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15.ポニー様とスミレ様と私

「きみが望むなら婚約は白紙にしたいと思うけど、僕との関係を望むなら、互いに理解を深める段階にきてるんじゃないかと僕は思う。それでも相いれない事だってあるはずだけど、信頼関係を築く事は出来ると思う」

ポニー様が言う。


少し様子を探るように、スミレ様はじっとポニー様を見つめている。

「・・・それは。『ポニー様が平民などと交流する事』を私が許容するなら、私を信頼する、という意味のご提案をいただいているということでしょうか。傲慢なお話に思えますけれど。ポニー様の私への信頼がどれほどの価値があるとお思いですか」


「・・・第三者がいるところで言う話ではないけど、僕たちは、キャラちゃんがいないとろくに会話を交わさないよね。だから今言わせてもらうよ。僕はきみが、誰に憧れを抱いているか気づいているよ。僕なんか及びもつかない人だっていうことも理解してる」

「・・・!」


スミレ様の目が大きく見開かれた。サァッと顔色が悪くなった。


「一方で、きみはあのお二人の円満な関係に憧れてもいる。・・・僕ときみであんな関係になれるか試すべきかもしれない。だけど、きみは気づいてないと思うけど、他の男だってきみに憧れているのは多いよ。僕が婚約者だから、歯がゆい思いをしてるんだ。・・・だから、僕以外を望むなら僕たちの婚約関係は解消しよう。僕は交友関係に口を一々出されたくないし、きみはもっと理想に近い人を選べるかもしれない」

「・・・ポニー様、私に何かを聞こうとしておられましたわ。そちらの話はもうよろしいの?」


ポニー様はゆっくりと暗さを感じる笑顔を見せた。

ちなみに傍で、私はひたすら空気になろうと身動きと呼吸を止める努力をしている。


「そうだね。そちらの方が急ぎだよ。この子はいつも嫌がらせを受けてる。鞄が見つからないんだ。どこにあるのか、きみ、耳にしてないかな。女性のネットワークはすごいから」

「・・・燃やされていると思いますわ」


えぇっ!?

空気になろうと徹していたつもりが、思わず息を飲んだ。

私の動揺は、傍のポニー様に筒抜けだったようだ。


「早すぎるね。どのような経緯で? まだ間に合うのなら止めに行く」

「・・・誰のものかわからない随分とみっともない鞄、しかも廊下に捨てられている、ならばゴミ、焼却処分、という話ですわ」

「焼却炉にもういっているときみは思う? まだ回収前だと思う?」

「・・・焼却時間など私が知るはずありませんわ。逆に言えば、残っていても私が知るはずありません」


鞄の中身を見てよー! 名前も書いてあるから、私の持ちものだって分かるはずだよ!!

・・・私のだって分かってその扱いかも知れない・・・。

気持ちが黒い暗いものでグルグルザワザワする。


「分かった。ありがとう。キャラちゃん、急ごう」

「はい」

ポニー様に肩を叩かれた。

ポニー様が一礼をとって走り出すので、私も慌てて同じようにして後を追おうとした。


「お待ちください。言い足りていない事があります。言い逃げはあまりにも無礼ですわ」

「・・・ごめん。急ぎたいんだ。焼却直前かもしれない」


「・・・私が、私の好む人とは、合わない事は、私は理解しているのです」

「・・・」

スミレ様が目を伏せて憂うように言った。ポニー様は完全に立ち止まった。真剣な顔だ。


「ポニー様と合うのかと言われれば、正直なところ、私には貴族としてのプライドに大きな差を感じております。あなたはむしろ、例えば・・・モモ・ピンクー嬢のようなご令嬢の方がお似合いなのでしょう」

「そうかな」

ポニー様はスミレ様に向かって苦笑した。モモ・ピンクー嬢についてのあたりで。


「そう思えますわ。女の私の目から見ましたら。男性の目から見ると違うのかもしれませんが」

「僕は彼女をそんな目で見たことは一度もないんだけどな。とはいえ、婚約者のレオに好意を寄せているのは見て分かるから、その意味で好感は持っているよ」


「・・・私たちは、もうこの年齢になりました。・・・うまくいくとお思いですの?」

「分からないよ。試しに始めて見るか、試しに始めるという事を止めておくか、のどちらかだ」


「・・・お急ぎのところ、お引止めいたしました」

「近いうちにランチでも一緒にどう? 僕だけでは来にくいのなら、生贄いけにえにキャラちゃんも交ぜて3人で」


えぇ!?


私も驚いたが、スミレ様も驚いたようだ。

ポニー様も困ったように笑っているが、案外本気の提案かも。


えぇえ・・・。

胃が痛くなりそうなんですけど・・・。冗談でも止めてください。


「考えておきますわ。・・・急がなくて良いのでしょうか。思い出の品でも入っているなら、特に」

「あ」

「そのようなものは入れて来てません」

と私から返事した。

スミレ様は冷たい態度のままだけど、少し私のために言ってくれたように聞こえたからだ。


「急ごう。またね、スミレ嬢」

「えぇ。ポニー様。生贄つきのランチで構いませんわ」


えええ!?

本気でそんな話が進むんでしょうか?

嘘ですよね?

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