復讐6話
「森………ここなら誰も来ない………ここで静かに暮らすんだ………」
ユイトは森へ入っていった。
ここなら強いモンスターは出ない。
仮に出てもスライム。
スライムからドロップするのは水。
それを水分源として、食べ物は動物を狩って暮らす。
「死ぬのは嫌だ………だからもう、ここで暮らすんだ」
自殺はしたくなかった。
もしかしたら忘れられる時が来るかもしれないし、似たような境遇の人と会えるかもしれない。
だから、まだ死なないでおこう。
ユイトはそう考えた。
「まずは………うさぎだ。うさぎを狩ろう」
この森にはウサギがいた。
恐らく狩ることは簡単だ。
スキルを失っても、経験と技術は残ったまま。
それなら十分だ。
「………いたっ!」
ユイトは早速うさぎを発見した。
「よし、そーっと、そーっとだ………」
ユイトはゆっくりと近づいた。
そして、
「捕ま——————」
ウサギの姿が消えた。
いや、横だ。
横には、槍に刺されていく耐えたウサギがいた。
槍が飛んできたのだ。
ユイトは横を向いた。
「………は、はは、何だよ、なんで、こんなとこにこいつはいるんだよ………キングオーク!!!」
キングオーク。
豚人の中でも特に強いモンスター。
勇者のときは楽勝だった相手も、今では歯が立たないだろう。
「ブオオオオオオ!!!!」
キングオークはもう一本の槍でユイトを突き刺した。
ユイトは、最小限の動きで攻撃を捌き、悉く避けた。
「まだ死ねない、まだ死ねないまだ死ねないまだ死ねないまだッッ!!!!」
このまま避け続けても勝てない。
だが負けもない。
もう少し、避け続けて考えるんだ。
だが、肉体は、ユイトの精神とは裏腹に悲鳴をあげた。
「ぅ、あ………」
無茶な動きだったのだ。
一介の冒険者にも満たない現状のユイトが、オークキングの突きを躱し続けるなど不可能である。
「ブオオオオオオ!!」
脚を槍が貫通した。
「がァ………………ッ………!!!!」
オークキングはそのままユイトを蹴り飛ばし、森の奥の巨木に叩きつけた。
「がっ………………は、ァ………っ!」
木から滑り落ちるユイト。
木の後ろは崖だった。
「ブモッ、ブオッ!!」
オークキングはいくらかの知性がある。
だから、
「………おい、何すんだよ………やめろ、やめろ、やめろややめろやめろやめろやめろやめろ!!! やめろォォォォォォ!!!!!」
バキッ!!!
「———————」
ユイトの足を砕き割った。
そして、ユイトを地面に叩きつける。
崖、逃げられない。
ああ、力さえ失わなかったら………もう遅いな。
今の俺はただの人間。
こんな奴もろくに倒せない雑魚。
このままだったら間違いなく死ぬだろう。
「も、し………おちた、ら、………すこ、しは、いたい………だろう、な」
でも、ここよりは………あの日よりはずっとマシだ。
「!?」
ユイトは、自ら崖に近づき、落ちていった。
死が近づく。
しかし、最期に見る記憶すら、全てあの日以降のことだった。
「はは、ははは! 何だこれは………ははっ! もう笑うことしかできないな!! 汚い、醜い、愚か! 俺が守ってきたのはこんな連中だったんだな! ふざけるな……………ふざけるなァアアッッッ! 呪ってやるッッ!! あいつら全員裏切りやがって、クソッ、クソッ………!!! 何で俺がこんな目にあうんだ! 俺はッ、俺はただ………みんなを守ろうとしただけなのに………!!!」
ユイトは落ちていく、落ちていく、堕ちていく、堕ちていく。
そして、その心はついに、どこまでも暗い闇となった。




