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【二巻発売中!】追放された勇者の盾は、隠者の犬になりました。  作者: 家具付
いかにして盾師は、隠者と添い始めるのか
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昼中=ありふれた出会いが一つ

ギルドはいつでも人が行きかっている。ミッションで採取したものを買い取ってもらったり、新たな物を提案してもらったり、情報交換をしたり。

お兄さんと別のミッションを受けたおれも、ミッションをこなしたので、今ちょうどそれで採取したものを、台の上に積み上げていた。


「ほら。これで全部だな。ポケットも全部漁ったし」


どしゃりとギルドの買取受付の台に置いたのは、鉱物である。これは鉱物竜と呼ばれる竜の背中で生み出される鉱物であり、鉱物竜はこれで卵を覆って守る。

別名を竜金剛という。つまりえらく頑丈な鉱物だ。

普通の温度の炎とかは相殺するし、温度も伝わらない。

これをすりつぶして、糸に混ぜ込むと耐火耐熱の布地が出来上がる。

しかしこの鉱物竜は寝ている所を起こすと大変に危険で、まあ大抵踏みつぶされるか丸呑みだ。

しかし絶滅危惧種指定されているため、倒して採取できない。

そして倒した場合、採取した鉱物に消えない濁りが現れるから、違反は一発でばれるのだ。

生かしたまま、きれいに採取するのは、結構難しい。

そのためこの手のミッションは、冒険者泣かせだとよく言われており、おれが提案されるまで、このミッションも受注者がいなかったようだ。

しかし。

おれは非常に運がよかったと言えるだろう。


「怪我一つないのか」


「簡単だったぜ」


「お前なあ」


「西側の岩場のフィールド、あそこに鉱物竜の卵の殻が集まったくぼ地があった。何年も底に捨ててるらしいな、山ほどあったぜ」


頬杖をついて、簡単だった理由を言えば、マイクおじさんはおれの頭を、ぱこんと分厚い名簿でたたいた。

おじさんおれの事ぱこぱこ叩くけどさ、頭がこれ以上悪くなったらどうすんだよ、判断力が無くなったらお兄さんを、守れないじゃないか。


「どうせそこに行くまでに普通は死にかけるんだろ」


「死なないだろ、おれが行けたんだし」


「間違いだろう、凡骨。お前くらいの実力を持たないとそこに行けないというのが、正しいだろう」


そうかもしれないから、素直に頷くと、阿呆とまた叩かれた。叩きすぎだ。

さらに思い出した事があったから、一応言っておく。

馴染みの受付の人に、情報を渡しておくのは普通だ。時と場合によってはそこから、素晴らしい結果が生まれると言うし。

事情を知る誰かが多いほど、援護してもらえたりする事もある。


「あと、あいつら五年に一回は体の鉱物落としあう繁殖期だろ、そこを狙えば濁りもない綺麗な鉱物が手に入るってのに」


しかし今回の情報は、マイクおじさんの動きをたっぷり五分は止めてしまった。

言葉の意味を理解してから飲み込んで、マイクおじさんが小声で聞いてくる。


「……待てお前、それをどこで知ったんだ」


「実地。おれの師匠がいきなり鉱物竜の繁殖地に丸腰で放り投げて、三か月放置したからな。刃物の一つも手に入らないから、鉱物竜の卵の欠片を刃物代わりにしたんだ。それで色々、魔物の生態とか学んだぜ、実地で」


本じゃなくて実地、と強調すると、マイクおじさんが唸った。


「道理で曇りが一つもない、透き通った龍金剛だと思えば……いらなくなってはがれたものなら、確かに曇りも濁りも発生しないか」


「なんか大問題みたいな言い方してるな」


「色々あるんだ、ギルドの事情ってやつでな」


「ふうん、話しておく方がいいんじゃないのか、おれ文字分からねえから、掲示された諸注意読めないし」


「そうだった。……どうもお前と隠者殿が活発に採取活動をするせいか、このギルドには採取の達人や到達者がいる、という噂が立っていてな、アシュレの別のギルドの奴らが、そいつらを引き抜くために血眼で正体を探っているんだ」


余談だが、あと五つギルドはある。アシュレがいかに巨大な自由都市か、想像できるだろう。


「探ろうがなにしようが、お兄さんがどうするかだよな。お兄さんが移る時がおれの映る時期だし」


おれにとっての事実はそこしかない。お兄さんが動けば動くし、動かないなら止まったままだ。


「言ってやがる。ララさんが過敏になっているんだ。前に似たような事が起きた時、えげつない奪い合い合戦が起きたらしくてな」


鼻を鳴らしていうマイクおじさん。おじさんの記憶に残るって事は、十年以上前じゃないだろう。


「引き抜きにえげつないもくそもあるのか」


引き抜きってあの手この手だから、もともとえげつないんじゃないのか。

意外に思って問い返せば、マイクおじさんの脇で書類を書いていた、スタンパイクさんが言う。


「対象者の身内から囲い込み始めてね、信じられない借金を背負わせて、そこに行かなかったら返済出来ないって風にしたのよ……。おかげでここに義理があったその対象者は精神を病んだわ」


「義理堅いやつだったからな。うちのドリオンさんが打ち捨てられたのを拾って鍛えたっていうのを、いつまでも恩だと言っているような奴で。ドリオンさんのおかげで結婚できたとかも言ってたからな、ここじゃないギルドに行くなんて、考えもしない奴だった。それ位の心の女だったから、精神が耐えられなくってな」


いい奴だったんだけどな、とため息交じりのマイクおじさんだが、おれは一言言っておいた。


「お兄さんが借金の一つや二つで、精神を病むと思いますか、その前にそういう騙す事をしたやつを叩きのめすように、おれに言うと思いますよ」


「本人が叩きのめすんじゃなくて、お前がやるのか」


「おれの方が効率がいいでしょう? お兄さんのメイスは殺しはできても加減が出来ない」


「……お前はあの御仁のメイスの由縁を知っているのか?」


「え、由縁なんて物があったりするのか?」


単純に、今までのお兄さんの戦闘スタイルを見ての言葉だったのに、マイクおじさんもスタンパイクさんも、ぎょっとしていたから。

聞き返したんだが。


「あの御仁のメイスは、“殴死運命”というメイスだ。文字通りふるったら殺す以外の運命にならないという、呪いの品物の一つでな。所有者の力を最大にするせいで、手加減した一撃にならない。おまけにほかのメイスを使えば、他のメイスを腐らせる呪いまで付加されているって話だ」


「どこのやくざだ。刃物抜いたら、血を見るまで止まらないっていうのと何が違う」


「噂によればアシュレに来る前に、やくざから譲渡されたとかされないとか」


「ふうん。ま、おれにはあんまり心配しなくていい事だな」


「……は? ここまで聞いてその楽観した感じはどこから出て来る」


「さっき言っただろ、手加減の必要な相手だったらおれが出る。おれを前に出す事それが、お兄さんの手加減だ。別にお兄さんのメイスが呪いの品だろうが何だろうが、おれの動きを制限するわけじゃないし、関係ないだろ」


「お前ほんと言うよな。さすがとしか言いようのないかもしれない。あ、それで思い出した。隠者殿に渡してほしいと、ジョバンニさんが手紙を用意していた。何かの依頼書らしい」


「はいよ、確かに受け取った。ちゃんと渡しておくぜ」


手渡しの手紙はきちんと封がされていて。誰かが破いたらすぐに分かる仕様になっていた。

盗み見が出来ないようにされている。

それを道具袋に入れて、おれは立ち上がる。


「竜金剛の査定、時間かかる? ちょっと飯食ってくるわ」


「おう、今日は査定が多くてな、一時間位は大丈夫だぞ」


マイクおじさんの言葉を聞いて、おれは昼飯を食べるべく、ギルドの建物を後にした。


「さてどこに行くか、外で飯なんてまあまるでないからな」


正直何処がうまいのかしらん。

取り合えず嗅覚を頼りにするか、と勝手に判断して近くを見回す。

ギルド建物の近くは、そこで働く人や出入りする冒険者たちのために、飲食店も多くあるものなのだ。

昔はお前に外の飯なんて高すぎる、と入れてもらえなかったし、今はお兄さんと一緒のご飯がおいしくてあんまり外食って気分にならないし。

まず第一に、字が読めないから何を扱っているのかわからない。

どこかにわかりやすい看板があれば、ときょろきょろ見回して、やっぱりわからなかったから、一度家に戻って食ってくることにした。

まだこの時間なら、若君たちも東区で暴れていないはずだから。

行きかう人々の密度が、いつもよりも多い気がしたけれども、そんなの比べてもわからない事だから、適当にすり抜けて門をくぐって。

目の前というか、おれに人が一人ぶつかってきた。それも正面から。

避けるのも可愛そうだ。受け止めてやるか、ととっさに受け止めれば、勢いがかなりよかったらしい。

うぐう、と人がうめいた。肌に薄く羽毛が生えている箇所がある。天使族だろう。

初めて見る天使族である。彼等は寿命も長く住んでいる土地は高山である事が多いから、遭遇率は普通の街ではとても低いのだ。

しかしここは人種のるつぼ、アシュレだったわけで。

夕方と早朝に、飛び回る天使族が青空を背景にいたりするのが東区だ。

西区は入った事ないから知らない。


「おい、きれいに吹っ飛ばされたけど大丈夫か」


受け止めながら問いかけると、天使族特有の金髪の彼だか彼女だかが、おれを驚きに満ちた顔で見た。


「え、俺より年下の餓鬼が吹っ飛んだ俺を受け止めた……?」


「うるせえよ」


だいぶ、というよりもずいぶんと間違いなく失礼なので、放り出してやる。

受け身が取れないで、腰を打ち付けた天使族がうめく。


「この程度の受け身も取れないなんてだめだろ。いろいろ」


おれからすればものの数秒、放り出されている間に立て直せる秒数だったのに、それが出来ない天使族。

天使族って、オーガやハイエルフ以上に動きが軽やかなんじゃなかったのか。

手を伸ばせば素直に、取って立ち上がるのだから、こいつ悪い奴じゃないのだろうが。

ちょっと身体能力が低いのか、と思うと。

俺より背丈が高かった。目線が上だった。受け止めた時は軽かったから、似たような背丈、と判断したのは間違いだったようだ。

骨格が雄の骨格だから、きっと彼でいいのだろう。彼は埃を払って、おれに問いかけた。


「……餓鬼と言って悪かった。あんたに受け止めてもらえなかったら、背骨を折っていたかもしれない。少し待ってくれないか、お礼に食事をおごりたいんだ」


「お礼欲しさに受け止めたわけじゃないけど、ありがたくその申し出は受けるぜ」


腹減ってんだもん。喜んで申し出を受ける俺だった。

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