表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/143

43.ポニー様の挨拶

翌日、登校したら、ポニー様が廊下で私を待っていた。

「キャラちゃん、挨拶をしておこうと思って待ってた」

「え。はい。おはようございます」

「違うんだ」


ポニー様が酷く真剣な顔をしていた。


「僕」


なんだろう。


真剣な顔で私を見つめていたポニー様は、ふと視線を下げて、私の両手をとった。

その状態で、私をまたしっかりと見つめた。


「しばらく、学院に来ない」


え。

私の驚きを見て取ったポニー様は、頷いてみせた。

「・・・放っとけないんだ。キャラちゃんの事よりも、どうしても気になる。僕たちは小さい頃から一緒にいた。婚約は解消したけど、だけど」


スミレ様の事だ。きっと。絶対。

私はコクリ、と頷いた。


「戻ってくる。だけどしばらく僕は来なくなる。キャラちゃんがいじめられないかが、心配だ。ごめんね」

「いいえ。いつも守ってもらってました。一人でも頑張ります。あの、詳しい事は分からないけど、頑張ってください」

「ありがとう。キャラちゃん、呪いだけは本当に気を付けて。他の事も勿論だけど、絶対に気を付けて」

「ありがとうございます。ポニー様も。絶対にお気をつけて。呪いも、他の事も」

「僕はある程度耐性がある。うん、でもお互いに元気なままで、また会おう」

「はい」

「もう行くね」


ポニー様は、私の手を離された。

本当に、私に直接言うためにだけ、来てくださってたんだ。


ポニー様は私を見て笑った。

「悔しいな。僕、キャラちゃんの事、好きだよ。好きだった。友達以上になれたらいいなって思い始めたところだった」


え!?

何を。


焦る。慌てる。

え、周りの人もギョッとしてる。

挨拶だって注目されていたのだ。普通に今は登校時間だ。


「でも僕、どうしても、やっぱり、放っておけなくて。なんだろう。自分でも不思議で理解できないよ。離れなくちゃいけないの、悔しいんだけど、仕方ない。行ってあげたいんだ。それに、向こうは迷惑かもしれない。会ってももらえない可能性は高いし、僕がただ偽善的なのかもしれない。だけど、それでも行きたい。だから行ってくる」

「・・・」

ポニー様は、私の返事を待つつもりではないみたいで、笑顔で私に声をかけている。

私の方は、どこか、あっけにとられて、聞いている。


「だから、次会う時も、友達として会おう。ねぇキャラちゃん。僕と友達でいてくれる?」

「え、あ、はい」


私の返事に、ポニー様は嬉しそうに、それから少し残念そうに笑んだ。


あれ。

私、返事を間違った?


「元気でね。キャラちゃんに何かがあったら、僕は絶対黙っていない。だから、気を付けて」

最後は、周りに告げるように、どこか凄んだポニー様。


くるり、と後ろを向かれた、と思ったら、そのまま歩き出し、そして駆けだされた。

急いでいるんだ。


あっという間に、出て行かれた。


私は茫然と、見送っていた。


***


動揺のあまり、通信具を服の上から握り込んだ。


『・・・どうした!』

トラン様の声が聞こえて驚いた。


す、すみません!

あれ? 服の上からでも繋がるの?


他の人の目もあるので、慌てて教室に入って、部屋の隅に。

「すみません、なんでもないです。なくはないですが、その、えっと」

『・・・大丈夫か?』

「私は。あの、ポニー様が」

『ポニー?』

「学院にしばらく来ないって、今」


話そうとしたが、ざわざわと教室に人が入ってきて、内緒話しにくくなっていく。


「メッセージで」

『分かった』


一度手を放す。

もう一度そっと握ったが、声は聞こえない。ほっと息を吐いてから、頭の中で伝えたいことをトラン様に言うイメージで。


“ポニー様が、たぶん、スミレ様の関係で、しばらく学院に来ないと、挨拶してくださって、出て行かれました”


手を放す。

これで言いたい事伝わるかな?


数秒後、通信具が震えた。コツコツ、と音もする。思わず握りそうになるのを我慢する。

しばらく待つと音は消える。

服の上から掴んでみる。頭にメッセージが浮かぶ。


“分かった。周囲に気を付けて”


え、周囲に気をつけてってどういう事?

ミカン・オレンジ様っていうこと?

それとも単純に、ポニー様がいなくなる、つまりフォローしてくれている人がいなくなるから気を付けて、って事?


尋ねようと思ったけど、あまりやり取りするのも迷惑だ。

つまり気を付けて過ごせばいいわけだし。


“はい。分かりました”


とだけ返事をする。その後の返事は来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ