表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/143

123.急なお招き

翌日。いつも通りに学院に行く準備をして、トラン様が馬車で迎えに来てくださると言うので待っていたら、急に事態が変わった。


「急いでドレスに着替えましょう! お化粧も、髪も!」

ルティアさんも、新しく入ったサティマさんも顔色を変えている。

「サティマっ、ドレスこちらで良いと思う? 古典的よりこっちよね!?」

「はいっ! 古典的は奥様はお嫌いですもの!」


急に、トラン様のお母様から、私に屋敷に来るようにとお招きされてしまったのだ。


ど、ど、ど、どうしよう・・・!!


顔面蒼白になっている。だけど、行くしかない。これに行かなきゃ未来が無い。


***


大貴族というのは、本拠地の他にも、いろんなところに屋敷を持っているらしい。

そして、タイミングを読んでいたのか、普段は本拠地にご夫婦そろっておられるらしいのに、つい先日から学院に近いところにある屋敷に泊っておられるネーコ家のご夫妻、つまりトラン様のご両親。


招かれたのはランチ。

だけど移動時間もあるし準備時間も必要だから、朝からバタバタして急いで間に合わせないといけない。


お招きが発覚して二時間半後に改めて馬車で迎えに来てくださったトラン様、いつもと違ってピシッとした服装だった。

私は私で、以前ドレスの店で取り急ぎ購入いただいた『緑と紫と青をポイントに取り入れてある、ちょっと大人目のシルバーのドレス』を着込んでいる。


「似合ってる」

と緊張した顔ながら褒めてきて下さるトラン様、私に手を差し出して来られる。

「ありがとうございます、トラン様も普段と違う凛々しさです」

と答えながら手を差し出す私の顔も強張っている。


手を取ってすぐ馬車にと歩き出されるトラン様。勿論ついていく。


馬車に乗り込んですぐ、尋ねた。

「どう振る舞えば良いでしょうか」

「大丈夫だ、駄目だったら駆け落ちする」

とトラン様。


駆け落ちって・・・!


「だからその意味では安心して欲しい。苦労かけるかもしれないし外国に逃げなきゃならないかもしれないが、全力で頑張るから」

「すでに全力で駆け落ち状態じゃないですか。そうならないように頑張りたいです、が」

全然安心できない。

私に全てかかってきている気がする。だけど具体的にどうしたら良いのか全く分からない。


ルティアさんに聞いても新しく入ったサティマさんに聞いても、トラン様に聞いても、具体的に何も出ない。

なぜなら、ネーコ家は気まぐれで、一度心を開いた人にはものすごく甘えるらしいんだけど、そこに至るまでは基本適当で無関心で、すぐに愛想をつかす、らしい。


実の息子トラン様ですら、両親はよく分からない人らしい。

そして、トラン様だけが『分かりやすい』と言われてきたらしい。

それはひょっとして、トラン様が転生者だからかもしれない。


「屋敷では引き離される可能性がある。あ、思い出した! 母は丸いものが好きだ!」

「丸いもの!?」

「ボールとか、悪い、何の対策にもならない」

「とにかく、一生懸命頑張ります」

「・・・」


トラン様も私も、真剣に頷き合った。

馬車の中、二人で乗っているので、隣に座って、手を握りしめ合っている。


そんな緊張した状態のまま、屋敷についた。


***


お洒落なお屋敷。蔦で覆われている。魔女の屋敷みたい、と思ったのは、色んなところにネコのモチーフがつけられているから。


使用人の人に案内される。途中でトラン様とは別れさせられた。なんでも、トラン様はお父様が待っているそうだ。つまり私にはお母様。


おくつろぎくださいませ、と言われながら全くくつろげないでピシッとした姿勢を保ってお部屋で待つ。


どれだけ待ったのか、緊張が切れかけた来たところに、ドアが開く。

ハッと見ると、入ってきたのは使用人の人だけだ。

また案内する、と言われてついていく。


螺旋階段をクルクル降りる。

地下? と思ったけど、そこが1階なんだろうか、普通に明るい。


まるで挿絵や風景写真として憧れそうな空間が広がっていた。

前と右が全てガラス。向こう側、丸く作られた角にも螺旋階段があって、上に行ける。

ガラスの向こうには緑が見える。

螺旋階段の近くにソファとテーブルがある。一人、金茶のドレスを着ている女性がソファに座ってお茶を飲んでいる。


「奥様。キャラ・パール様をお連れいたしました」

使用人の人が女性に向かって声をかけた。


「そう。こちらへ」

女性が私を見た。綺麗な大きな目をしている、と思った。美人。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ