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お初

作者: niya


 快晴の青空。

入道雲が浮かんでいる。

炎天下の空の下、木陰で樹木にもたれながら男子高校生が待っている。どこにでもいるような男子高校生で特段苦手なものもなければ、特段得意なこともない男の子だった。身長も高くもなく、低くも無い平均的な身長だった。髪は黒色で、長くも短くもない髪形をしている。

「雄介!」

遠くで男子高校生を呼ぶ声がする。そこにはボーイッシュな女子高校生がいた。若干、男子高校生よりも背が高く、ファッションモデルのような等身の女子高生だった。それは雄介の幼馴染のカオルだった。

「遅いぞ! カオル」

 そう言う雄介にカオルが手を合わせて謝った。

「ゴメン。寝坊しちゃった」

 溜息をつく雄介。

「言っとくけど、誘ったのはお前だからな!」

「わかってるって」

 ニヤッと白い歯をみせながら、カオルは雄介に向けて笑った。

「本当に分かってるのか? で、カオルはどこに行きたいの?」

 カオルが右斜め上を見つめ、考える様子を見せた。

「どこにしようかな?」

「お前、考えとけよ。元々何を購入する予定なんだよ?」

「何って? 服とかだよ」

「服って、お前、他の女子とかと一緒に行けば良いじゃんか」

 顔の表情が曇る雄介。

「だって荷物持ち欲しいじゃん」

「俺はお前の何? 休日のお父さんか何か?」

「いいじゃん。昔ながらの長馴染みじゃんか」

 先程見せた笑顔をまたも雄介に見せる。まったくと言っていいほどに屈託のない笑顔だ。こんな笑顔を目にし、色んな負の感情を心に押し留めた。

「まったく。とりあえず駅に向かうか」

「そうしよ。そうしよ」

 まだ、カオルの屈託の無い笑顔は続いている。昔からカオルの笑顔に雄介は勝てない。雄介は観念する。

 


二人は太陽の光りが注がれる町中を歩いて最寄駅へと向かう。そして、最寄の駅から各駅列車に乗った二人。三十分かけて少し栄えた街へと向かった。

 列車の中で他愛も無い話を雄介とカオルは交わしていく。会話をしている内に、あっという間に三十分が過ぎた。街に着いた二人は列車を降り、駅のホームへと足を踏み入れる。

「じゃあ、百貨店とか行く?」

「まず、あそぼ」

 この言葉と共にあの笑顔だ。これで次の行動プランは決定。雄介には決定権はないに等しい。この状況を雄介は仕方ないなと受けて入れていた。



二人はその足で、ゲームセンターへと向かう。そこにはバッティグセンターも併設されており、二人は交互にバッターボックスに入っていった。雄介がバッターボックスにまず入り、二十球あるうちの九球をバットで打ち返した。こんなものかなと表情を浮かべる雄介。

次にカオルの番で、交代で雄介と交代でバッターボックスに入っていた。その様子を見ている雄介だったが、ある今後の様子を予想しながら見ていた。その予想通り、バンバン打ち返すカオル。カオルはサッカーをやっており日本代表候補にも入る逸材だ。当然、運動神経も群を抜いている。

そして、この光景は昔から繰り返されてきた光景だ。中途半端な雄介がこの運動神経抜群なカオルに勝とうとすることはなかなかできない話である。

「もう満足したか?」

「うん!」

 この時点でそこそこ疲れる雄介。それとは全く違い、元気な様子のカオル。

「もう買い物でいいだろ?」

「いいよ!」

 雄介が疲れ気味に話をするのに対し、カオルは元気にシンプルな反応で雄介の呼吸交じりな質問に答えていた。二人は買い物に向かう為にバッティングセンターを離れた。



複数のファッションブランドが入っている商業施設へと向かい、室内へと足を踏み入れいていく。

「どこがいいかなぁ」

「どんな服が欲しいんだよ。クール系か? かわいい系か?」

「そうだな。ちょっとクールな感じで?」

 カオルの回答に考えながら案内図の前に向かった。案内図を眺める雄介。視線が上からゆっくりと下へ動いていく。するとある文字に視線が止まる。

”三階 ファッションショップ ブラック&アイス”

「ここにするか」

「そだね」

 雄介の決定をあっさり受け入れるカオル。二人は、エスカレーターで三階へと向かった。三階へと向かうと、目の前にはブラック&アイスのお店へと向かい、足を踏み入れた。店内は黒と白の二色を基調とした棚や壁のデザインをしていおり、そこに並ぶ服のデザインも黒と白をメインにしたパンツやインナー・アウターが並んでいる。

カオル棚に並ぶ衣服を手に取りながらまじまじと見つめていた。

「どれがいいと思う?」

 身体に衣服をあてがいながら質問するカオルをまじまじと見ながら雄介は、どういった感想が正解を考え言葉にした。

「カオルは、スタイルが良いから足の長さが栄える服にしたほうがいいんじゃないかな」

「わかった。ありがとう」

 雄介の言葉を軸に買い物を進めていった。十数分後には幾つかの商品を購入した。雄介は購入した商品が入った紙袋を荷物持ちとして持っていた。

エスカレーターを使い、入り口のある下の階へと向かう二人。二人が友人の話や、YOTUBERの話していた。そんな時に、一階にある化粧品店のショウウインドウに目が入る。

「カオル。化粧品は買うんだっけ?」

「あっ、うん。行く」

 一階に辿り着く二人は、ショウウインドウに近くある化粧品店にへと入店していった。カオルはどれがいいかと品定めをしている。

「そういえば、化粧品って持ってたっけ?」

「買ったこと無い。なかなか買う機会がなかったから」

 あっけらかんというカオリ。そんな言葉にそんなものと雄介は感じていた。

店内にはカラフルな女性向けの化粧品が並んでいる。

当然ではあるが雄介も化粧品店へと行く機会は無い。故にこの艶やか空間は不思議な空気が溢れる場所だった。同時に自分が異分子感抜群な存在だった。

 そんな中で、雄介が周りを眺めていると、多くの商品の中で薄紅色の口紅が目に入った。口紅を手にする雄介。パッケージに書かれた値段も学生が出すには丁度いい値段だった。

「ちょっと行ってくる」

 雄介は商品を手に持ったままレジへと向かった。そして、数分後、カオルの前に戻ってきた。

「カオル。これやるわ」

 そう言うとカオルに小さな紙袋を投げ渡した。ゆっくりと宙を舞う紙袋をカオルは両手でキャッチする。

「何これ?」

「口紅。薄紅色の」

「なんで」

「いや、なんとなかく」

「そう。ありがとう」

「帰る?」

「帰ろう」

 二人は、帰宅の為に駅に向かった。



列車に乗る二人。二人が乗った車両には他に人は居ない。

 疲れた雄介は荷物を持ったまま寝ている。

カオルは両手で大事そうに小さな紙袋を持っている。

横目で、雄介が寝ていることを確認すると紙袋を開ける。そして、次は口紅のパッケージを開け、口紅を取り出した。じっと見つめたカオルは、スマホを取り出した。電源がOFFになっているスマホを鏡がわりにし口紅を塗り始めた。

カオル自身、人生で初めての化粧だったものだからどの位塗るのが適切かは分からなかったが、塗り過ぎないことを意識した。

丁寧に口紅を塗ると、まじまじと自分を見つめた。

テカリがあるカオルの唇。

「雄介は、買い物は女友達といけばいいじゃんとかいってたけど、私は好きな男と行きたいの。女心わかってないなぁ」

 鏡代わりのスマホ見つめつつ、カオルは小さく呟いた。そして、スマホと口紅を鞄の中に片付ける。

周囲を見回し他に乗客が居ないことを確認する。そして、眠っている雄介の顔を見た。座席の右端に座る雄介は壁にもたれかかり、寝息をたてていた。カオルは徐々に雄介の顔に近づけていく。

徐々に縮まるカオルと雄介の距離。

カオルの唇が雄介の右頬に触れた。

雄介の右頬に巣紅色のキスマークが小さく残る。

それを見て恥ずかしくなるカオル。

急いで鞄の中からハンカチを取り出し、雄介の右頬についた口紅を拭い落とそうする。すると、それによって雄介の瞼開く。

「あっ」

 カオルの声と共に雄介の瞼が動き大きく開く。

「俺、寝てた?」

「う、うん。よだれ垂らしながら。だから見ていられなくて、つい拭いちゃった」

「母親が子どもにするみたいなこはやめろよ」

 そんなことを言う雄介だったが、カオルの唇に目が入る。

「口紅塗ったの?」

 急な問いに戸惑うカオル。

「そう」

「そうなんだ。似合うじゃん」

 少し赤くなるカオル。

「ありがとう」


 二人の乗った列車は降車駅に向かって進んでいく。



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