ルート1 復讐の神
セーラを消し去ってから1日後――あくまで神の体感時間によるものだが――、神は趣味を楽しんでいた。
『流れ星に願いを込めて』というタイトルの乙女ゲームを模した世界と、セーラが力を得るために吸収した1冊の少女漫画の形をした世界を滅茶苦茶にされていたが、それは己の眷族である管理マシーンに任せており、
コンポがドラマCDを再生しているのを耳にしながら、ベッドに寝転り、好物のスナック菓子を食べていた。
「速く終わらないかなーー」
物語の中に登場する神よりも上位に位置し、複数の物語という世界を支配する、真の神。
その姿が、行いが、神と呼べるものではなくても、力は本物だった。
「暇ね。よし、久しぶりに要らないファイルを整理しようっと。まずは……」
菓子を食べ終わった神は椅子に座り、ノートパソコンを操作しだす。
ここ数年全く見ておらず、存在も忘れていたゲームソフトがインストールされていたことに気づいた。
「あ、そういえば、こんなのあったわね。昔はやりこんだなー。でも、なんであんなにハマってたんだろ。自分でもわからないわ」
ファイルにカーソルを合わせ、ごみ箱のアイコンが書かれた場所までドラックする。
すると、ファイルがゴミ箱に移動される。
「さて、次は……」
前兆はなかった。
何の前触れもなく、いきなり、ごみ箱より闇が生じた。
パソコン内にあるものでなく、部屋の中に有るごみ箱からだった。
「な、なにが……」
突発的な事態に対し、うろたえる神とは反対に、管理マシーンは素早く動いた。
「『テレポート』発動シマス」
使用したのは緊急離脱機能であり、相手そのものではなく、神とその支配下にあるものすべてを対象に別の場所に移動させた。
それにより、闇を生じさせたものだけが取り残される結果になる。
ほのかな光が部屋を包みこむなか、闇は増大し、ごみ箱から何かが這い出ようとしていた。
「何が起こったのよ……」
殺したと思っているので、闇魔法をしようとしていたセーラと闇が結びつくことはなかった。
「『テレポート』シマス」
通常なら神の許しなく、使えなかったが緊急事態なので自動的に発動した。神も異論はないので、抵抗せずにテレポートを受け入れる。
そして、転移する瞬間、はっきりと耳にした。
「殺す」
あらゆる創作物で使用される殺意の意思を示す言葉。だが、これほどまでに恨みがこもった『殺す』は聞いたことがなかった。
「ひ……」
自分が楽しむだけに物語という世界を作り出し、本を捨てるように、世界を捨ててきた神。
今こそ、その報いを受ける時が来た。
※
転移してすぐ、観測機能を作動させ、外にいる存在がどのようなものか理解した。
神は管理マシーンに向けて怒鳴りつけた。
「ねえ、どういうことよ! どうして『神』がゴミ箱の中にいたのよ! 私たちの領域に忍び込まれたっていうの!」
「外壁ニ綻ハナイノデ、ソノ可能性ハ、アリマセン」
「じゃあ、どうしてよ。 ……まさか! ゴミ箱内の人間の誰かが『アレ』から、神の力を与えられたの!?」
「ソノ可能性ガ高イト思イマス」
「最悪ね。宇宙が数万あって、始まりから終焉までの何百億年の歴史があっても、無作為で選ばれる可能性は1%にも満たない極小の確率なのに、よりによって私の所で起こるなんて……」
「ソレハ、違ウト推測シマス」
神の言葉を否定する。
「廃棄空間ヨリ誕生シタ神ハ、恐ラク、キャラクター名セーラ・クレイスダト思ワレマス。ランダムデ選バレタ主様トハ違イ、廃棄空間ニ逃ゲ込ンダ同キャラクターが、生命ヲ殺害シ神ニ相応シイ実力ヲ示シメタノダト思われます」
「セーラって、あの忌まわしい悪役令嬢よね。死んだはずじゃ……」
「イエ、主様ニヨッテ、殺サレヨウトスル瞬間、廃棄空間内ニ逃亡シテイマシタ」
「その言い方じゃ、あんたは知っていたみたいじゃない。どうして、教えなかったのよ」
「報告ヲシヨウトシタ所、『黙って』トイウ指示ガ主様ヨリ発セラレタノデ、報告ヲシマセンデシタ」
「私が悪いっていうの! そういうのは、もっと融通を聞かせなさいよ!」
そして、ああもうと言い両手で乱暴に頭をかく神。
「いい、悪いのはあんたよ。あんたがしっかりしなかったから、神が生まれるなんてことになってしまったのよ」
「ハイ」
「これから、私はあんたの尻拭いをするんだから、あんたはサポートしなさい」
「ワカリマシタ」
乱暴に机をたたく神。
「後が大変だから普段ならやりたくなりけれど、相手が同じ神だというのなら、こっちも本気でやるわ」
パソコンのモニターに映る、相手に向かい、宣言する。
「私の全力で、一片の塵なく、跡形もなく消し去ってやるんだから」
この拙作は、2つルートを考えており、この1つ目のルートはリメイク前と同じ展開になります。ただ、2つ目を見ないと明らかにならないこともあるので、どうか両方とも見ていただければ、幸いです。




