復讐17話
ユイトは今、最初にいた屍の山まで来ている。
この山の、天辺の真下に扉があるという情報があった。
今からその部屋を調べようと思っている。
「さて、吹き飛ばすことは簡単だ。だが、ここの屍はこの国の犠牲者。つまり、俺の同士のような者だ。敵でもない死者を冒涜する事はしたくない」
なので、この死者を皆葬ってやろうと思ったのだ。
かなり手を焼くだろうが、火葬をしてやろうと思う。
ここでやって仕舞えば一気に山が退かせられるし、何より弔える。
俺の復讐だと思っていたが、ユイトにも同情はある。
「もうボロボロの骨だ。完全に灰になるだろう。せめて、安らかに眠れ」
ユイトは砂鉄を操って、骨を一箇所に寄せる。
そして、あるAUSを使うことにした。
これは、王城にいる大臣、ホルポのUSだ。
あの日、俺をゴミを見るような目で蔑んでいたのは決して忘れない。
それなりに話していた仲なのにあっさり切り捨てやがった。
「………クソッ。あんなどうでも良いやつにもここまで憎悪が湧くとは………あの声を聴いたせいかもな」
怨霊たちが俺に聞かせた声には、ホルポの声もあった。
汚いだの、醜いだの、言いたい放題言ってやがっていた。
「………来た」
奴のUSは《紙工作者》紙でできた者を自在に操るUS。
折り鶴などを大量に生産すれば、それらを使って追跡などが可能。
割と有用なUSだ。
そして、それに反する俺のAUSは《焼却者》。
者を燃やす能力だ。
相手がしょぼいと、こっちもしょぼくなるが、今はこの程度の火力でも事足りる。
「燃えろ。そして眠れ」
骨がどんどん燃え上がっていく。
暗い穴の底で屍だらけのこの場所。
バケモノで溢れかえった洞穴。
人骨を燃え上がらせる炎。
生者はただ1人、心を壊し、復讐に身を窶す怪物。
その拳に握っているものは、ついに果たすことのできなかった復讐者の最期の希望。
まるでここは、地獄だ。
「さしずめ俺は地獄の鬼ってところか?………そうだ。俺はあんたらの分も鬼になる。これは俺の復讐だ。でも、この力を得た以上、アンタらももう俺と1つだ。だから、鬼になってあいつらを全員、地獄に叩き落としてやる………ッッ!!」
俺はこの《復讐者》の名に誓い、復讐を果たすと、改めて心に刻んだ。




