復讐7話
「っっ………まじ、でか………まだ、死んでないんだ、はは………」
暗くてよく見えないが、何かがクッションになって助かったらしい。
暗いというよりは埋まっているが。
「何だこれ………これのおかげかな? っっ………!」
骨折にもも貫通。
傷は決して浅くはない。
「とりあえず………出口を探さないと………」
立ち上がることは出来そうにない。
仮にできたとしてもまともに歩けないだろう。
ユイトは地面を這って進んだ。
「進みずらい………一体何なんだ? 土でも砂利でもない………」
ひとまず、小さく光の見えている方角へ向かおうと思った。
目の前の一点だけ、光が当たっているのだ。
山になっているから登るのは大変そうだが、仕方ない。
少し盛り上がっているだけのようだし、我慢して登ることに決めた。
「はっ、ふっ………」
床の感触は今だに変わらない。
一体何なんだろう。
ユイトはモヤモヤしたが、それを振り払って前へ進んだ。
「あと、もう少し………」
近づいている。
確実に近づいている。
何もなくとも向かうのだ。
人間は、光を欲する生き物だ。
ユイトも今は光を求めている。
安心したいのだ。
「………やっと着いた………! 痛っ!」
床の何がが顔を切ったらしい。
頰から小さく血が滴る。
ユイトはそれを掴んで眺めたが、暗くて見えない。
「………そうだ、光に当てたら——————」
ユイトは激しく後悔した。
光に当てたことも、光が照らしているものを見たことも。
「これ………まさか………」
白く尖っている。
硬い。
しかし、叩けば中は空洞だ。
嫌な予感がした。
だが、それが人間のものとは限らない。
そう思った次の瞬間、上空の光が、この崖を一気に照らした。
「眩しい………うわああああっっ!」
ユイトは思わず手を跳ね除けた。
持っていた尖ったものは、肋骨だった。
そして、今つかんでいるのは、人間の頭蓋骨だった。
そう、ここ一体を埋め尽くしていたのは全て人骨。
落ちてきた衝撃を吸収したのもこの人骨だ。
ユイトは、今まさに、屍の上に立っている。
照らされたユイトは、見る人が見れば絵画のように見えるかもしれない。
無数の屍の上に立つ傷ついた少年。
「何でこんなに人が………」
———そこは、世界に捨てられた人たちの終着点。
「!?」
声が聞こえた。
女の声だ。
頭の中に直接響いてくる。
———無数の屍には、皆怨念が込められている。彼らは皆、国に虐げられた哀れな者。そうやって傷つけられた者たちは、こうやって人知れず捨てられるのだ。誰1人として、間違っていないのに。
「あ………」
———そう、今のお前のように。だが、彼らはすでに死んでしまった。復讐することもできない。しかしお前はどうだ? まだ生きているだろう? お前はどう思った? この国のことに何を感じた?
「憎い………俺は………俺はこの国も、この国の国民が憎い………でも、皆んなが皆んな俺の敵ってわけでも………」
———ならば、これを見ろ。
「一体何を——————あっ、ああい、ぎィいああァアアァアアッッッ………!!!!」
見えたのは、感情だった。
あらゆる俺に対する感情。
見事なまでに、真っ黒だった。
———これが国民の、お前に対する今の評価だ。散々救われてきて、いざお前が窮地に立ったらこの有様だ。ならば、お前の仲間だった者たちはどうだ?
「い、嫌だ、知りたくない! もう嫌なんだ! 見たくない、聞きたくない! 来るな来るな来るな来るな! 来るなァァァァァァ!!!!」
そして見えたのは、激しい侮蔑と怨嗟と忌避。
今までであってきた人たち全ての感情が見えた。
みんなグルだったのだ。
王から悟られないよう命令されてあのような友好的な接し方をしていたが本当は皆、ユイトを蔑んでいたのだ。
醜い、と。
もう誰も、味方ではなかった。
「ちくしょう………ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうッ!!!」
———味方はいない。力もない。お前にはもう、何も残ってはいない。元世界に戻ることも出来ず、誰かのそばにいることも出来ない。お前はもう、独りなのだ。
ユイトは、ゆっくりと拳に力を込めていった。
「だったら………復讐してやる。俺から全てを奪ったあいつらから………今度は俺が全て奪ってやるッッ!!」
———そうだ復讐せよ。復讐せよ。復讐せよ。復讐せよ。私はずっと見ているぞ。お前の行く末を。復讐者よ。今度こそ、我らの無念を晴らしてくれ………
そして声は聞こえなくなった。
無念、いや、俺には関係ない。
この復讐は、俺の復讐だ!
そしてユイトは、復讐を誓う。
彼が得たUS《復讐者》で全てを壊すと心に誓った。




