没シナリオ
毎日投稿と書いておきながら、翌日になってから20分ほど経ってからの投稿で遅れてしまい、申し訳ありません。
5年後――
無事、肉体の複製に成功したセーラ。
彼女は今、アングラス王国中央にある王都から東の果てに向け、飛行家魔法で向かっていた。
「思ったよりも、時間がかかってしまったわね」
幼い自分の行動に気が散らなくなるのは、20日もかからなかったが、それから体から抜け出すまでには5年もの歳月が必要だった。
本体の肉体年齢は現在10歳だが、この分身のセーラの肉体は
処刑された時の年齢と同じ15歳だった。
「まだ目的地までは時間がかかるわね」
時間の有効活用のために、セーラは読み取った世界のシナリオについて確認する。
この世界の名前は『流れ星に願いを込めて』というゲームを基にしているらしい。
平民の主人公は女神の加護を突如授かり、教育のために帰属の通う学校に強制的に入らされる。
そして、10年前に流れ星の日に合った男の子たちと再会する。
主人公は4人の男性と会話する時のみ、会話に選択肢が存在し、選んだ内容によって物語の展開が変わり、最終的に結ばれる人物が変わる。
シナリオは攻略対象4人分と最終シナリオの5つが存在し、合計した年月の残りがあと50年だった。
「あと50年で、それまでに私も世界を砕くほどの力を得ないと」
それほどの時間があれば、普通の人間が抱く目標は達成できるかもしれないが、セーラの願いは常人の願いではなかった。
※
セーラはすべてのシナリオを読み終えるとちょうど、目的の地に到達した。
そこは農業が盛んな辺境の地だった。
そしてセーラは人の手が加わっておらず、草が生い茂った小高い丘に降り立つ。
「ここが没ダンジョンのある場所ね」
『流れ星に願いを込めて』のシナリオは、王道的な恋愛模様だが、ほかの女性向け恋愛ゲームと異なる要素がある。
それは、RPG要素である。
主人公と攻略対象達が5人パーティーを組み、ダンジョンを始めとするフィールドを探索することができる。
ちなみにこのRPGシステムに関しては、ゲーム制作会社の別の部署が異なるブランド名で出している男性向けゲームのシステムを流用していることもあり、決して恋愛ゲームのおまけではないと高い評価をされていた。
そして、セーラが来たのは流用して組み込んだものの、シナリオ修正の影響で物語の整合性に影響が出るからと、なかったことにされたダンジョンだ。
「ここかしら」
マップを参照して目星をつけたセーラは、入口があるはずの丘の側面に水の魔力で構成された人間大の魔力弾を放つ。
着弾すると土砂を崩れ、隠されたダンジョンへの道があらわになる。
物語から消されたからといって、存在がそのものが完全に抹消されたわけではなかった。
そのままダンジョンを消してしまえば、世界に何かしらの異常が発生する恐れがあり、ゲームの製作スタッフはそのまま入口を塞ぐようにした。
この場所なら神の目もなく、強くなれると判断したセーラは、中にいるモンスターを恐れず、足を踏み入れた。