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03.悪役令嬢からの嫌がらせ

朝。目を覚ます。

ぼんやりと着替えしてから、寮の管理人さんのところに朝ご飯を貰いに行く。

メニューは決まっている。パンに具だくさんのスープ。

これは平民で学院に通う事になった私への特例措置。

他の貴族の皆様は、使用人がいるので、部屋に用意してもらっているご様子。


トレイを持って、自分の部屋に戻る、と・・・。


「え・・・」

部屋の床が、水浸しになっていた。


うそ・・・。

ちょっとご飯を貰いに行くだけだし、寮の中だから、カギはかけなかったのだ。

思わぬ事態に動揺する。


カバン!」

我に返って、食事の乗ったトレイをテーブルに置き、鞄を取り上げる。完全に水につかってる。


ちょっと待ってよー!!

鞄は皮で出来ているから、濡れたらバキバキになっちゃうんだ。

慌ててタオルを出してきて鞄を押さえる。水分を取らなくちゃ。


ざっぱぁ

入り口から、また水の音がした。

「!」

驚いて顔を上げると、ショックで開けっ放しにしていたドアから、誰かの逃げる姿。

床の水溜まりに波が広がっていく。明らかに水を追加された。


だれっ!?


慌てて入り口まで駆ける。でも水浸しで床の水にうろたえてしまって、逃がした。

とはいえ、階段を上って行ったのは分かった。

ということは、服装から見ても、どこかのご令嬢に仕える使用人の誰か。

どのご令嬢の指示だろう?

ちなみに寮にはいくつも棟があって、ここは一番下のランク、使用人と私の部屋の棟。


「なにー? 自分の部屋も安心できないのー?」


前世でこんな扱い受けたことない。

昨晩、今世について振り返ってみて、分かる範囲で状況整理してみたけど、寮の自室が被害に遭う事は今までなかった。


ものすごくショック。

だけど、一方で、ゲームの世界だと思うとものすごく腹が立ってきた。


生きてるから、ゲームじゃなくて現実だって思わないといけない。

マンガや小説の『悪役令嬢に転生しちゃった!』ストーリーでは、ヒロインはこの世界がゲームだと思って好き勝手して破滅してしまう。

だから私も注意しなきゃいけない。


だけど。

どこかで『ゲームが』っていう気持ちを持ったら、ショックよりも怒りがわいてくる。

メソメソしているよりそっちで行こう。


ゲームのストーリーだからって、好き勝手しやがって!!

主人公なめんなよっ!!


***


とはいえ、具体的に反撃方法がさっぱり思いつかない。

うううーん。うーん。くそぉ! 


そしてあまり悩んでいる場合でもない。学校に行かなくちゃ。


急いで掃除道具入れからモップを持って来て、床にまだ広がる様子の水を拭き取る。


それからスープは急いで飲む。うう、難しい!

食べる時間がもう無いのでパンはハンカチで包んで、鞄に。

鞄はしっかり濡れているけど、これしかない。中身は無事だったので本当に良かった。


鍵を間違いなく閉めて、管理人さんに一声かけていざ学校へ!


***


道中、ものすごく不安になった。


・・・え、鍵しめたら大丈夫だよね?

簡単な鍵だから、誰か勝手に開けて不法侵入したりしないよね? ね?


「ヒロインって、メンタル強いなぁ・・・」


負けるものかとは思うんだけど、前世ではありえない事態に不安が募る。


えー、トラン様に相談して良いかなぁ。駄目かなぁ。


・・・うん、しよう。早く相談しよう。

だって一人では抱えきれない。前世の感覚でいったらものすごいイジメだし、かなり怖いよ!

こういうのは抱えちゃ良くない。


トラン様はお金持ち。お金でズバッと解決してくれないかなぁ。

お近づきになりたい動機がお金目当てって不純だね。


***


「あら、なんてみずぼらしいご様子なのかしら。私でしたら、とてもそんな姿で人前に出られませんわ・・・」

登校して校舎に入った途端、ご令嬢の一人が現れた。

分かります、待ち構えていたんですね。


スミレ・ヴァイオレット様。

同じクラスにいる攻略対象者の対の悪役令嬢。


元気なモモ様に比べて、ちょっと儚い系。

だけど、性格はやっぱり悪いと私は思う。


「すみません、部屋が水浸しになってしまって、鞄も靴も濡れてしまったんです」

「まぁ、でしたら来なければ宜しいのに・・・。『無知甚だしい者ほど厚かましい』。この意味、あなたはご存じ? きっとご存知で無いのでしょうね・・・」

ほぅ、と憂い顔でため息をつくスミレ様。


おぅ・・・。

スミレ様の攻撃って、心にズーンと重いダメージが・・・。

朝から嫌な気分になっちゃう。


「おはよう~! 今日も元気かな?」

「! え、えぇ、おはようございます、ポニー様」


あ。スミレ様と対になる攻略対象者、ポニー・ウゥーマ様がご登場だ。

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