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44.一人の一日

授業。休憩時間。

二つ目の授業。また休憩時間。

三つ目の授業。お昼休み。


誰とも会話せず終わっていく。

ルティアさんはいてくれるけど。


ポニー様の不在は私にはとても大きくて、圧倒的に一人の時間が増えてしまった。

休憩時間は、予習と復習にあてることにした。手持ち無沙汰だし、私には勉強が必要だし。


一方で、私が勉強に身が入らないということなのか、一人で静かにしている私の耳には、周囲の声も入ってくる。


レオ・ライオン様とモモ・ピンクー様は、婚約解消にもうなった、とか。

どうやらスミレ・ヴァイオレット様にかけられた呪いは、性格の酷いほど強まる呪いらしい、とか。

ミカン・オレンジ様は、家に戻らされているようだ。ヴァイオレット家が相当怒っていて、オレンジ家は潰されるかもしれない、とか。

トラン・ネーコ様が、ヴァイオレット家に頭を下げに行った、とか。


何が本当でどこから違うのか分からないけど、全部本当の事のように聞こえてくる。


昼休み。

2日前に、できるだけ一緒にランチを、という話をトラン様としたけど、無理になってしまったそうだ。

通信アイテムで直接そう聞いたのと、ルティアさんからもそう聞いた。

私は大丈夫だけど、トラン様が心配だ。


ルティアさんがいてくれるので、一緒に食堂でランチ。

それから、図書館に行って、30分ほどは勉強。それからお守り作り。


途中、ふらっとメーメ・ヤギィ様が現れたけど、気づいた時にはすでに後ろ姿だった。


ルティアさんによれば、しばらくじっと見て、そのまま去って行かれたらしい。なんだったんだろう。

特に用事は無かったんだろうけど、失礼な事をしてしまった。


昼休みが終わる前に次の授業の教室へ。

午後の授業は1つだけ。

その後は放課後。

テニス部に入ったけど、一人で行く勇気はない。


せっかく入ったのに残念だけど、自分が一人で行けないから仕方ない。

早いけど、食堂に寄って晩御飯を食べてから寮の自室に戻る。


ルティアさんは、心配してまたしばらく私の部屋にいてくれた。

その間、図書館で調べたことで、逆に分からなくなったところを復習して、それからまたお守り作り。


「お守り作りばっかりで、根を詰めてはいけませんわ」

とルティアさんが心配を始めるので、少し休憩してルティアさんと雑談。好きな服の話とか。

ちなみにルティアさんは動きやすい服の方が好きなんだって。仕事熱心な人だなぁ。


暗くなってからルティアさんは馬車でトラン様のところに帰って行かれる。

気分転換に内職の石を磨いて、それに飽きたらまたお守り作り。


夜、待っていたら大分遅い時間にトラン様からの通信が入った。

すぐに答えたら驚かれた。


『もう寝ていたかと思った。起こしたのなら申し訳ない』

「起きてましたよ」


『そうか。それは良かった。遅いからメッセージだけでもと思ってたところだったので、驚いた』

トラン様が少し嬉しそうだ。

私も嬉しくなる。


「これ、便利だけど、初めからメッセージをって思っている時はちょっと使いづらいですね」

『あぁ。きみとは会話優先になっているからだ』

「そうでしたか。でも声が聞けるのは嬉しいです。メッセージのつもりでいても」

『俺もだ』


今日起こったことを話してみる。

ポニー様が朝に挨拶してくださった事。なお、好きだとか言われた部分は勿論伏せる。

呪いは今日は無くて、ポニー様がおられないので、休憩時間は勉強とかをすることにした、ルティアさんがおられて本当に良かった、とか。


今日のトラン様は、私の話をまず聞きたいというので、今日の流れを話してみる。

『うん』『そうか』

とどこか微笑ましそうに聞いてくださるトラン様。

穏やかな返事。


とはいえ、心配だ。


「それで、今はトラン様と話しています。今日はそんな感じでしたよ」

『そうか』

「今日も大変でしたか?」

『ん?』

ちょっと意外な事を聞かれた、みたいな声音。


私は話題をすり替えた。

「お昼は何を食べましたか?」

ちょっと楽しそうに。


『今日の昼は、急いでいたので、色んなものをギュウギュウに丸めて潰したものを食べた。勿論手づかみだ』


「おにぎりみたいな?」

『おにぎり食べたいな。コメが無いのが残念だ』

「無いんですね・・・あれ? リゾットはありますよね?」

『あるな』

「じゃあおにぎり作れるんじゃないでしょうか」

『ん? そうか。そうだな』


「トラン様。しっかり。おにぎり食べられますよ!」

『あぁ。とはいえ、コメより肉が好きなんだ』

楽しそうに笑う。


「なんですか。あれ? じゃあ今日はお肉をギュウギュウにしたんですか?」

『あぁ。肉もだが、野菜もな』

「すごそうですね」

『人には勧められない。見た目も悪いからな』

声音が笑ってる。

「そうでしたか」

でもちょっと見てみたい気もします、なんて付け加えて私も笑う。


たわいもない話。重要じゃない話。


本当は大変な話も聞きたい。

でも。

大変でしたか、と聞いて、ん? なんて分からない風を装った返事だったから。


だから、トラン様が楽しめる話。どうでもいい話ばかり。くすくす笑い合う。

それで、また明日の約束をして。

おやすみなさい。を言い合って終わる。

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