表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/143

53.トラン様にお守りを

夜。

今日はいつも以上に、トラン様から連絡が来るのが待ち遠しかった。

トラン様の方がお忙しいから、いつも向こうから連絡してくださるのを待っている。


通信アイテムが震えた!

「はい!」


『あぁ。どうした、元気だな』

「はい」


『良い事があったのか?』

「はい」


『そうか』

と微笑ましそうなトラン様の声。


ルティアさんと護衛のグレンさんには、お守りが完成したことはトラン様に秘密にして貰っている。

自分で言いたいから。


「あの、お守りなんですが」

『あぁ』


「完成したんです!」

『あ。できたのか』


「はい!」

『ありがとう』


「いいえ、お待たせいたしました」

『・・・』

ふと無言。

でも、喜んでくれている?


「それで早速お渡ししたいのですが・・・明日とか、お会いできますか?」

『そうか・・・。朝、授業が始まる前でも大丈夫か? 早くなってしまうが』

「私は大丈夫ですが、トラン様は・・・」


あれ、無理をして押し付けていないか心配になってきた。


「すみません・・・」

『え? いや、俺は全く構わないし、明日会えた方が良い。申し訳ない、朝しか無理そうだ。時間もきちんととれない・・・構わないか?』


「はい。お渡し出来たら満足です」

『うん。じゃあ、申し訳ない、6:40に学院、この時間だから部屋は押さえられない。俺の教室は分かるか? そこまで来てもらえないか?』


「分かりました。ただ、教室の場所は分からないのですが、どこですか?」

『六番館の4階だ。中央階段を使ってくれ。待っているから』


「はい」

『申し訳ない、本当に、受け取るだけになる・・・』


「いいえ。お忙しいのに、無理を言ってすみません」

『・・・ごめん。また、ランチをきみと食べたい』


「はい」

『いつか、そうしたい』


「・・・はい」

どうやら、色々無理なんだ、と察した。


『俺は、きみとこんな風に話していて、迷惑かけてたりしないか?』

「え、全然迷惑じゃないです。嬉しいです」


『本当に? ・・・どれぐらい嬉しいのかって、聞いてみても、良いかな』


えっと。


「例えるのが難しいですね・・・えっと・・・」

『・・・』


「あの、前世で、私、キャラクターのエイティちゃんっていう、ウサギのキャラクターが好きだったんです」

『うん?』


「小さな頃、エイティちゃんランドに連れていってもらって、会えて、一緒に写真撮ってもらったんです。ものすごく嬉しくて」

『あぁ』


「その時ぐらい嬉しいかなと思います。すみません、例えがちょっと・・・」

『・・・ははは。そっか。嬉しいよ』


「元気出ました?」

『・・・。あぁ、そうか。うん。出た』


何が、あぁそうか、なんだろう。


「明日、朝早いけど、会えるの楽しみにしていますね」

『あぁ。そうだな。明日に備えて早く寝るか』


「そうですね・・・」

ちょっと笑うと、向こうからも笑い声がした。


『おやすみなさい。キャラ・パール嬢』

「おやすみなさい、トラン・ネーコ様」


***


翌朝。

いつもより早い時間だけど、余裕を持って起床。

学院に行く準備はもう整えてある! お守りだけは忘れてはいけない! と再チェック、よし、問題なし!


あ。

朝ご飯、大丈夫かな・・・?


心配したけれど、早い時間で驚かれたものの、普通にもう動いておられて、朝ご飯を無事貰うことができた。


モグモグと食べて、さぁ出発!


***


トラン様は、私の1つ上。私のクラスとは違う棟の教室になる。


初めて行くところなので緊張したけど、指定の棟にきちんとたどり着いて、中央階段を使って4階まで。


ちょっと早いから待つ予定。

お忙しいトラン様を待たせてはいけないから。


と思って4階フロアについてみれば、トラン様が普通に壁にもたれるように立っておられて驚いた。


「おはよう。・・・随分早いな」

トラン様も驚いたご様子だが、にこやかに挨拶してくださる。


「はい。余裕をもって早く来ました。お待たせしてすみません」

「まさか。来てもらって申し訳ない。それで、すまないが、もう渡してもらって良いか?」

どこか悲しそう。

私は急いで、用意していたお守りを手にして、トラン様にお渡しした。


「ありがとう。ずっと作ってくれていたんだろう? ルティアが言っていた」

「健康のお守りと、ケガが早く治りますようにっていうお守りです。効果、きちんとついているってお店のおばさんに見てもらいました。ちゃんとついているって・・・」


見れば、トラン様の目が少し潤んでいた。

そう気づいたら、言葉が出なくなった。


照れたようにトラン様が笑ってくれた。

「本当にありがとう。大事にする」


胸が詰まったようになって、声が出せなくて、慌ててコクリと頷いた。


「・・・行かなきゃいけない。早くに来てもらったのに、すまない。ありがとう」

「トラン様、元気でいてください」


「・・・なんだそれ。長く会えないみたいだ」

冗談めかしたようにしながら、トラン様の声が少し震えた。

「今、色々問題があって。きみにまで迷惑をかけたくない」

トラン様がじっと私を見ている。

言いたいことがあるみたいだけど、言えないみたいだと、思った。


「じゃあ。・・・また連絡する。良いかな」

「はい。待ってますね」


「あぁ」

トラン様は微笑んだ。そして、自分のクラスに歩き出された。


後ろ姿を少し見送ったけど一度も振り返らない。

なんだか寂しくなった。


私も自分の教室に戻ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ