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27.トラン様とレオ様。そして馬車。

さて。今日の私の部活は終了。


今日はトラン様も馬車で送って下さるというお話になり、急いで着替えてトラン様のところに戻ると、レオ様は体操服姿のまま、トラン様と話し込まれていた様子だ。


雰囲気から、物凄く真剣なお話っぽい。

近寄らない方が良い気がする。


だけど、ジェイさんが私を見つけて、トラン様にそっと伝えてしまった。

こちらを見られたので、礼をして、近づいた。


トラン様が立ち上がる。

「レオ。俺は行くが、くれぐれも判断を誤るな。俺のところとお前のところは状態がそもそも違った。俺は初めから気が合っていなかった。だからこそ仮だった」


レオ様は真剣な顔で、立ち上がったトラン様を見つめている。


トラン様は困ったように息を吐いた。

「・・・誤解は解けたなら良いが」

「あぁ」

とレオ様が力強い目で頷いていた。


「相手がどう思ってくれているかきちんと考えろよ」

「・・・相談に乗ってもらえたことに感謝する。トラン・ネーコ様」

「きちんと乗れたか不安だが。レオ・ライオン様。公明正大な判断を。きみの家の通りに」

「あぁ」

レオ様がどこか不敵に笑う。

一方、トラン様は心配そうだ。


「キャラ・パール嬢を待たせている」

レオ様が私を見て、笑んだ。

「あぁ。では行く。今日は付き合ってくれて感謝だ。できれば今後もよろしく頼む」

「試合もあるが、トラン様がその上で呼び出すのであれば付き合おう」


トラン様がレオ様の言葉に少し笑った。

「そうだな。当然、配慮する。レオには学院を背負ってもらわなければならないからな」

「任せてもらおう」


コホン、とジェイさんが咳ばらいをして、お二人は会話をそこで切り上げた。


仲が良いんだなぁ。

お互い、硬い口調で話すからものすごく真面目な会話に聞こえちゃうんだけどね。

ん。真面目な会話だったのかな。


***


帰りの馬車、トラン様と私のみ。ルティアさんは、ジェイさんたち他の方々ともう一台ある馬車に乗ってついてきている。


「きみ、寮を変わる気はないだろう?」

馬車の中、トラン様が。

「え、はい」

自分で部屋を借りる方法もあるけど、お金的に無理だ。寮の方が安い。


「いろいろ気になる事があるんだ。だから、俺の精神安定のために、勝手にきみに合う呪いを買った」

「えぇ?」


「ルティアに持たせたので、設置させてもらいたいんだが・・・構わないか?」

「・・・買ったんですよね・・・どんなものですか?」


「女神の守護、と呼ばれるもので、悪意を持って近づいた者に不運を起こさせて、守っている範囲に届かないようにする呪いらしい」

「こわいです!」


「俺も初めは驚いたが、具体例を聞くとそうでもない。『バケツの水を床にまいてやろう』と考えて近づいてきた者には、途中で足を滑らせて目的地に至る前にバケツの水を零してしまう不運をもたらす、という感じらしい。ぴったりだろう」

「あ・・・はい」


「他の例として言われたのは、害虫を忍び込ませようとして、うっかり自分の指を噛まれてしまい指が腫れた挙句に害虫はどこかに逃げてしまう不運とか。聞いて、きみに丁度良いと思って勝手に買った。きみの性質にあったもので俺には使えない。だから、迷惑でないなら・・・使ってくれないか」


「ありがとうございます・・・」

なんだかたくさんの事をしてもらっている。本当に。

そういえば、アイテムの店で、真剣に厄除けについて店主さんに聞いておられたけど・・・これを選んでくださってたのかな。

なんだか泣きたくなってくる。


「迷惑だったら言って欲しい。その、言われないと俺は調子に乗って押し付けているだけかもしれない。そうはなりたくない」

「・・・感謝してます。どうお返ししたら良いだろうかと・・・すみません」

「・・・俺が、きみの嫌がる事をしていたら、必ず言って欲しい。勘違いして酷い事を我慢させていたらと、不安になる。だからその意味でも遠慮しないで欲しい」

「はい。だけど、全部、有難くて、本当に、今こうやっていられるのトラン様のお陰です」

「・・・」


今日、レオ様に謝罪されて思った。

多分、あの日にルティアさんが養護室の私を見つけてくれてなかったら、もうこんなに安心して学院なんかにいられなかった。

トラン様が気にかけてくれたからだ。もちろん、ルティアさんにも感謝してる。

一番キツイ時に助けてもらえた。

だから私は学院に通えている。周りから浮いたままで、呪いアイテムも使われ始めてるけど。


「・・・俺、金ならいくらでもあるから、気にせず使ってくれ。本当だ。『昔』を覚えている同志だろう? 助けさせて欲しい」

少し砕けた雰囲気になるように頑張っておられるトラン様に、笑みが出てしまう。

「辛い事とか、全部なんとかする。一人で抱えるな」


好きだ、と思った。

声を出すと泣きそうな声になりそうな予感がして、声が出せないから、じっと見つめ返した。

私は、トラン様が好きなんだ。


私は笑顔になるようにがんばった。


どうしよう。好きな人ができた。どうしよう。


前世で憧れてたけど、本当に好きになるって、ちょっと苦しいのか。

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