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【二巻発売中!】追放された勇者の盾は、隠者の犬になりました。  作者: 家具付
いかにして盾師と隠者は、己の真理を貫くか
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到着=すでに頭痛の案件発生。

ちょっと訂正入ってます。呪い本の出番が増えました。

転移陣が発動して、帝都の転移装置に無事渡れたようだ。

ちょっと意外だったのは、そこが転移の部屋ではなく、開けた場所だった事。

いろんな人たちが、転移の順番を待っていた事だ。

ざわざわとしているのは、人込みの特徴だからだろうか。

それにしては、やけに興奮しているようなしてないような……?


「ここは……?」


「公共の転移施設だ。ここから俺たちが出て行かないと、次の人が使えない。出たらもう少し詳しく説明する」


一体ここは何なんだろう、周囲を見回せば幾つもの転移の術の陣が床に描かれていて、その前に術者が立っていて、順番待ちしている人たちから何かを受け取っている。奥の方では、装備品を片手に大騒ぎが起きている。あっちは何なんだろう……?

見回して動かないおれの肩を押しながら、ディオが陣の外に出る。


「はい、無事に転移完了しました、ようこそ、帝都へ」


おれらのいた場所の近くにいた術者らしき女性が、笑顔で挨拶をして来る。

それからおれの背後を見て、驚いて目を見開いた。


「オーガ……!」


「オーガだからなんか文句があるのか?」


驚いて動けなくなっている人を上から見下ろしながら、師匠が言う。

師匠、そのツラだと脅迫しているみたいですよ……なんでそんな怖い顔してるんですか、笑顔なのが余計に怖いですよ……と思いながらも、口に出せば殴られるので言わない。

しかしそう言った事に気付きやすいお師匠様。

何も言っていないのに、おれの頭をひっぱたいた。


「ってえ!」


「いまかなり俺に対して失礼なことを思わなかったか。ちびすけ」


「だからといって、思っただけで暴力をふるってほしくない。考える事まで止めさせるな」


師匠の事に食ってかかるディオ。おれはディオまで殴られるんじゃないかとはらはらした。

おれは慣れているからいいのだ。というかこういう扱いしかできないお方だとわかっている。

嫌なら防がなければならない、それだけの事になってしまうのが我らの師匠なのだ。

これで数百年、いろんな弟子を独り立ちさせてきた盾師なので、いまさら性格を変えろと言っても変わらないだろう。三つ子の魂百までっていうだろ、あんな感じだ。


「おお、ちびすけ、お前の彼氏はお前思いだな」


腹を立てて、ディオを転がすかと思った師匠だが、そうはならなかった。

おれとディオを交互に見て、にやにやしながら、よく分からない事を言いだす。ディオのやや黄色みがかった肌に、さっと朱が走った。

なんだ、と思ってまじまじと見ていると、剣だこのある大きな手がおれの目を隠した。


「あまりこの状態の顔をじろじろ眺めないで欲しい」


「あ、わかった」


「おお、いっちょ前に照れてるんだな」


「あなたもよけいな事を、どんどん言わないでもらいたい」


「すみません、そこを退いてもらえませんか? オーガの方。あなたがそこにいると、転移陣を発動できないんです」


「あー、悪い悪い」


おれとディオは転移陣から完全に出ていたけれど、師匠の片足が陣の中に入ったままだったようだ。術者の人に注意され、確かに悪いと思ったのか、師匠が軽く頭を下げて陣から出る。


「見ろよ、五つ角のオーガだ」


「本物かよ」


「百年に一回見る方がまれという、珍しい特徴だぞ」


「すごい装備だな、硫黄狼の毛皮なんて普通お目にかかれない……あれは、伝説として知られているななつ星の盾じゃないか?」


「ななつ星って扱いがとりわけ難しいっていう話の盾だろ?」


「すっげえ……あのオーガまさか百年前に帝都を救ったっていう伝説の?」


転移陣から離れるや否や、あちこちから色んな声が聞こえ始める。

それも師匠の事ばっかりだ。

あなたどれだけあちこちで、有名になる事してるんですか?


「師匠帝都で何かをしましたか?」


「最近は帝都に入ってないからな」


「……ナナシ、質問の仕方が少し違うと思うぞ」


「お、彼氏はどういう風に聞けば、欲しい答えが返ってくると思ってんだ?」


「だから彼氏と言われると困るんだ……ナナシがそうだと思っていないから。質問は、こうじゃないだろうか、“帝都で何か面白い事があった事はありますか?”だ」


「勘がいいな、気に入る質問だ。確か百年ちょっと前に、神殿が解き放っちまった巨大な竜を一匹殴って正気に戻して、生まれ故郷への道を教えてやった事がある」


「それ……か?」


「それだ、間違いなく。ナナシ、お前の師匠は簡単な事のように喋っているが、一般的に、封印されるような物を、殴って正気に返らせる相手は、滅多にいないからな」


頭が痛いと言う顔をするディオ。いろんな意味で一般的な物を知っているこいつが聞いて、頭が痛いと思う位、さらっとした喋り方だったんだろう。

おれはと言えば、師匠がとんでもない実力だとかいうのは今更すぎて、あんまり驚かない。

おれが疑問に思ったから、ディオはさらに頭が痛くなったんだろう。

どっちにしても、早くアリーズを見つけ出さなければ。


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