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118/143

118.屋上の自由時間と

「ドレスで登らせて申し訳なかった。噂が出るほど、貴族令息や令嬢が使うはずなので、大丈夫だろうと思ったのだが、想像以上だった」

と離してくださったトラン様が苦笑される。


「仲良くないと、ドレスでここまで登れないと思います」

「なるほど、それが真理かもしれないな。せっかくだから少し景色を楽しもう」

「はい」


立ち上がり、手を繋いで景色を見た。ハンカチはきちんと回収された。

「これから少し忙しくなる。我が家であるネーコ家に挨拶に行く。その前に、学院長に話をしておこう」

「学院長ですか?」


「あぁ。きみを支援している貴族との連絡役だ。それにこの学院の責任者だ。立てておくべきだ」

「はい」


「その後、他より先にポニーとスミレ嬢にも密かに打ち明けておきたい。できればメーメ様とミルキィ・ホワイト様も。レオ・・・は微妙だな。会えた時に打ち明けよう」

「レオ様ってそんな扱いなのですか?」


「レオは、秘密裏というのが苦手なんだ」

「なるほど・・・?」

「ネーコ家が認めたら、公式発表だ。1か月後とあの方に言ったので、1か月後に公表できるよう動く。問題なくできれば、きみを後押ししてくださるはずだ」

「はい」

「協力者を集めよう」

「はい」


***


景色を眺め終えて、トラン様と使用人の方たちのところに戻る。

パチパチ、と手を叩き始めたのはジェイさんで、ルティアさん始め、他の方々も拍手された。

「おめでとうございます」

「聞こえていたか?」


「いいえ。ご様子から分かります」

「そうか。ありがとう。皆には感謝している」

トラン様が嬉しそうに笑う。


「せっかくここまで登ったんだ、皆もこの場所を楽しんで来い。少しだけだが自由を許可する」

「宜しいのですか?」

「あぁ。その間、キャラ・パール嬢と話して待っている。好きにしろ」

「はい」


皆さんが屋上に散らばって、景色を楽しまれる。


あれ。ルティアさんが例のベンチに座ろうと手招きされている。

えーと。あれは、確かセドさん。

寮に寝泊まりしていた時、ルティアさんはいつもできる限り部屋で話していってくださった。

その後、外で見周りをしつつ待っていてくれる他の使用人の男性と馬車でトラン様のところに戻っている、という話だった。

その、いつも待っている人だ。


おぉ。皆が気づいて注目している。ルティアさんの顔が少し赤い。だけど隣に座られた。

ニッコリ笑い合っておられる。

告白とかはないみたい。仲良さそう? すでに恋人同士なのかな?


あ、何か約束?

ルティアさんが赤くなった。


「あのベンチは幸せだな」

トラン様も見ておられて笑い、私に肩をすくめられた。


そうやってしばらく皆さんを眺めていた。

沢山の人に支えてもらって、ここに生きてるなぁ、とふと強く思った。

隣のトラン様を見上げる。

すぐに気づいて首を傾げて見せてくださった。

「たくさんの人に支えていただいているなって実感していました」

「・・・そうだな」

とトラン様も穏やかに頷いてくださった。


「俺、きみは良いネーコ家の夫人になると思う」

「え」

夫人って・・・!


「なぁ、結婚式はいつが良い? まだ学生だ。大体は卒業後に結婚が多いから、学生の間は婚約関係が多いが・・・俺が15できみが14歳。3年後ぐらいが良いだろうか」

「え、はい!」


「もし、破談させられそうになったら、駆け落ちしよう」

「え」

真剣な表情で告白された。驚く。


「俺は平民の暮らしが分からない。きみに苦労をかけてしまう。だからできる限り、貴族でいたい」

「はい」


「それにな。俺、こうみえて優秀で、期待をされている。使用人たちからもな」

「・・・はい」


「だから、雇用主とはいえ、これほど尽くしてもらっている身としては、期待を背負いたいんだ」

「はい」

嬉しくなって笑んだ。

「その方がトラン様らしくて素敵で良いです」


急にトラン様は心配そうに私を見た。

「身を引くとか言うなよ。そんなこと考える前に相談してくれ」

「はい。有難うございます。幸せになりましょうね」


「あぁ」

トラン様が目を細めて嬉しそうになった。


***


今日も泊まる学院の一室で、トラン様と使用人の皆様と、どの部屋を誰が使う方が良いか考えた。


使うのは、私、ルティアさん、もう一人女性、そして護衛のグレンさん、セドさん、もう一人男性。


ちなみに、もう一人の女性というのは、ルティアさんが、新しく決めてくださった人。

私とトラン様が神殿の地下で色々あった時、連絡はしつつも、休める人はお休みを取ったりしていたそうだ。だけどルティアさんはその期間に人を選んでいたのだった。働き者・・・。

なお、ルティアさん的には今のところ、その1人しかOKできないらしい。

逆を言えば、その1人は完全にルティアさんが大丈夫だと信頼したという事だ。


1階のあの部屋は、嫌がらせから守る呪いも使っていてその意味では良いけれど、私の部屋として多くに認識されているから移った方が良い。

どうせなら食堂の部屋として使おう、という意見に。


護衛のグレンさんがいるから、グレンさんの案、つまり1階は共用部分、2階は男性、3階が女性。という形で使うことになった。


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