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軌跡はきっと繋がる  作者: 烏賊の竜田揚げ
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第七話 魔力の使い道

説明回です

 一見質素な部屋に見えるが、見るものが見れば超一流の職人が作った物だと分かる木材でできた円卓に、ゆるくカーブを描く縁に、座ると全体重を優しく包み込むように反発するクッションが付いた椅子のある部屋に人影がある。


 円卓の木材は、エルフ、絶滅した耳の長い魔力に長けた者、の住む都――だった場所にそびえ立つ、この世の全ての生命の根源とされる世界樹を、椅子のクッションは、この世界の神が遣わしたという四匹の龍の内の一匹の鬣を使用した、世界に二つとない品である。


 オークションにかければそれこそ、一国の民が数世紀は遊んで暮らせるであろう大金が手に入るであろう。


「焼失したカルアレ家の屋敷ですが、内部に残っていた者は全員、焼死していたようで、それを未然に防げなかった護衛の冒険者は、責任を取って辞めたそうです」


「ほぅ……その冒険者の名前は?」


「ノアと名乗る男性冒険者をリーダーに、ゼロという名の男と冒険者ではない女の三人のパーティだと報告が上がっております」


「女の名前は?」


「それが……完全に伏せられていまして、名前がはっきりしないと」


「ふむ、ゼロにノア………それに観察対象の死か」


「如何なさいますか?」


「確か今代の観察対象は男じゃったな。どの女かに子を孕ませておらんかったか?」


「まだ精通して間もない歳だということで、そういった行為をさせてないそうです」


「ふむ……これであやつに関しての手札は尽きたわけか……」


「如何なさいますか?」


「そうじゃのぉ、先ずはそのノアとゼロと名乗る冒険者について調べろ」


「かしこまりました」


 報告していたメイド服を着た女が華麗な動作で退出する。それはもう、野に咲く一凛の花のごとく美しいものだった。


「………何処にいるのじゃ、我が同胞よ………」


 広々とした空間でその言葉が鮮明に響き渡る。







 町チューリッジを出て四日、辺りに見えるのは踏みならされた道と、近くに流れる澄んだ川、そして邪魔にならない程度の木々。


 真ん中にあるずっと奥まで続く道を二人並んで歩く影、二人とも疲労困憊といった様子である。


 カイトの見た目は変わらないが、ナナシの髪の長さが短くなっている。これは町を出たときに邪魔になると、腰まで伸びた髪の毛を切ったのだった。


「結構進んだよね、ここらでちょっと休憩とろうよ」


「そうだな、川もあるし丁度いい」


 休むようにカイトが声をかけるとナナシがそれを承諾する。


 ナナシとカイトは、各々の水筒――ソルフィス達に貰った物――に川の水を詰めようと水につける。

 その近くを泳いでいた魚が手を水につけた途端に、スイスイ、と遠ざかる。


「貰った食糧ってそろそろ尽きそうだったよな?」


「屋敷から拝借した分も合わせるとあと一日くらいだね」


「じゃあこの魚でも捕まえて食事にしないか、貰った物はまだ持つんだろ?」


「それは良いと思うけど、どうやってこの魚捕まえるの?」


「まぁみてろよ」


 地面をそ、こらに落ちている木の枝を使って網目状に傷つけて、溝を作る。そこに魔力を流して、魔力の網を作る。


 この魔法は魔法陣の応用だ。魔力を魔法陣のような型にいれて発動させると、魔法の補助につかえる。

 今回は別の型に魔力を流して、そのまま触れられるようにハッキリと魔力を流し込む。


 魔力を籠めすぎると、魔力が内部の圧力に耐えきれなくなって爆発して霧散するが、程よい量だと適度に硬さと弾力を兼ね備えた糸が出来る。


 魔力を籠めすぎると爆発というのは正しく先日起きた、【強化(エンフォース)】のことである。


 本来なら、ちゃんとした量の魔力を込めると爆発しないのだが、ナナシの力量が拙いせいもあり、爆発という事故が起こった。


 ナナシはゆっくり魔力を込めることにより、爆発する寸前の、魔力を留めるという状態を維持することの練習をした。


 【強化】なんてたいそうな名前を付けているが、ただそれは魔力を籠めて、対象とするモノの性質に合わせて強化しているだけなのだ。


 それを、名前を付けることによって、曖昧なイメージでもかなり似たイメージを相手に印象付けることが出来る。


 魔法を発動させるにはその発動したい魔法の性質をよく理解する必要がある。魔法を発動させるときに名前を発言するのは一種のイメージの固定を手助けしてくれるから。


 そうすることでより簡単に魔法を発動できるようになる――と本に書いてある。


 魔力の糸を網状に作って、その端を持ち上げる。


「カイト、もう片方の端を持ってくれ」


「へぇ、器用なことするね」


「魔力が出せるならカイトもできる筈だぞ」


「そのうち練習してみるよ」


 川の流れに対して法線方向に魔力の網を張り、しばらく放置する。


「もう何匹かかかってるし十分じゃない?」


「ニ、四……九匹か。四匹でいいな、残りは逃がそう」


「勿体なくない?」


「腐るぞ」


 その言葉を受けて、そっちの方が勿体ないね、と四匹とって残りを逃がすカイト。


 使いたい魔法の属性、今回は火についてどんなものだったかを思い出す。火遊びはあの時ひたすらやった、性質を理解するのに十分なほど。


 ソレに名前を付けてより、イメージの固定を促す。


「【火球(ファイアボール)】」


 火を着けて、焚火を起こす。それから魚の下処理――内臓を取り出して、火にかける。


「流石に三日も同じような景色だと飽きるね。なんか魔物も小型魔獣しか出てこないし」


「そうだな、本当に進んでいるのか分からなくなる」


 町を出てからしばらく歩くとこの森に入る。それから三日間同じ景色なのだ。川が蛇行して、水場が適度な頻度であったりなかったりを繰り返す以外は殆ど単調で変わらない道。


 魔物にも全然遭遇することなく、出会っても、額に鋭く大きな角をもつウサギ、ドリルラビットや、人型の、俺たちよりも一回りほど小柄な一回ゴブリンで、数も少なく、武器も持っている―――俺は剣で、カイトはナイフで対応する―――ので苦にならない。


 一度、ゴブリンが二体で襲い掛かってきて、戦闘中に傷を治そうとあの癒し効果のある光を使おうとしたら攻撃も防御も疎かになり少し危なくなったが、それ以外はほぼ順調であった。


 ゴブリンはまず見た目で抵抗感があったから無視したが、ドリルラビット解体して食べようとしたら血生臭くて食えたものじゃなかった。


「それにしばらく碌に寝れてないからな、かなりしんどい」


「そうだね、今すぐでもぐっすり寝られそうだよ」


 万が一、眠っているときに魔物が襲い掛かってきたら一大事だ。

最悪、あの光が体を癒してくれるが、その前にどれだけあの光の効果があって、どの程度まで正確に回復できるのかも分からない以上、余計なダメージは食らいたくない。


 そのために二人で護衛で交互に見張りをすることになる。こんな経験は俺もカイトも初めてだったため、碌に睡眠がとれていない。

 早く何処か安全に寝られる場所に行ってぐっすり寝たい。


 そろそろ出来た頃合いだろうか、手に取って齧り付く。


「生……」


「あはは、まだまだかかりそうだね」


 しばらく川魚と葛藤する。





「そろそろ行くか」


「そうだね」


 食べ終わった後俺たちは再び道に沿って歩き始める。


 夕日が暮れ始めた頃に森を抜ける。


「あれがソルフィス達が言ってた都市【ナレージャ】かな?」


「ここに来るまで何も、街らしき所はなかったからそうじゃないか?」


 ここには生憎回答を持ってる人はいない。疑問に疑問で返してしまう。


「日が完全に暮れる前に急ごう」


「じゃあ走ろうよ」


 二人して走る。暗いのは危険なのと、少しでも早く寝床を探すために!


「ちょっと待ってくださーい!入りまーす!」


「もう閉めるんだ。そこらで野宿でも……黒髪に赤髪か、コイツらがゼロさんの言ってた奴等か。……入っていいぞ」


 門番が俺たちのこと知ってるような口ぶりで話す。


(ゼロってだ……そういえばカイトがそんなこと呟いてたな)


「あ、ありがとうございます」


「助かる」


 そう言って中にいれさせてもらう。


「あぁ、そうだ!お前ら、明日はまず冒険者ギルドに行ってこい。

 それと、次からは身分証がなければ入るの際に半銀貨5枚だぞ!」


 ニカッと笑って気さくに言う門番。真っ白な歯に腹筋が隆起した肉体が相まって暑苦しい。


「わ、分かりました」


「……」


 きちんと返事したのはカイトの方だ。ここを離れるタイミングを完全に見失った様子である。


「はいはい、もう行った行った、宿探してこい」


「う、うん。じゃあ行こうか、ナナシ」


「そ、そうだな……」


(とりあえず宿を探そう、もう眠い)

名前:

種族:人間

称号:・・・・者

状態:衰弱

ジョブ:なし

Lv :6→10

HP:130→146

MP:297→345

筋力:29→51

魔力:63→83

体力:26→49

俊敏:25→46


ユニークスキル

・・・・


スキル

状態異常耐性Ⅼv3

痛覚鈍化Ⅼv2


魔法

聖魔法Lv1→2

魔術Lv1

干渉魔法Lv2→3

火魔法Lv1

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