119.学院長と、ポニー様とスミレ様に
翌日。
いつものようにトラン様が迎えに来てくださった。
そして、今日は一緒に学院長の部屋に向かった。
早朝なのに学院長は部屋に居られた。
二人で入室し、トラン様から、結婚することに決めた、とお伝えする。
「そうか」
と学院長は頷かれただけだった。
驚いてもおられない。
「ということは婚約者か」
「はい。ただ、家への報告はまだしておりません。まず学院長にと思いました」
なるほど、という感じで、学院長は頷いておられた。
それから私に目を向けて来られた。
そしてトラン様に視線を戻された。
「がんばりなさい」
***
退出して、次に私の授業のある教室に向かう。
その途中でこんな話を。
「ポニーたちとランチができれば良いんだが。聞いてみてもらえないか」
「はい。ただ、ランチの約束がビッシリみたいでしたよ」
「分かっている。ランチでなくても少し話ができれば良いんだが」
「はい・・・」
私たちの事を伝えるんですよね。秘密裏に。
頷くと、トラン様も頷かれた。
***
結局お昼休みまで、人気者のポニー様とスミレ様とは会話出来ず。
お昼休みに入り、すぐ色んな人に囲まれておられるところを、私から近づく。ポニー様もスミレ様も私に気づいてくださった。
「どうされましたか?」
と聞いてくださったのはスミレ様。
「はい。あの、その、最近あまりお話できていないので、お昼、少しお話の時間をいただけたら、嬉しいのですが・・・」
ちょっと緊張する。周りにおられる人も注目してくるし。
「構いませんわ。私たちも、お話しできればと思いますもの・・・ポニー様、今日のランチの後、キャラさんと会う約束をして宜しいでしょうか?」
「うん、是非。キャラ・パール嬢だけ?」
ポニー様の問いに、首を横に振る。
「いいえ、あの」
「そっか。分かった」
ニコリと微笑むポニー様。いつもながら気さくで親切。トラン様も一緒と分かってくださったはず。安心できる。
「できれば、ランチもご一緒したいですわ・・・キャラさんは聖女ですから色々、お伺いしてみたいこともございますもの・・・」
とスミレ様。
「それはマルトーン様が可哀想だよ」
とポニー様が苦笑された。
「スミレ嬢とのランチをとても楽しみにされていたんだから」
「・・・でも、苦手なのです・・・」
スミレ様の告白に、周囲が同情的な視線をスミレ様に向けた。
ポニー様が困ったようにスミレ様を見ている。
「そんな事を言うのは可哀想だよ」
「でも私の婚約者はポニー様ですわ。なのに、あれほど好意を示していただいてもどうしていいのか・・・」
目を伏せるスミレ様。内容、確かにそれって困るかも・・・。
「断ろう」
ポニー様が英断した。
「ごめん、ホムラ、向こうの使用人に断りを伝えてきて。ポニーがスミレ嬢の可愛さを独り占めしたいと言い出して、申し訳ありません、という感じで」
「難しい事をおっしゃいますなぁ」
ホムラさんがシュタッと現れ、呆れたように文句を言って姿を消した。
そしてポニー様がニコリと私に向けて笑った。
「キャラ・パール嬢、よかったら一緒にランチでもどうかな。前に一度キャンセルになったし、スミレ嬢が話したいって言っているから。前は神殿に呼び出されたから仕方なくキャンセルになったよね。その分のランチの約束を果たしたいな」
「あ、光栄です!」
驚きつつ嬉しくてつい勢い込んで答えてしまう。
説明的なのは、多分周りの人に向けてだろう。
スミレ様もポニー様の言葉に嬉しそうに笑まれている。
あれ、スミレ様・・・さっきのって、ひょっとして演技だった?
先約を断ってまで、私とトラン様とランチしてくださるようだ。ありがとうございます。そして、断られた人、すみません・・・。
***
ルティアさんがトラン様に連絡してくださって、急ぎ部屋も手配してくださった。
とはいえ、今日は隣続きの部屋は取れなかったみたい。
「急に申し訳ない。話を是非したいが、ランチの手配ができていない」
とトラン様。
「食堂から持って来させる。メニューはこれだ。どれがいい」
無事にそれぞれ決まり、食事が運ばれてくるのを待つ間も惜しんで、トラン様が話始められた。
「色々、聞きたいこともあるのだが、まず、一番伝えておきたい事がある。ただ、どこにもまだ出さないで欲しい。内密の話だ」
「はい」
ポニー様が少し緊張された気がする。
「・・・キャラ・パール嬢」
「はい」
トラン様と私で、視線を交し合う。そして、ポニー様とスミレ様を見つめる。
「俺は、キャラ・パール嬢を本妻に迎える。キャラ・パール嬢も同意してくれた」
聞いていたポニー様とスミレ様が、目を丸くして驚いておられる。ただ、無言だ。
話を邪魔しないようにしておられるのかな。




