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102.可能性

神殿では、ミルキィ様と私はものすごく歓迎された。


神殿のご好意で、お風呂とかのんびりさせてもらって、美味しいご飯も食べさせてもらう。

私たちも含めて、皆がニコニコしている。


「お二人には本当に感謝しております。そこで、聖女の称号を、ミルキィ・ホワイト様に授与させていただきたいと考えております」

と神殿の人。偉い人らしい。


ミルキィ様は嬉しそうに頬を染めた。

そして、なぜか私の方を見た。

「私、地下で、キャラ・パールさんに本当に助けてもらいましたの。私、恩を返そうと考えておりますのよ。ですから、聖女の称号は、キャラ・パールさんにお譲りしたいと思いますわ」


神殿の人が驚いた。


***


聖女と言うのは、貴族令嬢しかつけない役職らしい。

なのに、ミルキィ様は意志を曲げず、ついに神殿の人もミルキィ様の意志を尊重する形で、私を聖女にすることになった。


ミルキィ様、どうやらこれを、トイレの御礼の一つ、つまり、5つ叶えるお願いのうちの一つとして私に譲ると決めていたようだ。

そんなに気にして貰わなくても、絶対にメーメ様にトイレのことは言わないのに・・・。


あと、どうやら聖女って、3年間の名誉職らしいのだけど、一方で、国内の各地にある代表的な神殿を巡り、花を捧げる、という仕事が一応あるらしい。

で、ミルキィ様は、この役目が面倒で嫌だなー、と、内心思っておられた様子。


ただ、一番の要因は、私が地下で、恋愛の悩みをミルキィ様に聞いて貰ったことみたい。

ミルキィ様は、相談されたら何とかしたくなるタイプなのかも。


とにかく、私が聖女になることに!

これはものすごい事らしい。


聖女というのは、貴族のご令嬢の憧れの称号とのこと。普通はなれない。

何か大きな催事をするときは、キラキラした神々しい衣装をきて主役になる。


そんな称号が、ミルキィ様から私に譲られた事、神殿がそれを認めたという事は。

平民だけど、貴族の世界においても色々一目置かれた、例外として特別だと認められるという事、らしい。


トラン様が、ミルキィ様にものすごく感謝の言葉を述べて、私に本当に嬉しそうに笑いかけてこられた。

「貴族令嬢にしか与えられないんだ。なのにきみが聖女になるなんて」


メーメ様も微笑まし気に見守っていてくださって。


私は、ものすごい『御礼』をミルキィ様からしてもらったのだ。


***


実は。今の『聖女』の人は、ご病気がちで、もう聖女を辞めたい、とおっしゃっていたそうだ。

そんな隠された事情を知らされつつ、そして私が平民だ、という事もあって、ものすごく簡単に、聖女のブレスレットを授与された。


呼び出されてトラン様やメーメ様、ミルキィ様と揃って行けば、神官長の仕事部屋で、

「よろしく頼むよ」

と、ブレスレットを付けてくださった。

こんなに簡単で良いんだろうか。

ちなみにブレスレットは、キラキラ光ってるけど、フワフワもしていて少し浮いている。・・・まさかこれ、素材はケセラン?


「聖女は、なぁに、難しいことはない。各地の神殿に挨拶に行って花を捧げるぐらいじゃ。楽しみなさい」

「はい。有難うございます。頑張ります」


神官長は、なぜか私の傍についていてくださるトラン様に視線を送り、どこか上から目線の笑みを浮かべた。

「3年間は応援してやるからの」

「・・・光栄です」

とトラン様が企むような笑顔で答えられた。


***


さて。4人とも学院に戻るので、大きな転送陣で一気に学院の、古い建物に転送してもらう。

建物を出ると、夕暮れの空が見えた。


私とトラン様は、学院の私の泊めてもらっている部屋に行くことに。

メーメ様とミルキィ様とはお別れだ。


向かいながら、トラン様が話しかけてくださる。

「やはり近くに1軒、建物を借りよう。そこをきみの寮として申請する。ルティアたちもそこに寝泊まりすれば良い。・・・俺もメーメ様と色々話ができたんだが、きみが良いなら、ミルキィ・ホワイト様の専用寮に移るのはどうだ、と言っていただいたんだが・・・どちらが良い?」

「・・・」


うーん。

希望としては専用の方が、安心できる。

ミルキィ様と仲良くはなったけど、やっぱり読めない人だし、ミルキィ様の使用人の人たちが良い人か分からないし・・・。


「金の事なら全く心配ないからな」

「では、あの、申し訳ないのですが、専用に借りていただけた方が、安心感が・・・」


「そうだな。俺もだ」

隣で頷くトラン様。


「ただ、ルティアさんたちにものすごく負担になったりしませんか?」

「どうだろうな。本人たちに確認しよう。俺ときみが神殿から動けなかった間に使用人を少し休ませたが、ルティアは人員増加に相応しい者を選んでおくと言っていた。状況確認しないとな」


「色々と、すみません。ありがとうございます」

何か私ができることがあれば良いのに。

全てをトラン様にしていただいている。


「俺がしたくてすることだ。きみの迷惑になっていないかだけが心配だ」

「迷惑だなんてないです、感謝しかないです」

「うん」

「はい」


「・・・今日はゆっくり休もう。また明日から、色々頑張ろうな」

「はい!」


「ただ、きみは聖女になったから、状況は変わるはずだが」

「・・・はい」


貴族の人たちは、私に一目置くことになるそうだ。

ミルキィ様が私についた、と思われる事の影響が大きいみたい。


「俺もいるが、ミルキィ・ホワイト様に神殿、メーメ・ヤギィ様。それから、レオ、ポニーとスミレ・ヴァイオレット嬢。きみは大貴族と友好的な交流がある。中途半端な貴族はきみに一目置かざるを得ない。ただ、その分危険も増す。常に使用人を傍において欲しい。きみは重要人物だ。・・・強制的に一人にされるような状況も避けなくてはな・・・」


強制的に一人・・・。


あ!

「トラン様、お伝えしておこうと思ったことが」

「なんだ?」

私が急に焦ったように訴えるので、トラン様は驚いた。


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