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106.ケンカの最中

トラン様に連れられて急いでケンカの現場に到着した。


終わっているかもと思っていたのだけど、まだケンカは続いていた。

にらみ合っておられる。


馬車で聞いていた通り、サファイア・ブルー様がおられる。

ミルキィ・ホワイト様は、見たことのない黒づくめのご令嬢の傍におられる。


あれが、クロロ・ブラック様・・・?

今更だけど、家名に「ホワイト」とか「ブルー」とか入っているお家のご令嬢は、家名の色に近いドレスを好んで着ておられる。

そのルールが適用されるなら、多分、あの方がクロロ・ブラック様・・・。


そして。あれ、と思った。

明らかに、特色のあるご令嬢だ。

失礼ながら、美人とか可愛いという感じでは無い。申し訳ないけど、怪しくて暗い印象というか・・・。独特の雰囲気。

とにかく、明らかに他の人たちと違う。

私にとって悪役令嬢・・・? まさか。


なお、アウル・フクロウ様もサファイア・ブルー様の傍におられる。

探してみれば、メーメ・ヤギィ様も少し離れつつ、ミルキィ様側におられる。

ということは、クロロ・ブラック様の婚約者の方も近くに居られる?


ちなみに、現在、具体的にどういう話の最中なんだろう。


「キャラ・パールですわよ」

「聖女が来たぞ」

「平民聖女」


周囲が、私の到着に気がついてコソコソ話し出した。なんか嫌な言われ方だ。

トラン様も耳にされたらしく、ムッとされた様子。私の腕を引いてご自分に引き寄せてくださった。


ケンカ中の皆様も私たちに気づいた。

ミルキィ様は、私を見て驚き、それから手を伸ばして来られた。『こっちに来て』とおっしゃっているようだ。

トラン様がミルキィ様の方に行かれるのでついていく。


「聖女について、話をされていると耳にして来たのですが」

とトラン様は、ミルキィ様に、それからクロロ・ブラック様を見てから、体の向きを変えてサファイア・ブルー様を見た。


サファイア・ブルー様は呆れたようだ。

「キャラ・パールさんまで来られましたのね・・・。私、クロロ・ブラック様に言いがかりをつけられて、人としてお伝えしなくてはと思って来ましたのに。どうしてこうなってしまうのかしら・・・」

サファイア・ブルー様の方が冷静かもしれない。


「途中で割り込んでしまいますが・・・。あなたはキャラ・パール嬢が聖女に認められたことを否定されるという事でしょうか。ご自分が相応しいと言われたというのは真実ですか?」

とトラン様。


サファイア・ブルー様は笑みながら、困ったように首を傾げてトラン様を見た。

「必死ですわね、トラン・ネーコ様。恋に目がくらんでおられますのね」

「失礼なことをいわないでいただきたい」


「状況への理解が甘いと思いますわ。平民が聖女にとは、冷静に考えればおかしな話ではありませんか? どうしてだかキャラ・パールさんに対しての過剰評価があるように思えるのです。自分から言いたくありませんでしたが、広く知られていない事ですから言うしかありません。神殿の地下で、魔物に対応したのは全て私とアウル・フクロウ様です。なのに私を酷く言われる方がおられて・・・」

悲しそうに、チラリ、とミルキィ様を見るサファイア・ブルー様。


「危険に立ち向かい、皆様をお助けしましたのに、どうしてこのように言われなくてはならないのでしょう。先程から何度も皆様に説明していますが、私は適任者と神殿に必要とされたのです。冷静に実力を判断するべきですわ。聖女についても」


「恥を知りなさい! 大切な精霊が見えていないくせに! あなたは好き勝手に神殿を壊したのが分かってない!」

ミルキィ様は怒りすぎたのか、少し振らついた。

「ミルキィ・ホワイト様・・・」

初めて聞く声は、とても可愛らしかった。クロロ・ブラック様だ。心配されたみたい。


少し離れていたメーメ様も、ミルキィ様の方に近づいていかれる。


トラン様が尋ねた。

「申し訳ないが、事実として、神殿はあなた方に怒っています。俺も現場にいましたが、限られた人にしか分からない精霊が確かにいて、あなた方はその存在に危害を与えたのです。神殿から連絡は・・・? アウル・フクロウ様、お答えいただけませんか」


アウル・フクロウ様が、やれやれ、と言ったように、ため息をつかれた。

それから笑顔に。


「神殿からの苦言はある。だが、俺にはサファイアの言い分が正しく感じられる。サファイアの使い魔になったヴァルティリアと俺も話をしたが、サファイアが救い出さなければ永久的に封印されたままだった。話合えば分かるものに、酷い事をすると心が痛む」


アウル・フクロウ様はトラン様を真っ直ぐに見ておられる。威圧すら感じる。


「ヴァルティリアは乱暴なところがあるのかもしれないが、サファイアを慕って自ら使い魔になったほどの素直さもあった。トランが聖女にこだわる理由も分かる。ただ、サファイアの方が活躍している」


アウル・フクロウ様の言葉に、サファイア・ブルー様が笑みを浮かべられた。

笑み合うアウル様とサファイア様。仲がものすごく良いのだろう。


貴族の方々の会話に、私は口を出すべきじゃない。

だけど、多分、聖女と言う立場があるかないかで、私の将来は変わるんだろう。

そう思うと、現在、聖女に認定された私も、意見を述べるべきだ。


震える。


「あの、平民の、私には聖女が相応しくないとの事ですが、あの、出来る事を頑張りたいと思っています」


私の発言に、周囲が驚いて、私を見た。

当然だ。貴族ばかりの中で、平民が失礼過ぎる。だけど。


顔が赤らむ。発言したことを後悔しそうになる。

だけど、取り消せない。

今発言しなかったら、聖女という称号を貰った意味が消えてしまいそう。


身分をなんとかできると、トラン様があんなに喜んでくださった。この称号は守るべきだ。


「この場で発言するなんて、勇気がありますのね」

と、サファイア・ブルー様が言った。

とても見下した顔だった。褒めたような言葉を使っているけど、嫌味と軽蔑に見えた。

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