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神の力

 光が収まるとセーラの視界には星空のもと見たこともない建造物が乱立する光景があった。


「これは……」

「これこそ統一国家アングラス、世界統一を果たした偉大な国だ」


 セーラの知る一番大きい王城よりも数倍上回るものが何千もあり、道路はとても綺麗に整備されていた。


 時刻は夜のはずだが、そこかしこに明かりがあり、夜特有の底知れぬ不安を拭い去っていた。

 一見して、セーラの住む国よりも高度な技術を持つことは瞭然だった。


 景色が切り替わり、多くの兵が戦う戦場になる。


「我が国は魔法を発展させ、史上初めての世界統一を果たした。画一化した魔法体系は最下級の魔術師でさえも百人の兵士に匹敵する攻撃魔法を身に付け、すべての敵を打ち破った。魔法を極めた者になれば単独で国家の軍事力に匹敵すらした」

 

 端的に戦況を表すとしたら、『蹂躙』という言葉が正しいだろう。

 片方の軍が相手を圧倒的な魔法をもって殲滅していた。


「そして魔法は敵を打ち倒すだけでなく、癒しの魔法はありとあらゆる病気を癒し、民たちの寿命はおよそ70を超えていた。さらに天気を操り自然の実りを豊かにした。私が王として世界統一を果たしてより皆、平和を享受していた」


 今度は人々の暮らしの映像が断続的に切り替わりながら映る。

 男の言葉の通り、民の暮らしはとても豊かで幸せそうだった。


「とても素敵な国ですね」


 世辞ではない素直な感想だった。


「ありがとう。だが国は滅んだ」

「でも一体どうしてでしょうか。このような高度な文明を持つ国がなくなるなんて、どうやって」


 故国が数百年歴史を重ねてたどり着けるかもわからない理想的な国が、これほどまでに圧倒的な国力を持つ国がどうやって滅亡したのか。

 最初と同じような夜に建物がある映像に切り替わる。


「見よ、これがアングラス王国の最後の姿だ」

 

 そして、滅びが始まった。

 

「光?」


 空が明るくなった。

 夜明けではない。突如、空が一切の闇のない極光に覆われる。あらゆる人工物、自然の物よりも強烈な閃光が国を飲み込む。

 呼吸1つ――そう呼吸を終える時間しか、かからなかった。

 栄華を極めた国も民も、広大な自然のすべてがばらばらに砕け、さらに細かく塵になり、ついには消え去った。

 


「我らもただ黙して滅びを待ったわけではない。予兆を察知してありとあらゆる手段を取り生き残る道を探した」


 こらえる表情で亡国の王は語る。


「技術の開発や神の座す神域への侵攻を目的とした討伐計画も立てた。だがそれもすべて失敗した。私たちは敵の元に辿り着くことすらできなかった」

「……」

「そして私もこの時、国と共に死んだ」

「死んだですって……あなたは今ここで私と――」

「私もこの景色と同じただの記憶に過ぎないのだよ」

「それでしたら、会話することもできないのでは?」

 

 動く絵のようなものを残す技術があることは分かった。だがその技術でも、セーラと話すことはできないのではないかと疑問に思った。


「それについては、事前にいくつものパターンの映像を用意することでできるようになる。例えば君に『はい』と『いいえ』で答えられる2択の質問をするとする。私は『はい』の時と『いいえ』の場合の映像を作成し、さらに『わからない』や『どうしてこのような質問をするのか』といったイレギュラーな答えにも対応した映像も多数用意した」

「……つまり、私の答えに対応したものを何らかの方法で聞き取って判断しているということで、あなたはなくなった人物の肖像画みたいなものなのですね」

「そういうことだ」

「私の国にはゴーレムにあらかじめいくつかのパターンを組みこんで状況に沿った行動を起こす技術がありますの」

「理解が早くて助ける」

「一つ尋ねてもいいですか?」

「なんだ」

「なぜ、神はこのようなことをしたのですか。こんな情けのかけらもない非常な行いをするなど、普通では考えられません」

 

 断片的な映像であったが、別に神から嫌われるようなことはしているようにはなかった。


「平和になったのが気に食わなかったのでしょうか、相手が邪悪な神ならそういう考えになりそうですが」

「それに関しては答えは簡単だ。『神はこの世界に飽きた』からだ。

「え……?」

「どうした聞こえなかったのが? もう一度言おうか」

「いえ、しっかりと耳には入りましたが、とても信じられなくて」


 予想外の答えに不意を突かれた。


「そうであろうな。我らもその事実を知った時、怒りと共に困惑したからな」

「自分が作ったものなら思い入れのようなものがあるのでは?」

「確かにそういう感情も神にはあるだろう。だがな、そんなものは飽きてしまえば簡単になくなってしまう。いいか、奴にとってこの世界は本に綴った物語程度の価値でしかない。物語とは何度も読めば飽きるものだ」

「……」


 セーラは黙って聞きながら、相手の話を理解しようと必死に頭を働かす。


「ああ、もう一つ理由があったか。多分奴は私たちを再利用したかったのだ」

「……」

「私たちのところではリサイクル技術も発展してて、使われなくなった紙を新品の紙に作り直す技術があった。それと同じように神は恋愛小説を基にした私たちの世界を分解し、乙女ゲームを舞台にした君たちの世界を作るための材料にした」

「申し訳ありません。あなたの言っていることがよくわからな――」

「詳しくは後でわかる。いや、こちらが出すテストに合格したら教えよう」


「テスト……」

「テストといっても簡単なものだ。1つの質問にはいか、いいえで答えるだけでいい」


 セーラはこれから言われることをなんとなく察した。


「すでに察していると思うが……では、問おう。果たして君は世界を容易く滅ぼせる神を倒すことができるのか?」


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