悪役令嬢VS攻略対象 その② 光の王子
ルーカスの心臓へレイピアを突き刺したセーラ。
「くっ、『和が元に来たれーーアポース』」
対象物を自分の元に引き寄せる魔法で地に倒れ伏せた体を聖女の所へ運び、
「リナ、蘇生魔法をお願い」
「お任せください。『リカバリー』」
淡い光が包み治療を開始する。
状況の変化したこともあり、ランは一先ず、聖女とルーカス、それに2人を守るように立っている王子とリックの所に交代する。
「で、次はどうするんだい王子様」
ランが問う。
「次は私とリックが行く。お前たちが戦っていたおかげで、加護の第2開放までができるようになった」
「ぼくは、第3まで準備はできたよ」
「そう、やっぱり王子のは強力な分第3までには時間がかかるか……。それで、ぼくはどうすればいい? 先ほどと同じく援護する?」
パーティーの面々は各々方法こそ違うが、それぞれに合った鍛錬を課し、ひたすら自分を高めていた。
そんな彼らの中でも王子の強さは頭一つ抜きんでていた。それは努力の差ではなく、加護の適性が高いからだった。
「いや、ランはこのままリナとルーカスの警護だ。邪神から2人を守るんだ」
「ああ、分かったよ」
王子たちの相談をセーラは何もせずに見ていた。
彼女の今の狙いは、自分の操る意識がいた精霊たちの領域に辿り着くまでの時間稼ぎであり、王子たちの長考は歓迎する展開だった。
「攻撃を仕掛けるぞリック」
位置は王子が前衛、リックが後衛だった。
「『スキップ――64 times』」
「行くぞ! 『ライト・スピード』」
セーラは加速と防御のシステム魔法を使い、王子は光の精霊の加護が第2段階以上になったときにのみ使える技を発動する。
奇しくも二人は自らのスピードを加速する術を使い、武器による攻撃を選択した。
王子が聖剣で切りかかり、同時にセーラもレイピアを構え――
「くっ!」
――ようとした所に突如バリィという音がする。
それはセーラの体に事前に透明の膜という形でまとっていた防御のシステム魔法「ファイアウォール」が、砕けた音だった。
セーラは、眼前に王子がいることをに気づいた。そして金色に輝く聖剣が肩口にあった。
(反応できなかった!)
動作から反射速度まであらゆる動作が64倍に加速したセーラが見切れない速度で攻撃された。
防御魔王の『ファイアウォール』は多重構造であり、8割がた破壊されたものの残りがあったのでダメージはなかったもが次また受ければ、防ぎきれない。
(いくら異名が光の王子だからって、実際に光の速度で動けるのは、考えた人の頭、大分おかしいのじゃないかしら)




