復讐10話
「結構長いな………」
洞窟は思ったよりも奥へ奥へと続いていた。
運のいいことに、ところどころ光苔が生えていたので、視界は開けている。
「………何だこれは」
一瞬下を見ると、何かの足跡があった。
「デカイ………穴をギリギリ通るくらいのモンスターが持つ大きさだ」
この洞窟は決して狭くない。
さっきのキングオークくらいなら簡単に収まる。
この足跡はさっきのキングオークよりもまだ大きいものだった。
「一体………何がいるんだ?」
危険な気がする。
気配は直ぐそこだ。
かなりデカイ。
勝てるのか?
………いや、ここまで来たら見るだけ見よう。
ユイトも馬鹿ではない。
力量差くらい測れる。
故にわかる。
この先で待っているのは、かなりヤバイモンスターだ。
だからこそ、それを確認するべきだと、ユイトは判断したのだ。
「武器は………武器だけは一丁前だな」
勇者の装備一式はある。
これだけが、自分が勇者だったことを証明する数少ないアイテムだ。
「さァ、鬼が出るか蛇が出るか………どちらにせよ、俺は危ねぇがな」
ユイトは洞窟の出口まではついにやってきた。
「目の前に来たからわかる………これ、魔界に生息するモンスターレベルだ………!」
何故こんな所にいるのかはわからない。
ただ、この先にいるのは、今のユイトじゃかすり傷もつけられない強敵だと言うことは確かだ。
「………あわよくば接近しようと思ったが………これはダメだな。見るだけ………見るだけだ!」
ユイトは決死の覚悟で顔を出して覗き込んだ。
そこには、
「え………………?」
何もいない——————否。
「! 上か!」
ズドドドドドドドド!!!
上から微かに感じた殺気を感じ取り、紙一重で攻撃を躱した。
土埃が舞い、モンスターの姿が遮られる。
「チッ、逃げ場を失ったか!」
悪態を吐くが、虚勢だ。
実際そんな余裕はない。
だからごまかしている。
そんなユイトの目の前に立つモンスター。
土埃が晴れ、ついに姿を現した。
「………嘘だろ?」
獅子だ。
魔界に生息する非常に珍しいモンスター。
鬣に電気をまとい、前後の足の爪には膨大な雷属性の魔力が篭っていた。
「雷獣王レオサンダー………!」
「グオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!!」
レベルとは別に、クラスというものがある。
ユイトはかつて、マックス10あるクラスの8まで登り詰めていた。
一般の冒険者が良くて2。
天才と呼ばれる冒険者でも行って4。
歴代の勇者もマックスは6だった。
しかし、ユイトはそれを更に上回る8。
この時のユイトならレオサンダーをギリギリソロでも討伐できただろう。
それでも、ギリギリ。
レオサンダーはクラス5、レベル80以上の冒険者がレイドを組んで漸く倒せるモンスターだ。
圧倒的な魔力を込めた雷撃は、敵を一瞬で消し炭にする。
「あ………ぁ………」
そんな化け物を目にしたユイトは、
「あ、あはは、あっはっはっはっは!!!!!」
笑った。
しかし、恐怖からでも、絶望からでもない。
これは——————勝利を確信した笑みだ。




