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革命の思考者達  作者: 神裂裕真
6/8

無知抗論と思考者達

「ううううぅ、ひっく、ひい、うええええええええええええええええええええええええん!もうやだっ!」


私は今、泣いている。

原因を探るとなると二か月前まで遡ることになる。

~~~


二か月前

父から聞いたところもうすぐで幼稚園に入園するようだ。


楽しみ。


そんなことを考えていたことを少し後悔することになったのだが。


聞いてから二日後。母さんと入園の準備をすることになった。

揃える物はたくさんあった。

お弁当箱、水筒、はぶらし、コップ、うわばき、上履き袋、運動靴、傘、レインコート、長靴

はさみ、のり、クレヨン、あぁ!覚えられないよ!


まあ、当然覚える必要はないのだろうが、無駄に知識を増やそうとしてしまっている自分がいるらしい。


買い物には出かけなかったが、家でそれぞれを鞄にいれた。


母さんに警告されたが、自分よりも頭のいいひとはいないと、ちょっとした悪ふざけがあってもあまり気にしないこと。まあ、色々あった。


僕が母さんに説明されたことは、まるで、僕以外の幼稚園に入学する子達が僕と同じ人間ではないように思えた。おじさんには君が特別なんだ。と言ってきた。・・・・・そうなのか。


入園する日まで、好奇心と不安感が混じり合って嫌な気分になってきた。

入園当日、僕は壊れていた。

たまにあるのだ。この小さい頭で考えられることを大きく上回った場合に起こる。

僕は今全く動かすことができない、体も頭も。

だけど今、僕の体は母さんと一緒に歩いている。

そして母さんと話している。

だけどそれは僕ではない。僕の体にいる「おじさん」だ。

「どんな子達がいるんだろうね!楽しみだよお母さん!」


「気が合う子がいるといいよね。楽しそうにしているの分かるもの」


一応母さんに言っておきたい。それは僕であるが僕ではない。30超えたおじさんだから

ね?

ただちょっと元気だって思ってるだけなのかな?

ちなみに自分はその時の記憶を持っていない。

壊れているのと全く動けないのは関係ない。おじさんが僕の体を使っているからだ。

壊れていた僕は幼稚園に着く前には完全に治っていた。

幼稚園の前には他の子供達や先生達が待っていた。皆で喋り合っている子もいるようだ。

「・・・自分を信じろ、混ざれなかったら死ぬと思え」

そんなおじさんの声を聞き、ゾッとした。

いち早く置いて行かれない様に三人ほどの集まりに突撃する。

そして気付いた。

・・・何を言ってるのか全く分からない。

いや分からない訳では無いのだが、文としてきちんと話していない。少しも対話できそうな状態ではないということだけ分かった。

助けてというメッセージを目でおじさんに送った。

「・・・」

おじさんはこちらを見ていない。

「おじさん助けて」

おじさんはこちらを見ていない。

どうやら見はなされたようだ。どうしよう、死ぬのかな。?

目の前でグズグズしているのを見て三人のうち一人が話しかけてきた。

「おなまえなんていうの?」

「か・・・鏡 勇生・・・」

「ゆうせって言うのか!」

「いや、ゆうせいなんだけど」

「よろしくなゆうせ!」

普通に大人と世間話をできる僕にとってはただただ苦痛であり、人の話しをきちんと聞かない子供とは初めて話した位だ。

「私だったら逃げるな」

とめずらしくおじさんが遠まわしに褒めてきた。

「・・・死にたくないからね」

本音を言ったのだが、

「死にはしないさ、居場所が無くなるだけだ。」

それって子供にとっての死じゃないか?と考えようとしたが、やめておいた。

「君の名前は?」

「ぼくか!ぼくはあらただ!あらたあらたあらたたたたぁ!」

「あぁ、あ、あらたっていうのか」

対応しづらい・・・どう反応するのが正解なのか全く分からない。

いやきっとこれが子供という訳ではないと信じよう。他の人とも話そうか。

といってぼくは近くに一人でいた男の子に声をかける。

「君、名前は?」

「え?僕?さかい・・・君は?」

「僕はかがみ、かがみゆうせい」

「無理、長い」

「え?」

「かがみでいい?」

「ああ、そういうこと。いいよ」

「かが・・・えっとなんだっけ?」

「かがみ」

「か・・・なんだっけ?」

「かがみ!」

「あぁ、そうだったね・・・・」

「・・・」

「あの・・・」

「忘れた?」

「・・・うん」

記憶力大丈夫!?幼少期ってなんも頭に入ってないからどんどん知識入っていくんじゃないのか!?

忘れっぽすぎるのレベルではない気がするよ!

彼はうつむいているので、少し離れる。

大丈夫か幼稚園児!そう叫びたいほどの気分である。

・・・もう理解するのをやめて無心に流されながら生きていこうか。

そんな感じに思い、そのままのスタイルで入園し、クラスで自己紹介が行われた時だった。

「お前、変な奴だな!!変だ!変変!」

「何か変なこと言ってるもん!!」

「変な奴、嫌い!」

「変!変!変!」

「へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!へーん!」

こんな感じに変コールを受けているわけだが、何故こうなっているのか分からない。

でもこういう事態はたまにある。

原因は一つしかない訳だが。

「・・・・おじさんか」

何故か周りにおじさんの気配が全くない。

何かをしくじったのか、それとも何かの用事があるのか。

ともあれこの状況を一人で解決しなくてはならないらしい。

さて、どうしようか。

「・・・どこが変だった?」

「なんか知らないことばっか言ってた!」

「やこ!とか完全な子供とか!」

「やこ」と「完全な子供」か・・・全く知らない単語だ。僕としては自分でそれを話しているのだから普通は知っている知識なはず、それで分からないということはおじさんが知っていて、僕が知らないことらしい。

これは後でおじさんに聞かないといけないな。

こんな感じに考え込んでいると、また変コールが始まった。

そしてそれから一ヶ月後。言うまでもないが虐められていた。そしてすぐに僕はこの幼稚園から去った。

そしてこれまた一ヶ月後。僕は4回の退園を経験していた。

今は自分の寝室にいる。おじさんが話しかけてこない日常というものを体験し、自分の中で孤独と戦っていた。

「もう幼稚園行かなくてもいいんじゃないかな・・・というか行きたくない。」

もう最近はしばらくおじさんを見かけていない。この二カ月ほど全く話しても、見かけてもいない。

寂しくなっているのだ。僕はこれまで一日たりとも離れたことはなかったのに、この二ヶ月間全然姿を捉えることができない。

・・・・もしかして、成仏してしまったのだろうか、もしくは僕の友達を作れない不甲斐なさにどこか違う人の所に行ってしまったのかもしれない。

でも学校の自己紹介の時は戻ってきている。

何か意図があるのかもしれない。

でも何がなんでも寂しいのだ。

おじさんが居ない生活では、眠れない時にすることが無い時など話し相手になってもらったり、いつも分からないことを聞いてみたり、迷ったことを相談したりしている。本当におじさんがいないと生きていけないかもしれない。それ位の存在だったのだ。案の定今こうして常におじさんのことを考えている。

でも・・・・

おじさんにとってはそうでなかったのかもしれない、という仮説が嫌に現実味を帯びてしまっている。

こうやって何度も周りとの交流を断たれているのだから。

だけれど一番最初に行ったところが一番良かったのかも知れない。

少し日本語をきちんと話せる程度には勉強をしている者達が多かったので、僕のことを変と言った。だが他のところではそうもいわれない。最初にあそこに行っていなかったら全く理由が考えられなかっただろう。そう考えると、変と思われても、あそこで必死に生活していくべきだったのかもしれない。

こんなことを一日中考え、僕は泣いていた。

「ううううぅ、ひっく、ひい、うええええええええええええええええええええええええん!もうやだっ!」

声にならないような叫びをしながら、これからのことを考える。

ベッドの上をグルグルと転がり、体をいろいろ動かしていた。

「幼稚園も保育園も絶対もう入らない!」

子供が駄々をこねている様だった。幼児らしさのない彼でもこんな感じになることはある。

そして泣き疲れて、ベッドに倒れこむ。

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