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16.鞄と次の休憩時間

「焼却炉の方に行こう!」


ポニー様はそう言ってダッと駆けだされたのだが・・・早い! 早いです!!

見失わないように必死だけど、すぐ引き離されそうになる。まぁ、気がついて何度も足を緩めてくださるのですが・・・。


休憩時間の残りも気になる。

ポニー様を巻き込んでしまったら駄目だ、だから私だけ探します、と言うべきでは。

と思うんだけど、とにかく追いつけないので、そんな事ポニー様に言う余裕が無い。


急にポニー様が足を止めた。


ポニー様の前に、人がいる。ポニー様が私の鞄探しを頼んだホムラ、という男の人だ。

礼をしながら、両手で紙に包んだものを差し出している。会話をし始めている。

紙の包みが解かれる。中身が少し見える。


ポニー様が難しい顔をした、ところにやっと私も追いついた。

中身もきちんと見えた。


「あ! 私のです! ありがとうございます!!」

随分ぐちゃぐちゃに汚れているが、間違いなく私の鞄だ。


「ホムラ、中を開けて見せてあげて」

「承知いたしました」

ポニー様がなぜかホムラさんにそう頼んだ。

私、自分で開けるのに・・・? と不思議。


「キャラちゃん、中身大丈夫そう?」

「はい、多分」

「じゃあ、中身だけ取り出そう。ゴミの中に混ざっていたみたいで、鞄自体は諦めた方が良い」

「え」

そんなに酷いの? と鞄を見つめると、ホムラさんが少し、紙で包んでいる部分を外してくれた。


何かがべったりついている。匂う。蟻が数匹ついてる。

ポニー様が心配そうだ。


「・・・中身が無事でよかったです」

「・・・ホムラ、発見ありがとう。きみはこの後、これが誰の手によって『ゴミ』として扱われる事になったのか調べて」

「承知いたしました」


「キャラちゃん、中身だけ取り出して、外は捨てよう」

「・・・はい」

ポニー様にそう言われたら、それが正しいんだろうな、と思えた。頷いた。


ホムラさんが差し出してくれる鞄から、中身をごっそりと取り出して両手に抱えた。


***


次の授業は何とか間に合った。

ポニー様、ホムラさん、本当に有難うございます。


そして、次の授業が終わったら、そっと来ていたルティアさんが私を呼んだ。

鞄が無いので、全てを両手に抱え、案内されるままについていく。

教室を出る時に、ポニー様と目が合った。無言で少し礼をした。


***


案内された部屋、トラン様は立ち上がって入室した私を出迎えた。

「大丈夫だったか? 痛みは? 俺の婚約者が本当にすまない」

心配そうに私を見た後、両腕に抱えている勉強道具一式を見た。


「・・・道具も壊されたのか?」

「・・・鞄だけ。いろいろありまして」

話すと長いしどう言っていいのか分からないのでそう答えると、トラン様の眉毛が明らかに下がった。


「まず座ってくれ。皆は控室へ。昨日と同じに」

使用人の人たちが控室に行く。


トラン様が正面に座ったソファーから少し身を乗り出す。

「色々聞きたいが、休憩時間は25分。移動を考えると15分程度しかない」

「はい」


「まず、ミカン・オレンジ嬢についてだ。本当に申し訳なかった。二度とさせない。理由を取り上げようと思う」

「・・・?」

理由? 手を打ってくれるという事だろう。素直に頷いた。

「ありがとうございます」

「礼など不要だ。俺の読みが甘かった」


「・・・。あの、制服も有難うございます。ルティアさんがすごく助けてくださいました」

「ルティアが助けになったのなら良かった」

トラン様が小さくため息をついた。


ルティアさんがいなかったら、私はもう今日は学院にいなかったろう。鞄の中身も失っていただろう。


トラン様が真面目な顔で少し机を見つめた。何か考えている様子。

見ていると、ふと顔を上げて私を見た。


「それから、今後の事を考えて先に確認したい」

「はい」

なんでしょうか。


「昨日渡した通信アイテムは正しく動いているか? 昨晩から何度かメッセージをいれているんだが・・・」


・・・ん?

私は首からかけているカゴを取り出して、中身を見た。


「メッセージ、ですか? これ、電話アイテムですよね?」

「メッセージもやり取りできる。卵の中からヒナがつつくような、コンコンという音や振動はなかったか?」


「・・・あれ? これ、光るんですよね?」

「俺そんな事言ったか?」

「言いませんでしたか?」

「渡した時、きみが知っている風だったからつい・・・。これは光らない。連絡があると音と振動がある」


へぇ・・・。


改めて、トラン様に使い方を教えてもらった。


結果、電話もできるけど、相手が出ない時はメッセージを残すこともできるし、メッセージでやりとりもできると分かった。

ゲームのアイテムより随分と高機能だ。


「電話の時は話すんだが、メッセージの時は、握って連絡したいことを頭で考えたらそれが届く。メッセージの方が便利だ。無言でやり取りできるからだ」

「それって心の声が駄々洩れになります?」

嫌じゃない? 怖くない?


「いや・・・。話しているつもりで考える、という感じだ。それから俺のメッセージが数件入ってないか確認して貰えないか? 容器が悪かったのか? 取り出して握ってみてくれないか」

「あ。本当だ、これ震えてますね」


トラン様がどこか仕方なさそうに、うん、と頷いた。


「嫌でなければ、これで色々やりとりさせてもらっても良いか?」

「はい」


「こちらの都合で悪いんだが、部活の試合の選抜があり、普段より忙しくて」

「部活・・・テニスですか。試合があるんですね」

熱心だなぁ。学校っぽい。


「きみも入らないか。テニス部」


はい?

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