表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/143

101.呪いについて聞く

嬉しそうに頬を染めるミルキィ様。

とても美人ですが、性格が全く安心できない・・・。

半笑いでミルキィ様の笑顔を受け止める。


私のそんな怯えに気付いたようで、ミルキィ様は拗ねた。多分、心を私に開いてくださっているから、言葉も多くなっているし、表情もコロコロ変わる。


「私を悪者にしないで。悩んでおられて、私に打ち明けてくださったの。ですから、私でできることって、しっかり呪いを作ってプレゼントして差し上げたのよ」

「どなたに、どんな呪いですか?」

純粋に分からないので尋ねよう。


「そうね。それは、トイレの代わりのお願いとしてなら、答えても構いませんわ」


うーん。

まぁ、叶えてくださるというお願い、5つもあるから、1つ使っても良いかな。

5つもあったら余るかもしれないからね。


「じゃあ、お願いの1つで」

「分かったわ。あのね、クロロ・ブラック様なの」


「え? クロロ・ブラック様?」

聞いたことが無い。


「人前に出てこられないの。もう18なので、好きな授業だけ出て来られるみたい。あのね、クロロ・ブラック様は、あまり容姿がお美しくないの・・・」

少し言い淀んで、ミルキィ様が教えてくださる。困ったように。


「2つも年上の方なのに、打ち明けてくださって、私も心が痛くなったの。内気で、悩み事も人にあまり漏らさないタイプの方なのよ。私を信頼してくださったのだから、お力になりたくて」

「はい」

真剣なミルキィ様のお顔に、私も真剣に、聞いている、と示すために頷く。


「一生懸命考えて、ご本人以外には本当は秘密だったのだけど、あのね。『自分を醜いと思っていれば思っているほど、美しくなる』呪いを作って差し上げたの」

「なる、ほど」


「とても喜んでくださって・・・だけど、それからお会いしていないの。呪いの効果が出なかったのかしら・・・だから失望して私には会ってくださらないのかもしれない・・・」

「そうですか・・・」


ミルキィ様、本当に心を痛めておられる感じだ。


***


呪いについての話題が続いている。


えーと。呪いと言えば。

「ミルキィ様は、スミレ・ヴァイオレット様が呪いを使われた事件で、どんな呪いかはご存知ですか?」


「えぇ」

「そうでしたか」

ミミズみたいな赤い湿疹ができる呪いだったらしい。ただ、秘密にされている事があるみたい。


「メーメ様に聞かれたの。『自分を美しいと思っていれば思っているほど醜くする呪い』なのですって。それを私が作ったか、って聞かれたのだけど、私がそんな呪いを作るわけないわ。美しさを呪うなんておかしいもの」

「・・・はい?」


え、そんな呪いだったの?


あれ?


似てない?

ミルキィ様が作られたものと、なんか、タイプというか。


モヤモヤ・・・。


「スミレ・ヴァイオレット様も可愛い方でしょう? 呪いが解けて良かったと思うのよ。私とスミレ・ヴァイオレット様って、美しさが似ていると思うの。だから回復されて良かったと思うのよ」

とミルキィ様。


「スミレ・ヴァイオレット様とは、普段も交流はされているんですか?」

「いいえ。そこまでは」


あれ、意外だ。


「あの、気になる事があるので、トラン様には、今のお話をお伝えしても大丈夫ですか?」

「まぁ。あなたたち、とても仲が良いのね」


お互いに作業しつつ、話し続ける。


「はい・・・仲良くしていただいています」

「そう。ふふ。ねぇ、メーメ様は素敵でしょう?」


「え? はい」

どうして急にメーメ様?


「あなたは、私のメーメ様を取らないのね? 約束よ?」


あ、そういう話か。

「はい。私、あの、トラン・ネーコ様を、お慕い、しています。その・・・だから、あの、ご安心、ください・・・?」

「そう。良かったわ」

話すだけで恥ずかしい。赤くなっている。

ミルキィ様はとても嬉しそうになった。


「じゃあ特別に、トラン・ネーコ様に私の話を伝えても良いわ。ご褒美。でも、次はキャラ・パールさんが、私に悩みを教える番」

「え? 私の番? 悩みですか?」


「えぇ」

まるで聖なる人のように、ミルキィ様が笑った。


***


どうしてこうなったんだろう。

私は、ミルキィ様に、トラン様への恋心を打ち明ける羽目になっている。

他の悩みでは許してもらえなかったからだ。


「身分が、叶わなくて、どうしたら良いかと思うんです・・・」

少し打ち明け出したら、ポロポロと本当の悩みを漏らしてしまう。悲しくなってくる。


ミルキィ様はしんみりと聞いてくださった。


***


数日間、恋愛相談をしつつ、修復をした。


そしてついに。


パァッと壁が光った。

「直りました!」

「えぇ」


修復できた!

やった!


ミルキィ様と両手を取り合って喜ぶ。


パァ、と光った。


「キャラ・パール嬢!」

「ミルキィ!」


見れば、傍にトラン様とメーメ様がいた!


「メーメ様!」

パァッとミルキィ様が喜び、私との手を外して、メーメ様に・・・。

「あ。私に近づかないでくださいませ・・・」


メーメ様が真顔になった。


トラン様も真顔になって、私を見て来られた。

「その、普段のような快適な環境で過ごせなかったので、汗とかで」

そう説明すると、苦笑のような安心した笑顔を返してくださった。


***


メーメ様の推察によると、ここと下を繋ぐ転送陣があるから、本来はたくさんある扉の向こうにあった、仮眠室やシャワールームやトイレや食堂なんかを使いつつ過ごせるはずだったようだ。


だけど今回は転送陣がきちんと動いていない?

迷惑!


数百年ごとの事態だし、神殿も詳しくないらしい。


なお、トラン様とメーメ様も、私たちが戻らないと、入り口の扉から先は出れないらしくて、ここの仮眠室を使っていたそうだ。

食事などは、入り口の扉まで貰いに。


大変お手数をお掛けいたしました。お陰で空腹には悩まされずにすみました。


とにかく無事に戻って良かったと喜んでもらって、それぞれ手を握りながら神殿の入り口まで戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ