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135.ポニー様、駆けつける

「ミチェル・アドラは色々と被害を与えている。例えば、以前にキャラ・パール嬢が教室に入るところで水の入ったバケツを落とされたことがありました。モモ・ピンクー嬢は現場を目撃して、意地悪ではあるが、笑って馬鹿にした。ただ、それだけ、というのもおかしいが、モモ・ピンクー嬢がこう証言している。水を被せたのは自分では無い、と。では誰が? こちらは、ポニー・ウゥーマ様が積極的に調べてくださっていた」


「間に合った! はい、そうです!」

声に驚いて、遠くを見る。

人垣をかきわけて誰か来る。まさか。


仮面をつけていない、普段通りのポニー様だ。

「走ってきた。もうこんな話になってるなんて。お呼び出しに力になれればと参上しました、えーと、何とお呼びすれば?」

ポニー様が苦笑しながら私たちの方に来てくださる。


「名乗りを上げた後なのでお気遣いなく。トラン・ネーコだ。駆けつけて下さり心から感謝申し上げる」

「どういたしまして。婚約者のお友達の危機には全力でかけつけます。スミレ・ヴァイオレット嬢からも僕が役に立つことを期待して貰っているので」

苦笑したままポニー様が答えられる。

「それで。丁度、僕の証言の場面のようですが。鞄が捨てられていた時の話ですか?」

「いや、まだその前。バケツの水の方だ」

「あぁ」

ポニー様は眉を下げて頷いた。そして、チュウ・ネズミン様を見てから、大勢の方を向かれた。


「僕はキャラ・パール嬢と同じクラスに在籍しています。彼女が身分のことを理由に苛められているのを見て酷い行いだと感じていました。だから、誰の行いかを使用人に調べさせていた。バケツの水を被せたのは、タケ・グリーン様の使用人です。使用人の名前は、ミチェル・アドラ。僕が誰か皆さんご存知でしょう? 使用人は代々王家に仕えてきた実績がある。彼らは、きちんと調べ上げてくれるんです」

ニコリ、と笑って見せるポニー様。

ポニー様、笑顔で周囲を威圧する術をすでに知っている気がする。さすが王家のご親戚。


周囲が「ミチェル・アドラ」と呟いている。

その人、さっきトラン様が言ったのと同じ名前・・・。

私、使用人の人に恨まれてた? それとも、タケ・グリーン様の指示?


ポニー様は、今度は、チュウ・ネズミン様に話しかけるようにした。

「その後に、キャラ・パール嬢がミカン・オレンジ嬢に暴力を振るわれました。スミレ・ヴァイオレット嬢より前に起こった事です。その時の犯人は勿論ミカン・オレンジ嬢です。一方で、キャラ・パール嬢はその騒ぎで鞄を紛失したので、僕も一緒に探したんです。そして、焼却炉付近で僕が見つけ出した。鞄がゴミ箱に捨てられた結果です。鞄なら学生のものだと分かるのに、誰が捨てたのか。調べさせた結果、ミチェル・アドラという使用人の行いだとと分かりました」


トラン様が呼びかけた。

「タケ・グリーン様。ミチェル・アドラは、あなたの直属の使用人ですね」

「え、えぇ、そうですわ。でも、まさかミチェルがそんな事をする人なんて・・・私も、知らないわ」

と、タケ・グリーン様が動揺したように話す。


私は、ミチェル、という呼び名に思い出した。


「知らないなんて嘘です! ミチェルという人、私をここまで連れてきた使用人の人ですよね。ルティアさんの頬を叩いて、私も叩こうとした人です!」

仲間ですよね!?


「酷い! キャラ・パールさんを叩くのを止めたのは私ですわ」

あ、そうだ。

だけど。

「・・・馬車の中で、意地悪でした。タケ・グリーン様ととても仲が良さそうでした」

「使用人と仲が良いのは当たり前でしょ! 皆騙されないで! 私は嘘をついていないのに!」

タケ・グリーン様が周囲に訴える。


「タケ・グリーン様。ミチェル・アドラという使用人を呼んでいただけますか。はっきりさせましょう」

と、トラン様が言った。


「まぁ、仮面舞踏会に使用人を傍になんて無粋」

「タケ・グリーン嬢。呼ぶんだ。自分が正しいというなら、そのように証明できるはずだ」

チュウ・ネズミン様が感情の消えた声でそう告げた。


「チュウ様まで!」

「呼ばないなら、きみが犯人だ」

「嘘なのに、どうしてですの!」

「ミチェル・アドラを呼べば良いんだ」

「・・・ミチェルッ! 来て!」

怒ったように呼ばれて、端からミチェルと呼ばれる使用人がおずおずと現れた。


トラン様が、現れたミチェルという使用人に唸るように告げた。

「俺の家の使用人を殴ってくれたそうだな。二流だと罵った。そのケンカ、買ってやろう」

「ッ、タケ様!」

トラン様の言葉に、ミチェルさんがタケ・グリーン様に助けを求める。


タケ・グリーン様は首を横に振った。

「ミチェル。私たち、仲が良かったけど、そんな人だったなんて・・・」

「え・・・?」

ミチェルさんが驚いた。


「キャラ・パールさんへ嫌がらせをしてたの? 私、知らなかった。信じてたのに」


ミチェルさんが固まっている。


「ごめんなさい。だけどあなたは大切な使用人よ。悪いようにはしないけど、自分がやったって罪を認めて、皆様に謝ってもらわないと」

タケ・グリーン様の言葉に動揺した様子の、ミチェルさんがこちらを見る。

あれ、助けを求めているように見えるのは気のせい?


「認めるのか? キャラ・パール嬢をトイレに閉じ込めて、毒ムカデを浴びせたことを」

「違います!」

ミチェルさんが跳ねるように顔を上げた。

それから、ハッとタケ・グリーン様を振り返り、凝視された。


「トイレに忍び込み、被害をあたえる行動をした。その後、モモ・ピンクー嬢の前に出てきて、扉には粉袋まで仕込んだ。素直に認めても認めなくても、重罪だ。キャラ・パール嬢は死にかけた。謝罪で許されると思うなよ。学院側もこの件は重要視している。生徒が一人殺されかけた。で、死罪になるのはきみなのか?」

「え、や、」

ミチェルさんが震えている。頻繁にタケ・グリーン様の様子を見ている。

タケ・グリーン様、仮面から出ている口が、なぜだか笑っているように見える。


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