復讐9話
「この穴から気配がする………前みたいな五感の鋭さはないから強さはわからないが、確かにここにいる」
穴の奥からモンスターか何かの気配を感じ取った。
レベルアップをして、脚だけでも回復させる必要のあるユイトにとって、これは好都合だ。
「レベル1じゃダメだ。これじゃあ、奴らに復讐なんかできやしない」
ユイトは、手のひらから血が滲むまで強く拳を握りしめた。
「今思い出すだけでも腹がたつ………そうだな、 最初はアイツからにしよう。アイツのUSを俺のUSで封じ込めて、動けなくなったところを痛めつけて、頭蓋を割り骨を砕き、肉を裂いて、腕を千切って、脚を斬り開いて………!」
膨れ上がる黒い衝動。
改めて自分の内にある憎悪の深さを思い知った。
「そのためには、まずかつての強さを取り戻さなければならない。レベリングか。しばらくやってないな。ここに来て直ぐの頃を思い出す」
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ユイトが召喚された日の事だ。
「えっと………ここは?」
俺は確か家でゲームをしていた筈なんだけど………
ユイトは辺りを見渡した。
人だ。
見慣れない格好をした人がいる。
騎士? メイド??
頭の中がぐちゃぐちゃになっている
しかし、それと同時に、ユイトは高揚していた。
このシチュエーションは、噂で聞く、
「勇者だ! 勇者を召喚したぞ!」
来た!
異世界召喚だ!
ユイトはつい笑みがこぼれた。
「初めまして勇者様。私はこの国の王女、アリシャと申します。お名前をお聞かせ願えますでしょうか」
綺麗な人だと思った。
——————あの時は
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これは、ユイトが始めて人前でUSを使った時のことだ。
「《終無キ者》………不死身ですか!?」
「はい、そのようです」
鑑定士がユイトのUSを告げると、わっと歓声が湧いた。
ユイト自身もチートスキルを得てかなり興奮していたのだ。
「不死以外にも何か出来ますか?」
「あっ、えっと………細胞を操れます!」
ユイトは腕をドロドロに溶かし、肉会を自在に操った。
その時は、一瞬静まり返ったので、気味悪がられたと思った。
実際ユイト自身も気持ち悪いと思った。
しかし、
「凄いです! なんで自由なUSなのでしょう!」
そう言ってもらえてユイトは本当に救われたのだ。
それが嘘とは知らずに。
今思えば、なるべく市民には見せるな、とかドロドロを使うな、などの制約はイメージダウンを避けるためだったのだ。
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「吐き気がする………思い出すのはやめだ。進もう」
そしてユイトは、洞窟を進んで行った。




