取った。

「遅れて申し訳ありません、アクシデントがあって・・・」

「多少は大目に見るが、大幅な遅刻だ。早く座るように」

「はい」


後ろの端っこの自分の机に慌てて座る。

先生は授業を再開する。


えっと、どこだろう・・・。教科書を開いて今進んでいる部分を周りをキョロキョロして探す。

あ、ここだ。

予習しておいて良かった。休憩時間を持て余してやっていた事だけど。


ポニー様の席をチラと見る。今日もお休み。ずっと空いている。


休憩時間にいつも気さくにニコニコと話しかけてきてくださっていたのに、ずっとおられない。


とても心配。

ポニー様、今、どこで何をされているんだろう・・・。

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