異星人との遭遇
「ん……」
セーラは目を覚ます。
「ここは……どこかしら」
周囲を見渡すと白い雲と青い空が視界に移る。
建物は一切見当たらなかった。
「え、なに」
訳が分からずふと、下を見ると、
「ひっ!」
遥か下に建物が並んでいるのを見て、自分が宙に浮かんでいることに気づいた。
視線の先に見慣れた王城があり、それが手のひらほどの大きさであったことから、かなりの高度であることを理解する。
そして、原因不明の浮遊状態が解けて落下すれば、命が助からないことに恐怖した。
「ど、どうしてこんなことに……確か……」
セーラは自分に起きたことを思い出す。
「うう、ああああ……」
人々から罵倒や歓喜の声を浴びせられながら炎に全身を焼かれた記憶が、フラッシュバックした。
セーラは両手を交差して自らを抱きしめ震える。
1時間ほど経過し、少しだけ落ち着きを取り戻し思考に余裕ができたセーラは、考えを口にする。
「じゃあ、私は焼かれて死んだの……」
「いや、違うぞ」
男の声がした。
前後左右どころか三百六十度すべてにおいて人などいないはずなのに、自分のつぶやきに返答する者がいたことに困惑し、
「誰かいるの?」
恐る恐る尋ねると、
「ああ、ここにいるぞ」
再びの声。よく聞くとセーラのすぐそばから発せられたものであることに気づくが、近くには何も見当たらない。
どこなのと問いかけようとセーラが口を開こうとした瞬間、セーラの腹部から黒い何かが飛び出した。
「まずは初めましてと言っておこう。恐らく君の胸中にはいくつもの疑問が渦巻いているかと思うが、落ち着いて私の話を聞いてほしい。そうすればおのずと疑問は解けるはずだ」
人形のような作り物めいた目がついた黒い物体が話しかけていた。
「あなたは何?」 明らかに人間ではない、生きてるかすらわからない物体の言葉に、セーラは表情に出るくらい露骨に警戒した。
「ふむ。この反応パターンになったということは、この姿のままではコミュニケーションに支障をきたす可能性があるということか。少し待っていてほしい」
セーラの問いには答えず、勝手に話を進める。
『投射機能ヲ行イマス』
今度は同じ物体から感情のこもらない別の声がした。
すると目から光を発し、光の当たる空間に一人の男の姿が現れる。
「そうだな。次はこちらの自己紹介といこうか」
金色の髪と瞳を持つ細心の美丈夫が言う。
「私はアングラス王国第35代国王リードネア・アングラスだ」
「アングラス王国?」
眼前の男が国王を名乗ったことよりもまず、国名が気になった。
35代も長く続いた国なら聞いたことがあるはずだが、歴史の授業でも耳にしたがなかった。
「ああ知らなくて当然だ。私の国はここではない別のところにあったからな」
「別……ですか?」
「そうだ。この文明レベルでは理解するのは難しいかもしれないな。とにかく、君の知らない遥か遠くから来たと思ってもらえればそれでいい」
まったく意味が分からなかった。セーラは克明に関する疑問は一先ず置いておいて、別の話題で、相手のことを知ろうとした。
「はあ……そうなんですね。ところでその遠くの国王様が、なぜ私のところへお越しになったのでしょうか」
「うむ。その問いへの答えだが、君にお願いがあったからだ」
「願い? ……あの、もしかして私を火から救ったのはあなた様ではないですか?」
目の前の不思議な存在が、ここでおける不思議な出来事を起こしたのではないかと思ったからこその問いだった。
「ああ」
「ではこの浮いている状態も?」
「うむ。ちなみに落ちる心配はないので安心してほしい」
「そうだったんですね。 ……命を救っていただいて、本当にありがとうございます」
「例には及ばん。純粋な善意ではなく、君に叶えてほしいことがあったのでな」
ここでようやく、命が助かったという実感が出た。
――生き延びることができた。だからこそ、
「殺せる」
自分の苦しめたやつらを殺せる。思わず口から出た言葉に対し、
「ほう、いい顔をしている。これは好都合だ。どうやら君の願いと私の願いは同じものらしい」
にやりと男は笑った。
「え、同じですか」
「ああ、私もすべてが滅ぼされようとする中、奴への憎悪を抱いた」
「奴とは!? あなた様は知っていらっしゃるんですか? 私の体を操り処刑させた存在のことを!」
「ああ、といっても神のことは漠然としたことしか分かってないがな」
「私の敵は神なのですか! そんな創造主様が敵だったとは!」
「それは違う。君の言う神とは君のところの宗教の神で、奴が物語に沿って生み出した存在でしかない。敵は偽物の神を生み出した本物の神だ」
「あの、禄にお礼も差し上げておらず失礼なのは承知ですが、どうか知っていることをすべて教えてくださいませ!」
恩人の前だったが、敵を知る千載一遇の好機を前に、セーラは焦っていた。
「教えることはできるがその前に、一つ聞きたい」
身にまとう雰囲気が変わった。突き刺さる視線にセーラは息を呑む。
「君の憎しみはどれくらいのものだ? 果たして、些細なことで消えるようなちっぽけなものではないか?」
「違います! 私はあの炎の中で誓いました。必ずやこの痛みを与えた存在に、それに与する者共に復讐してやると。私は決してあきらめません!」
「口では何とでも言える」
セーラの必死の剣幕に対し、あくまで男は冷静だった。
「では、その憎しみが本当であるか証明してもらうために、一つテストを受けてもらいたい」
「どういったものでしょうか」
「内容そのものは簡単なものだ。映像……分かりやすく言えば、私が実際に見た光景と同じものを君に見てもらう。了承してくれるか」
「ええ、それで私の仇を教えてくださるのなら」
怪しい話ではあったが、即答した。何としても復讐する相手のことを知りたかったからだ。
「わかった」
そして、再び無機質な声に代わる。
『ファイル1ヲ再生シマス』
目玉が周囲に光を放つ。
「これから君が見るのはアングラス王国における歴代の王の中で最も愚かな王の記憶だ。国も民もすべてを守れず世界を神に滅ぼされてしまった光景だ」
読んでいただきありがとうございます。
この話から数話はリメイク前にはなかった展開になります。