復讐22話
あれ? なんだ、これ。
頭がフワフワしてる………手………動けねぇ………明晰夢って奴か?
「夢ではない」
!? この声………あン時の亡霊か………!
「私は、見ている。お前の道を」
おい、何なんだここは!
「ここは、お前の記憶。お前には、お前の復讐の再確認をしてもらう」
再確認? いらねぇよ! そんなモンしなくても、俺は復讐を果たすと誓ったんだ!
「否。お前はこの一ヶ月で、我が身の復讐心を顧みたか?」
それは………っ!
「私は見ている。お前の道を。お前の辿った道も。故に私は、お前に見せる。お前の辿った道を」
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気がつくとユイトは、一月前のあの日を見ていた。
そう、裏切られたあの日。
はじめに見たのは、グレイブに腕を斬られ、閉じ込められ、地下牢から脱出した直後の場面だった。
………頼む、いくらでも顧みる………だから、ここだけは見せるなッッ………!
その願いも虚しく、場面は進んでいく。
ユイトは、目を背ける事も出来なかった。
「目を背けるのか?」
ちっ、違うッ! そうじゃない! そうじゃ………
「私は、覚悟を求めている。だから、お前はこれを見て、復讐と向き合い、私にそれを示せ。それが出来ねば、どのみちお前には道はない」
ユイトの中で、様々な考えが巡った。
その結果、確かにその通りだと思った。
そして、
………わかった。
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「ハァ、ハァ………くッ………ぅう、痛い………ちくしょお………ッッ!!!」
一気に逃げるのはマズイと思ったユイトは、ひとまず城の誰もいない場所に身を隠した。
しかし、
「逃げられないぞ」
「マーリャ………!」
マーリャは、ユイトが修行時代によく会っていたこの国の文官だ。
この国に来たばかりの頃、読み書きを教わった。
以来、ユイトは彼女を先生のように慕っている。
「怪我をしているな………」
「そう、なんだ………手を貸し——————!?」
ユイトは横に飛んで避けた。
投げられたナイフが掠り、腕から血が滴り落ちる。
「なぜ避ける——————バケモノなんだから死なないだろう?」
考えれば分かる事だった。
彼女のUSは《追跡者》
知りたいものの場所を知るUSだ。
彼女は半径1kmにいる者ならどこにいようが必ず見つけられる。
「くそっ………君も………お前もかァァァッッッ!!!」
ユイトが、マーリャに斬りかかろうとした。
その瞬間、
「こんなところにいたのか。バケモノ」
「まだ生きてやがったのか。 バケモノ」
顔が瓜二つの短髪の少年が2人。
彼らの名はキュールとリュール。
同じUS使いの双子だ。
「キュール………リュール………!」
彼らは、短期間だが、魔法学校を共に通った仲だ。
寮も部屋が近く、よく遊びに行っていた。
この双子はあるUSを持っており、それはとても重宝されていた。
「何で………」
裏切ったんだ! ユイトは言おうとした。
「裏切ったのか、と言いたげな顔だな」
「それは違う」
「初めから仲間でも友達でもなかったのだ」
「滑稽だったよ」
「「楽しそうに友達ごっこをするんだからな」」
双子はユイトを嘲った。
「「気持ち悪いんだよ、お前なんかと誰が友達になるだ? 死ねよ」」
US《神風ヲ吹キ荒ラス者》
風を操るUS。
彼らが起こす風は、魔法とは比べものにならない。
ユージンと同じ、数少ない五大属性のUS使いだ。
竜巻やかまいたち、風の玉などが次々に飛び交う。
「クソッ、クソッ………ッッ!!」
ユイトは風を紙一重で躱す。
しかし、ステータスが低下し始めているユイトには、もう以前のような身体能力はない。
「ぅ………ぐ、ぁ………ッッ!!」
腹部に風の玉が直撃。
吐血したが、グッと歯を食いしばって何とか耐える。
ユイトは逆に竜巻よって生まれた死角を利用して、城の中に逃げ隠れた。




