表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/143

02.トラン・ネーコ様、ご登場

「そこで、何をしている」

「!」


高笑いしていたモモ様がサッと顔色を悪くした。

私はまだ床に手をついたような体勢のまま、現れた人物を見た。

・・・あれ?


モモ様が少しひるむ。

「あ、あら、ごきげんよう。トラン・ネーコ様」

「ごきげんよう、モモ・ピンクー嬢。とはいえ、この状況は?」


・・・記憶がよみがえった今、お名前がダサい。

うん、プレイ時は、好きな名前に変更できたんだ、攻略対象者って。

でもここは名前はデフォルトのままみたい。


とにかく、今現れたのは、トラン・ネーコ様。

実は私が気に入って、唯一攻略できたキャラだったりする。


だけど変だ。今まで私、トラン様と会ったこと無かった。

それに、モモ様は別のキャラの悪役令嬢。

どうして、モモ様のイジメのフォローに、組み合わせじゃないトラン様が出てきたんだろう。


「い、いえ、私知りませんわっ! 失礼します!」

脱兎のごとく、モモ様は姿を消していかれた。


現実的にマナーが酷い気がするけど、こういうのは乙女ゲームっぽいなぁ。


「・・・大丈夫か?」

トラン様が私に声をかけて、心配そうに私に近寄り、少し考えてから手を差し伸べてくれた。

ネコ的お名前だけどもちろんイケメン。


「・・・はい」

ありがとうございます、と呟くようにしながら、私はついお顔を見つめつつ、お手はとらずに立ち上がった。私の手、今びしょ濡れだから。


トラン様だけど、ネコっぽいという設定の人で、身のこなしが優雅。

体力より知力。その知力もちょっとズルイ感じに使ったりする。

ヒロインには比較的すぐ心を開いてもくれるけど、実はツンデレ。黒髪で琥珀色の瞳。


この人だけ最後までプレイしたから、最後の甘い決めゼリフを覚えてる。

『きみだけが、私を甘やかす』


今思い出すとちょっと意味不明。だけど、やっぱりゲームしてた時はものすごくテンション上がって嬉しかった!

ゲームは、電子機器を使っていいエリアに移動しないとできなくて、だから他の人の目もたくさんあったのに、このシーン、もう嬉しくて挙動不審になってたと思う。

・・・仕方ないじゃない、病室ではできないんだから。


ちなみに私、つまりヒロイン『キャラ・パール』・・・これもデフォルトネーム・・・は14歳。

トラン様は1つ年上で15歳。

そして、年齢がヒロインに近いほど、簡単に会える。なのに、今まで会ったことが無い。

やっぱり変だ。


「・・・俺の顔に、何かついているか?」

「え?」

トラン様が私をじっと見つめて、そう尋ねた。私がつい見つめてしまってるからだ。


・・・。・・・え?


『俺』?


トラン様の一人称は『私』だったのに・・・。


トラン様は真剣な顔になって、慎重に私にこう聞いた。

「・・・少し尋ねたい。ミラクル、セレブレーション、という言葉に、聞き覚えはあるか」

「えっ!」


ゲーム名!?


「・・・日本」

とトラン様が慎重な声で。

「トラン様もなんですか!?」

食い気味に、私は尋ねた。


トラン様は、コクリ、と頷かれた。


嘘・・・。


「色々話したい。良いか」

「はい、私もお話ししたいです」

私も頷く。


***


というわけで、現在、救護室に。


頭をつい手で押さえてしまっていたので、トラン様が私の状態を心配したからだ。

「頭打ったなら、慎重にした方が良い」

とのお言葉。


ちなみに、

「歩けるか? 動かない方が良さそうなら、俺が背負って運んでやれる」

とも言われてビックリした。


もちろん、歩けると思うので慌てて辞退。


だけどトラン様、良い人みたいだなぁ。

とはいえ、ゲームのトラン様とは全然違う。


さて。

救護室で先生に診てもらった結果、頭を打ったのだからと、少しベッドで横になって休むことになった。

そしてびしょ濡れになった制服は、トラン様が手配して、一着支給して貰えることに。

すでに体操着もダメになっているから有難いデス。


一方で、廊下には人もいたし、込み入った話ができないままだ。

ベッドで安静と言われた私もしばらくここから動けないし。


ということで、ボソボソと、先生には聞こえないよう気を使いつつ、小さな声で会話スタート。

「きみ、主役の子?」

「はい、そうみたいです」


「俺、知らなかったけど、これって酷いゲームだったんだな」

「実際に体験すると結構ハードだったんだって思います。・・・あの、トラン様、他にも知っていますか?」

「俺たちと同じ状況の人ってことか?」

「はい」

「いや、知らない」

「そうですか・・・」


「俺、数か月前に思い出したばかりで、よく分かってないんだ」

「私はついさっきです。でも、私は、その、違うって分かったんですか?」

「ゲーム名が聞こえたから、驚いた」

なるほど・・・。


「本当だったら、モモ・ピンクー嬢の婚約者の方に、俺から注意を入れるものなんだけどさ」

「声かけてくださってありがとうございます」

「いや、俺も声かけて良かった」


***


「そろそろ良いだろう、帰りなさい」

と先生に言われ、寮に帰ることに。

トラン様は、私への嫌がらせを心配し、寮まで送って下さった。


お陰で、今日は無事に寮に戻ることができました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ