復讐19話
「………はっ、はっ………」
何かがこちらを見つめている。
敵意や殺意といった類のものではない何かを感じている。
まるで、全身を何かが這いずり廻るような感覚。
「だっ、誰だ!」
勇者時代にも、ここまで得体の知れないものと遭遇した事はなかった。
額から流れ出る汗が滝のようだ。
魔王と対峙した時ですら、ここまで緊張はしなかった。
「………た」
「?」
声がした。
奥から声が聞こえた。
しかし、その後に耳を澄ませても声は聞こえない。
空耳だったのだろうかと一瞬思った。
それは突然はっきりと聞こえた。
——————見つけた
「!!!」
風が突き抜けていった。
一瞬にして何かが体を通り過ぎるような感覚。
それを認識する頃には、先ほどまでの気持ち悪い感覚は消えていた。
「………なん、だったんだ?………見つけた?」
声は確かにそう言った。
透き通った女の声だ。
そして、奥から感じる何かの気配自体はまだ消えない。
そして、ふとこんな事を思った。
「俺を呼んでいるのか………?」
ユイトは、その声に引き寄せられるように扉の下へ下っていく。
梯子を降りなければならないようだ。
ここはさらに錆びが酷い。
鉄特有の臭いが鼻についた。
「廃工場みたいな臭いがするな………にしても」
全然底が見えない。
手を離してもう一度掴もうものなら、錆びた梯子ごと真っ逆さまになりそうだ。
「多分落ちても衝撃吸収くらい出来るが、念のため梯子で降りるか」
魔法が使えない今、この松明しか光源がない。
ここには光苔は無さそうだ。
「………妙だな。ここまで何もないのに、なんで声が聞こえたんだ?」
もうかれこれ100mは潜っている。
それでも底が見えない。
なのに、あんなハッキリとした声が聞こえた事が不思議でならない。
「そう言うUSなのか………あるいは魔法具か………」
カツン、と言う音が鳴った。
「お?」
どうやら地面についたらしい。
「っかしーな。地面は全然見えてなかっ——————!!」
ユイトは下を見てその異変に気がついた。
ついたと思ったのは地面ではない。
足場など、どこにも見えない。
しかし、そこには確かに床があった。
透明な床のようだ。
梯子はまだ下に続いている。
しかし、それより下には行けなかった。
まるで、遮られているかに様な印象だ。
ゴトン
「今度は何だ!?」
重いものが動く音がした。
何かの仕掛けだろうか。
何にせよ、何かが起きている。
そして、
「うわっ!」
あたりが急に明るくなった。
そこで目にした光景は酷いもので、 俺はハッと息を飲んだ。
「——————っ!!!」
血だ。
凄惨な血の跡。
そして、死の跡。
夥しいまでの人骨が、そこら中に打ち捨てられていた。
先程から漂ってくる鉄の臭いは錆びだけではなかったのだ。
この血も、その臭いの原因だったのだ。
「これは……………」
一歩先に踏み出したその時、骨を踏み砕いた音に、彼女は反応した。
「………だ、れ………………?」
「人か!? ………っ!」
目の前には、鎖に繋がれ、全身に無数の傷を負った少女がいた。




