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54.気になる事と、チュウ・ネズミン様

午前中の授業は全部終了。

お昼休みはいつも通り、ルティアさんとランチ。


さて。トラン様のお守り作りは終わったので、どう過ごそう。

図書館で良いけれど、1時間勉強するのはちょっと辛いなぁ。

一人テニスというのも無理だし。


部活の事を考えて、レオ・ライオン様についてふと思った。


レオ・ライオン様とモモ・ピンクー様、結局、婚約はどうされたんだろう。


勝手に耳に入ってくる噂では、婚約を取りやめられたみたいだ。

でも噂なので、本当かどうか私には分からない。


レオ・ライオン様は、学院を休みがちらしい。スミレ様のところに行っておられるとか?

一方。先日の料理の授業にモモ様は来られなかった。最近私のところに押しかけて来られないので、姿をお見掛けしていない。


ただ・・・。

気になるけど、平民の私にとっては違う世界のお話だ。

そして、今色々問題を抱えておられそうなトラン様には、こんな複雑そうな話題、出さない方が良さそうだし。


ため息をついてしまったのを、傍のルティアさんが心配そうに声をかけてくれた。

「どうされましたか」

「あ。なんでもないです。すみません」

ちょっと慌てて誤魔化した。


***


結局、図書館に行くことに。

普段通り30分はお勉強する。ちなみに今日は植物学。よく知らない植物を図鑑を見て調べる。


そして30分経ったら、他の事がしたくなってしまった。昨日まではここからお守り作りだったんだけど・・・。


コツコツ作るのが案外性に合ってたのか、作るものがなくてちょっと寂しい。

お守りの代わりに、内職の石の方を持って来てここで磨こうかなぁ。でも重いし、何かあって落として割れたら嫌だから部屋に置いておいた方が良いよね。


ぼんやりと周囲を見回す。

広い図書館の上、大体、よく来る人は定位置が決まっていくみたいで、私の周囲も少し離れたところに1人みえるだけ。


うーん。


立ち上がり、窓の方に近づいて景色を眺める。

3階にいるので景色は少し良い。でも樹々が多いので全体がよく見えるというようなことはない。


今更だけど、立派なところだなぁ・・・。


「きみがキャラ・パール嬢かい」

「え」

完全にぼんやりしていたところに声をかけられて驚いた。

振り向く。

目の大きな男の人がいる。活発そう。何より、他と違って顔立ちが整っている。


え、この人、まさか。


その人は、私を見て興味深そうに笑った。

「チュウ・ネズミンだ。きみの、えー、3つ年上だな。突然声をかけて申し訳ない。初めまして」

「初めまして。キャラ・パールです」


挨拶しながら、一生懸命記憶を探る。

私にこんな風に声をかけてくる人は珍しいし、この突出した顔立ち。やっぱり攻略対象者?

でもこのチュウ・ネズミン様・・・ゲームにはいなかったと断言できる。


「実は僕は、学院のイベントを企画する委員会の長をやっててね。広く意見を聞きたくて、平民のきみにもアンケートを取ろうと探していた。メーメ・ヤギィくんが毎日のようにここにいると教えてくれた」

「え、はい・・・」


チュウ・ネズミン様は、持っていたファイルを開けて、紙を1枚取り出した。『仮面舞踏会企画★』とタイトルが書いてある。


「数年に一度、企画されてきているんだけどね。仮面舞踏会というけど、今や仮装レベルで皆が着飾って正体を隠すんだ。それで身分を忘れて楽しもうっていうイベントで、結構人気だよ」


なるほど・・・。


「身分を忘れて楽しむ企画なら、きみも入るべきだし、意見を聞きたいと思ったんだ。これ、頼めるかな? 明日また取りに来る。もし会えなかったら、メーメ・ヤギィくんに渡してくれても良い。彼は信用できるから、きみの書いた内容を軽々しく人に漏らしたりしないから安心して。もちろん僕もだ。・・・というわけで、はい」


チュウ・ネズミン様がその紙を私に差し出したので、受け取る。

この流れで受け取らないのは失礼だし、アンケートなら気軽だ。

「分かりました。有難うございます。明日お渡しできるようにします」


「ありがとう。頼んだ」

チュウ・ネズミン様は、気さくに私に手を振ってから去って行かれた。


***


仮面舞踏会か・・・。


アンケートの項目に、少し首を傾げつつ、回答を書いていく。


こんなイベント、無かったよね。乙女ゲームに。


この世界は乙女ゲームの世界だと思う。

少なくともトラン・ネーコ様という、私がプレイした攻略対象者に違いない人がいるわけだし、そこは間違いないと思う。


だけど一方で、色々違っている。

まぁ、実際に生きているから当たり前なんだろうけど・・・。

ただ、間違いなく同じ部分があるからこそ、違うところは不思議に感じちゃうんだよね。


そういえば前世、『悪役令嬢に転生しちゃった! このままじゃ不味いから回避!』というマンガとかあったなぁ。

ひょっとして、ここにも、悪役令嬢に転生した人がいるのかな。

それで、没落とかを回避しようと色々動いていて、その影響で、色々違いが出てきてる・・・とか?


・・・悪役令嬢に転生している人、いるのかなぁ?


もしいたら。

会ってみたいけど、会うの、怖い。

基本、ヒロインの事を悪く言って、ヒロインを自滅させたりするし・・・。


悶々と考えつつ、アンケートの『仮面舞踏会に参加できるのなら参加したいか』という問いに『はい』と答えて良いものかも悩み、『大変憧れますが、着飾る事も、マナーなども、私には大変難しいので無理です。でも会場の端で様子を見てみたいです』と勇気をもって事実を書き込んだ。

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