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127.仮面舞踏会への誘い

今日が仮面舞踏会の日。

だけど、午前中は普通に授業がある。


スミレ様が来てくださって、今日は出席するのかと聞いてきてくださった。

「はい」

「まぁ。勇気がありますわ」

とスミレ様が驚かれる。


「スミレ様は出席されないんですか?」

「えぇ・・・人の多いところが少し・・・」

憂い顔のスミレ様。

「でも、キャラさんの衣装は見てみたかったですわ。また、どんな衣装だったか教えてください。・・・よろしければ、明日の放課後、一緒にお茶でもいかがでしょうか? その時に仮面舞踏会のお話も聞きたいですわ」

「はい、あの、トラン・ネーコ様も一緒でも大丈夫ですか?」

「・・・えぇ。でしたら、私もポニー様もお誘いいたします」


ニコリと微笑むスミレ様。

最近、私に対して柔らかく接してきて下さって嬉しい。


***


さて、授業が終わって昼休み。

皆揃ってあわただしくなる。午後の授業は今日は無くて、ここから皆準備に入るのだ。

なお、仮面舞踏会は夜の時間に行われる。食事つき。

つまり、それまでは皆の準備の時間。


その中でゆっくり動いておられるのが、スミレ様とポニー様。お二人は出席されないからだ。残念。

一方、急いでいる人は全て、多分仮面舞踏会に出る人なんだろう。


寮に戻って、ルティアさんとサティマさんに着飾らせてもらう。

ちなみに一人では絶対に無理。

「この裾の、装飾が多くてひっかかりやすいので、お気をつけて。移動の時は少し裾を持っても良いかもしれません」

「はい」


靴も専用の靴。

ものすごく柔らかい素材でできていて履き心地が良い。

ヒールはかなり低め。というのは、『ネコだから足音を立てずに』。というのは言い訳で、真実は、私が高いヒールになれていないから。


仮面を顔に当ててみた状態で、ルティアさんが髪型をイメージして、編み込みしてくださる。

リボンでつくった「ネコの耳」もつける。

本格的で、ドキドキする。

ネコだけど、つけているものすべて豪華だ。

ちなみに、ネックレスなどの宝飾品はつけない。

宝飾品で誰なのか身元がばれてしまうので、仮面舞踏会ではつけない人が多いそうだ。


だけど、ちょとしたポーチを肩から掛ける。

傍にいる使用人で身元が分かると嫌なので、今日は皆さん少し使用人を遠くに置かれる。

このため、ちょっとした身の回りのものはご自分で持っておかれるそうだ。

私は、ハンカチと、呪いのお守りの手鏡と。普通に鏡としても使えるのが嬉しい。

少し遠くとはいえ、同じ部屋にルティアさんたちはおられるから、これぐらいで良いとのこと。


仮装アイテムとして、レース製の扇も渡された。

これ、私、使いこなせるかな。使いこなせてない感じで、キャラ・パールだとバレないかな。


「仮面では口元は出てしまいますが、その口元を隠したい時だけお使いください。不要な時はポーチに入れておけば宜しいですわ」

「はい」

試しに扇を開いて口元に当ててみる。鏡でチェック。

うわ、悪そうなネコだ。笑ってしまう。


「楽しいですね」

とサティマさん。


「はい。楽しいです」

と私も答える。


***


用意は整って、開場になる時間まで寮で休んでいた時だ。

管理人のおばさんが、手紙を届けに来てくれた。


「急ぎでっていうんだ。答えを下で待ってもらってるよ」

「どこからでしょうか?」

とルティアさんが受け取りつつ聞いてくれる。


「グリーン家だそうだ」

「グリーン家?」

ルティアさんが不思議そうに繰り返し、少し考えたように動きを止めてから、手紙を私に見せる。


「念のため、私が先に開けさせていただいて宜しいでしょうか?」

「え、はい」


サティマさんがすかさず渡したペーパーナイフで開封されて、中の手紙に目を走らせるルティアさん。

一読して封筒の中を確認するように見てから、私の方に渡して来られた。


目を通す。

差し出し人は、タケ・グリーン様。存じ上げない。チュウ・ネズミン様の婚約者の方らしい。


そして、チュウ・ネズミン様から、ぜひキャラ・パールを誘うようにと頼まれている、会場までご案内いたしましょう、そして、礼儀が心配だと言っておられた様子なので、簡単にはなりますが必須と思われる礼儀を僭越ながらお伝えさせていただきます。

という内容だった。


「今までご交流はありませんわよね?」

「はい。お名前も、あの、でも、グリーン家って・・・」


トラン様のテニスの試合の時、私を花壇から引っ張って落としたかもしれない使用人の家がグリーン家。


「ご本人もすでに馬車で待っておられる様子だよ」


えぇっ、と驚いた声を上げるのはサティマさん。

私も驚いた。

貴族令嬢が、馬車で来られてて私が出てくるのを待っておられるって・・・。


物凄く行きたくない。トラン様が迎えに来てくださるはず。

だけど、もう本人が来てるって、どう断れば良いんだろう。


そうだ、トラン様に。通信アイテムを握る。

あれ、出られない。準備でお忙しい?

焦りながら待っていたら、やっと声が聞こえた。


『どうした』

「すみません、急いでご相談があります」


『なんだ』

「タケ・グリーン様からお手紙がきて、一緒に仮面舞踏会に行きましょうって。チュウ・ネズミン様から頼まれたそうです。早めに会場に入って、礼儀を教えてあげるって」


『断れ。俺が迎えに行くから待っていてくれ』

「ご本人も下でお待ちかもしれないんです。どうお断りしたら良いでしょう」


『トラン・ネーコと約束している。申し訳ないが、と断ってくれ』

「粘られそうですわ。チュウ・ネズミン様からの依頼だと」

ルティアさんが指摘する。

通信アイテムは他の人は届かないから、トラン様に指摘内容をお伝えする。


『トラン・ネーコと約束をしていると言い張ってくれ。事実だからな。良いか、絶対にきみの姿を使用人に見せるな。ルティアが応対しろ』


傍で話を聞いていたルティアさんが頷き、「行ってまいります」と部屋を出て行かれた。


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