24.アイテムのお店へ
さて。
おまじないアイテム系の店は、学校を出てすぐのところだった。
ん? 見覚えが。
入店する。少し暗い店内に、ゴチャゴチャとものが置かれている。
一見すると、アンティークの雑貨屋さんみたい。
「トラン様、よく来られるのですか?」
馬車で連れてきてくださったトラン様を見上げ、聞いてみる。
実は足も怪我があり、歩けるけれど、馬車とかあるならその方が良いらしい。
絶対、健康祈願とか、怪我がすぐ治るようなお守りを見つけよう。
金額だけが心配だ。私に買える範囲でありますように・・・。
「いや。普通は、商品をもってこさせるからな。わざわざ店に出向く事はしない。・・・なんだかこう、懐かしさを覚える散らかり具合だな」
「『前』に?」
「あぁ」
つまり、前世のどこかは大変散らかってたんですね。
私たちを先導する形のジェイさんが、店主に声をかけた。現れたのは人の好さそうなおばさんだ。
「はいはい。何が宜しいでしょう?」
「! あっ」
「どうした」
思わず声を上げたので、トラン様や皆様の視線が集まる。
「い、いえ」
と私は慌てた。
「その、『前』に見たことあるお店に、とても似ていて、今思い出したから・・・!」
そういうと、皆それぞれの解釈で納得してくれた。
トラン様には、『前世』という意味だと分かってくれるはず。もっと言えば、『前世で行ったゲーム』なんだけど。
このお店、何か似てると思ったら、前世でやってた乙女ゲームにもあった!
ゲーム内のお金で購入でき、攻略対象者に贈ると、関連した部分で好感度があがるというもの。
・・・う。
好感度に効果・・・。
そう分かっててトラン様にお守り差し上げるって・・・。これがよく嫌われる『あざとさ』!?
いやそれより、好意が直結する行動というのが私にはものすごく恥ずかしい!!
うわぁあー。
トラン様を盗み見るつもりでチラリと見上げると、バッチリと視線があった。
「どうしたんだ? 店主がきみを待ってるんだが」
トラン様の声にはっと我にかえる。
困ったように店主さんが、机の上に白いピラミッドみたいなオブジェを出していて、私を見ていた。
店主のおばさんが説明してくれる。
「適性をまず見るんだよ。右の手のひらを出して、このスキマにいれてちょうだいな」
「は、はい」
あれ?
・・・適性とかってなんだろう。
言われるままに手を出して、白いピラミッドと、下のプレートの間にある隙間に手を差し込む。
途端、白いピラミッドが光って、文字が出てきた。
「おや! 驚いた」
「なんだ」
狭い店内、少し後ろに下がっていたトラン様が近づいた。
「女神さまの加護だよ! 羨ましいね! 簡単な不幸なら知らないうちに遠ざかってるよ!」
「・・・」
「・・・」
おばさんの言葉に、私とトラン様がふと黙り込む。
え。女神さまの加護があって、今の状態なんですか? そうなんですか・・・。
「どうしたんだい、揃って渋い顔して。珍しいんだよ。もっと喜びな!」
「・・・はい」
実感が無さ過ぎて困っているだけなんです。
まぁ、女神さまに、乙女ゲームっぽい世界に転生させていただいたから、その意味で十分加護をいただいたんだよね・・・きっと。
切り替えるように、トラン様が店主のおばさんに聞いてくれた。
「各種の危険な呪いの対策になるアイテムを買いに来た。彼女へのお勧めは?」
「そうだねぇ。白系統だから・・・ちょっとつけて試してみよう。手はこっちに出して」
言われるがままに右手を置き直す。
色んな形の白いアイテムを持たせてもらって、結局、小さな鏡をオススメされた。
「跳ね返すタイプが一番効率が良さそうだよ。値段もお手ごろだしね」
チラと値札を見せてもらうと、私にも買える範囲だ! 良かった。
「持ち主を選ぶアイテムでね。弱い子は、関係ない他人に跳ね飛ばしちゃうからどうしてもオススメできないんだけどね、あんたみたいに加護が強い子は、呪った本人に返すからね。基本が鏡で安いから、その点でもかなりオススメだね」
呪った本人に返すなら良い気がする。自業自得というやつだ。
何より買える値段!
「これください」
「まいどあり。他も見るかい?」
トラン様を伺うと、
「好きにどうぞ」
などと言った。どうして敬語に?
不思議に思ったのが分かったようで、トラン様はまた肩をすくめるような動きをした。
「女性はこういうお店が好きなんだろう? 時間はまだ余裕があるので気にするな」
「ありがとうございます」
私の返事に、トラン様が少し優しく笑まれて、ドキリとした。
うわー、顔に怪我があるのにカッコイイ。
焦ってすぐ顔を逸らせてしまった。




