乙女ゲーム仕様なんて聞いてません、お断りします!
私には、前世の記憶がある。
―――なんて言うと、厨二みたいだけど、本当にある。前世の私は深刻なオタクで、女の子を落とす恋愛シュミレーションゲーム、つまりギャルゲをしていた。ちなみに今も前世も性別は女。たまにる、男性向け作品が好きなタイプのオタクだったようで、勿論当人はノンケだしノーマルカップリングしか好まなかったけど、女の子キャラを可愛い俺の嫁と言っていた。
二度目の人生やったー!と喜んでいたけど、よくあるファンタジーの世界に転生なんてそんなことはなくて、ここは普通の現代日本。なんで前世の記憶があるのか、そればかりは一六年間謎に包まれたまま。本当に不思議な現象だと思う。
今の私は前世とはほぼ同一だけど別の存在のような感じで、どんな感じなのか説明しにくいけど、要は、性根はオタクのままということだ。アニメは見るし漫画も読む。ゲームは初期費用が高くつくのでまだ手が出せていない。そしてやっぱり女の子キャラが可愛い。幸せになってほしい。付き合いたいわけじゃないけど養ってはあげたい。
そんな感じで、いい感じにライトオタクに落ち着いていると私は信じている。
そして神様とやらは前世も今も同じ試練を私に与えたいのか、私は今も昔も、男という生き物がどうも苦手だった。男性恐怖症というわけではない。そんなのを自称してしまったら本当にそうである人に失礼だ。男の人を目の前にするとちょっと挙動不審になったり、近寄りたくないとおもったり、その程度。それに世の中の男全員が駄目というわけではないはず。多分。どちらかというと男性嫌悪症といった方が正しいかもしれない。
どうしてこうなってしまったかというと、それは私のこの16年の人生が物語っている。
私の父親はろくでもない男だった。何かあるとすぐ怒鳴り、物に当たる。酒癖も悪く、いつも母に対して怒鳴り散らしていた。私のことだってすぐなにかあると怒鳴る。暴力というほどのものではないが突き飛ばされたこともあったし、躾と称して押入れに閉じ込められたり、家を閉め出されたりしたこともあった。そんな私を見かねてか、私が7歳のときに母は離婚を決意。母は、一人で私を育ててくれた。父親に関して良い思い出なんてない。
母と二人になってから、小学校は転校し、名字は母の姓の秋篠に。小学校では男子に苛められた。確かに可愛いものだったかもしれないが、いつもからかわれて髪を引っ張られるのは決して気分の良いものではない。そんな私を案じてくれる優しいイケメン男子(もう名前も顔も思い出せない)もいたが、どうやらその男子は女子から非常にモテていたらしく、彼が私に優しくすると今度は女子からも苛められた。男と関わるとロクなことがないことを知り、この頃から男子と関わることが嫌になってきていた。こうして私はめでたく不登校になり、一対一体制の塾へ通って勉強し、母の勧めで受験をし、女子中へ入学した。
中学生になり、学校生活は一変した。とても楽しかった。どうやら世間一般で言うお嬢様学校だったらしく、女子特有のドロドロとした人間関係は多少あったが、それでも今までよりかは断然平和だった。男子がいないだけでこれほど幸せに過ごせるのかと私は感動した。
そして中学三年生の春。私は生まれて初めて変質者に遭遇した。あまり思い出したくはないが、まあなんというか変質者だった。生まれて初めて警察のお世話になった。それ以前にも変なオッサンに絡まれたり変なオッサンにナンパされたりと嫌な出来事にちらほら遭遇はしていたのだが、これが決定打となり男が完全に駄目になってしまった。どうせロクな奴いないんでしょ、ということである。
と、まあ男に関してロクな目に遭わなかった上に女子ばかりの空間で過ごしていることが私の男が苦手な要因だろう。ちなみに以上の出来事は今の人生の話で、前世もなかなかに大変だったけどこれよりはマシだと信じている。前世ではそんなこんなで、二次元に逃避した結果女の子可愛い!私が養う!に進化した。
男が苦手なだけだが別にコンビニの店員まで憎いわけではないので、例えば身近なところで関わらなければいいやという軽いノリではある。今は女子高だったのでそれで平和に過ごせていたし、男と関わることのない和やかな生活だった。
しかし、それはもうすぐ終わりを告げる。
以前から母が男の人と会っていたのは知っていた。なんとなく良い雰囲気なのも知っていたし、そういう予感もしていた。
高校一年生の夏休み。ついに、母の口から「再婚」という言葉が発せられたのだ。母には幸せになってほしいけれど、どこの馬の骨か分からない男なんぞに母を取られたくないという、相反する気持ちが私の中で鬩ぎ合った。再婚相手は一度だけ見たが、確かに悪い人ではなさそうで、真剣に母を好いてくれているように思えた。でも、再婚相手には息子もいるようで、私が今更見知らぬ男と暮らせるとも思えなかった。母もそれを知っているからか、随分と遠慮していたようだし、私が嫌と言えば再婚しないとまで言った。
結局、母はいつも私のことを一番に考えてくれるのだ。そんな母に感謝してもしきれないし、母にも幸せになってほしかった。私が重荷には、なりたくなかった。
最終的には、「再婚してお母さんには幸せになってほしい。でも、私は今すぐには家族のように接することはできないから、時間を下さい」という結論に落ち着いた。正直義父とも義兄とも仲良くする気はあまりないけど。母の手前仕方なく。
こうして私と母は義父と義兄と暮らすために、引っ越すことになった。勿論、私は転校。きりがいいから、高校二年生の4月、新学期に予定を合せることになっている。春休みに引っ越したり、新生活の準備を済ませたりする予定だ。名字は高校卒業までは秋篠のままでいいらしい。
そしてどうやら引っ越し先は、ちょうど小学生の頃に住んでいた場所らしく、母は懐かしいねと笑顔で思い出を語っていた。私にとってはいじめられた黒歴史の場所でしかないけど。でも、私はもう高校生だし、昔みたいなヘマはしないと思う。だから大丈夫だと自分を奮い立たせた。
――――この時の選択が、大いに間違いだったことにまだ気が付いていない。
もしくは、これも予定調和だったのかも、しれない。
▽
「はい、転校先のパンフレット。ちゃんと説明聞く暇なかったでしょ?ごめんね、お母さんの都合で急かしたいみたいで」
「ううん、気にしてない。ありがとう」
出発前日、母から転校先のパンフレットを貰った。
ほんとにぎりぎりだなと思いながら、ろくにちゃんと確認してなかった学校の情報を確認しようと思い、段ボールが積まれた部屋に持ち帰った。
床にごろんと寝転がり、パンフレットを開く。
「あ……………え?」
何度見返しても、そこには『雪治学園』と印刷された文字と、見慣れた、いや、前世で飽きるほど見てきた制服を着た女の子がプリントされている。
これで一六年間の謎が解けた。
―――――私は、何もないけど前世の記憶があるのではなくて、どうやら前世一番やり込んだゲームの世界に転生していたみたいだ。
『ポルカドットの雪模様』は私が前世愛してやまなかった、勿論ギャルゲ。
雪治学園を舞台とした普通の学園物だけど、とにかくボリュームがあるのが特徴で、攻略可能キャラが多い。高校二年生のときに雪治学園に転校してきた主人公は、自分のパラメーターを上げながら、一年間で女の子と出会ったり、恋をしたりする。ちなみにそのパラメーターで出会えるキャラが左右される。これが人気作品で、ファンディスクが出て脇役の子が攻略出来たり、隠しルートがあったり、とにかくできることが多い。それが魅力だとも言われていた。
攻略キャラは他のギャルゲに比べ多いが、一番のメインヒロインは同じクラスの三人。
桃井春香。優しくて面倒見の良いいかにもという幼馴染ヒロイン。
小倉涼。クラスメイトのクールな一匹狼。
亜輝・エーデルシュタイン。ドイツ人の父を持つハーフ美少女で、二次元によくいそうなお嬢様。
この三人はエンディングも多く、後日談も収録されるなど優遇されていた。
私は自分の名前にも顔にもゲームで見た覚えはないので、おそらくモブだろう。ただ、転校時期が主人公や亜紀と被っているのが少し気になるけど。でも私の設定は明らかに亜紀ではないし、女だから主人公もあり得ない。二人とは違うクラスになるのかな。
転生しただけあって、もうゲームはこの世界に存在せず、攻略サイトも何もないので、自分の記憶に頼るしかない。続編の方は怪しいが、本編は何周もやったのでバッチリのはずだ。
大好きだったゲームに転生なんて少しテンションが上がる。モブなだけあって気付く要素がまるでなかったので、今日まで気付かなかったのだろう。遠目で、少しだけでいいからぜひともヒロインの皆を拝んでみたいなあと、少しだけ浮かれてしまった。
こんな展開があるのなら引越しも悪くないと思い直し、明日の出発に備えて寝ることにした。
▽
さて、目の前には大きな一軒家。ここが今日から私の家らしい。今まで義父と義兄は二人でこんなでかい家に住んでいたのか、と少し驚いた。というか知らなかったけどもしかして義父は金持ちとまではいかなくても小金持ちぐらいなのではないだろうか。
義父の名前は「徹」、義兄の名前は「晃」。苗字は……忘れた。今更聞けないのであとでこっそり表札を見ることにする。
母がチャイムを押すと、私達の到着を待っていたのか、義父がすぐに出迎えてくれた。
「二人ともいらっしゃい」
「お邪魔します」
「ただいま、でいいんだよ?」
「ふふ、そうね」
幸せなお母さんを見るのは嬉しいけど、目の前でリア充を繰り広げられると少し心に刺さった。彼氏いない歴イコール年齢には刺さった。これから毎日のように見るかもしれないのだから、我慢だと言い聞かせつつ、母の後ろをついて、会釈をしてから家へ上がった。
聞いたところによると、晃さんは学校らしい。春休みなのに忙しいなんて大変そうだと思ったけど、所詮他人事である。義兄に興味があるわけではない。
……それにしても、母と徹さんはいちゃいちゃしたいだろうし、私邪魔な気がしてきた。いや気がするじゃなくて邪魔だと思う。
居づらさしかなかったので、一通り場所などの説明を聞いて自分の新しい部屋を確認してから、散策してみると言って家を出た。勿論行くあてなどない。
しばらく歩くと、よくありそうな公園が見えてきた。なんか知っている気がする、と、引き込まれるように、私はその公園へ入った。知っているのは気のせいかもしれないけど。
「……もしかして此処で遊んだことあるのかな」
ブランコ、すべり台、シーソー。なんだか懐かしい気がした。
辺りを見回すと、ベンチに座っている人がいる。雪治学園の制服を着ているので、学園の生徒だと――――見ていたら目が合った?知らない人、しかも男と突然目が合い硬直する。だめだじっと見てたら怪しいからひとまずここは退散してと、動揺していると、思いがけぬことに向こうが口を開いた。
「ちーちゃん?」
「はっはひ、秋篠千華ですがっ!?………は?」
どうしよう噛んだ、落ち着いて私、本当に。って、今、この人はなんて言った?「ちーちゃん」って私のこと?そうやって呼ぶ人、いたっけ?
「あっ、やっぱりちーちゃんなんだ!面影があるかなーってぐらいだったから合ってるか不安だったけど、良かった」
謎の男子生徒は嬉しそうににこにこと笑っている。待て待て待て、久しぶり同年代の男子、しかもきっと同じ学園に通うであろう人と話してるから頭ちゃんと回ってない。この人は誰だ……あれ……でも、なんか見たことがあるような……。
「はるくん」
ぱっと思い付いた単語を口にする。当たりだったのか、相手は少し驚いていた。
「桃井春之だよ。ちーちゃん、覚えててくれたんだ?」
「桃井、春之……はるくん……」
驚くことに、私は、確かにこの男子生徒を知っている。今の今まで忘れてたけど、確かに知っている。
ん?……待って、よく考えろ私。
「はるくん」はなんとなく心当たりがある。でも、「桃井」春之?いや、私が過敏になっているだけかもしれない。そんな考えも束の間。
「ちーちゃん、久しぶり。また会えて嬉しいよ」
はるくんの指が頬に触れた瞬間、思考回路がショートした。
「あ、っと、え!?わ、私用事あるから!じゃあね!!」
脱兎のごとく公園を飛び出した。さ、さ、触られた……男子に……。
何も考えたくなくて、家まで全力疾走。
―――男が苦手とか以前に、男に対する免疫が皆無になっているのではないかと思った。私は、春休み明けから、共学の高校でやっていけるのかな……。
▽
その日の夜。
「お母さん、『はるくん』って覚えてる?」
「ああ、春之君のこと?千華、小学生のとき仲良くしてたわよね~」
荷物整理の傍ら、ダンボールから手際よく黒歴史卒業アルバムを取り出し、私に見せてくれた。言うまでもなく不登校以降のページに私はいない。
とりあえず、「はるくん」が、小学生のときに優しくしてくれたイケメン少年であったことが発覚した。なるほど、アルバムの写真を見れば、確かに面影はある。
桃井春之という名前だったようで、だから「はるくん」と呼んでいたみたいだ。ただ、学校では恥ずかしいから桃井君と呼ぶことにする。それに、また親しくして女子に邪見に扱われたらいやだし。本当に小学生時代はトラウマだ。
「そうそう、春之君のお家、ここの隣らしいわよ。また挨拶に行ってみたら?」
「ああ…うん」
もう会ったけどね。逃げてきちゃったけどね。
「千華は覚えてないでしょうけど、春之君は幼稚園も一緒だったし、昔っから一緒だったんだから。幼馴染みって感じに近いかもねぇ。まぁ、しばらく会ってなかったけど」
母は私の心情も露知らず、桃井君のことを色々と教えてくれた。それにしても、「幼馴染み」という言葉が引っ掛かる。
母との会話を適当に切り上げ、ダンボールの巣窟になっている自分の部屋へと引き上げた。
「桃井、か……」
桃井といえば、ゲームの主人公の幼馴染みも桃井だ。ちなみに桃井春まで同じ。家が隣で名字が桃井。これがどういうことを示唆するのか。確かに、桃井君の雰囲気は春香に似ているし、主人公は春香を幼い頃は「はるちゃん」と呼んでいた。でも、まだ決め手ではない。
桃井君に聞けば早いかな。桃井っていう名字が他にいるかって。聞けば早いけどどうやって聞こう、いや聞けない。むしろ逃げた手前目も合わせられない。やめよう。やめておこう。新学期が始まれば嫌でも分かる。
雲行きが怪しくなりつつ、だからといって何かできるわけでもなく、春休みはだらだらと過ごしてしまうのであった。
▽
ついに転校初日。つまり、新学期初日。今日は始業式とLHRだけで、転入生の私は始業式の間校内案内や説明を受けるらしい。なので、登校時間は少し遅め。
家から徒歩15分。息をひとつ吐いて深呼吸。ゆっくりと、校門をくぐった。
雪治学園―――初等部から高等部まである名門校。金持ちが多いが、学費が特別に高いというわけではなく、試験を通れば平民でも入学できる、らしい。学校設備は充実しており、自由な校風が特徴。自由な分、問題を起こしたときは厳しく怒られるとか。まあほぼゲーム知識だから実際はどんなもんか分からないけど、なんとも二次元らしい設定の学校だと思う。
校内を見渡しながらさっそく職員室へ向かう。かろうじて迷子にならずに行けた。
職員室へ入ると、応接室に通された。応接室には教頭と呼ばれた頭が少し寂しい先生と、男子生徒がいた。
「秋篠さんかな?ようこそ、雪治学園へ」
教頭先生は物腰柔らかで、にこやかに歓迎の言葉で迎えてくれた。男子生徒もこちらを向く。日本人らしくないが整った顔立ち。ハーフだろうか。――という疑問は、次の言葉で解決されてしまった。
「彼も今日からこの学園に通う転校生だ。秋篠さんと同じ2年生だよ」
「竜輝・エーデルシュタインだ」
「………秋篠千華、です」
あ、これ、だめなやつかもしれない。
まだ憶測の域だと言いたいけれど、今日この日に転校生で、名字がエーデルシュタインなんて、ゲームの、亜紀と全く同じなのだ。ただし、目の前の生徒は男である。
法則が見えた気がしたが、まだ断言はしたくなかった。
「じゃあ、これから校内を案内して回るよ。一度で覚えるのは無理かもしれないけど、なんとなく把握しておいてね」
「はい」
「分かりました」
悶々と悩んでいる間に教頭先生はどうやら有難い話をしていたようだ。これから校内を案内して下さるらしい。話を聞いてなくて、少しだけ申し訳ない気持ちになった。
応接室を出て、校内を見て回る。購買とか食堂とか、色々あるらしい。さすが雪治学園。思ったより時間はかかったけれど、一通り説明は聞いた。
校内案内の最中、エーデルシュタインとは一定の距離をとって歩いた。彼はずっと黙っているし、仮に亜紀の性格そのままだとしたら偉そうなくせに有言実行できる、女の子だとそんな所も可愛いと思えるのに男だと憎しみしか沸いて来ない性格をしているのだろう。そもそも前提として私から話しかけるのは怖いし、難易度が高すぎなのだ。
「―――と、まあこんな感じかな。これから学校生活で度々使うだろうから自然に覚えるよ」
教頭先生が締めの言葉を言い、再び応接室へ戻ってきた。私たちがずっと黙っていたのに、その代わりにずっと喋り続けていてくれた気の効く人だ――
「じゃあ、LHRが始まるまでは応接室で待っていてもらってもいいかな?担任の先生が迎えに来てくれるだろうから」
―――と思ったのも束の間、黙ったままの私たちを置いて職員室に戻ってしまった。
私にどうしろと。沈黙がとても重いし、気まずい。
二人とも何も喋らないまま。
▽
結局沈黙が破られることないまま、担任の先生が迎えに来てくれた。
そのまま教室に連れていかれ、挨拶をする。
ぱちぱちと拍手でクラスに迎え入れられ、私は窓際の一番後ろの席に座った。
……教室に桃井君がいた気がするけど、気のせいだということにしておこう。
私の前の席は男子だった。ちなみに横はエーデルシュタイン。正直しんどい。
しかもちらりと見た分では顔が整っていた。私は女子の余計な恨みを買いたくないのでできる限りイケメンから遠ざかりたい。
そう思い小さくため息をついていると、突然前の人がこちらの方を振り向いてきた。
「……小倉遼。よろしく」
「えっ?!あ、はい、よろしくお願いします」
まさか挨拶されるとは思ってなくて、思いっきり動揺した。
小倉――君、は気にしていないようで、また元の位置に戻ってしまった。
それからすぐにLHRが始まり、新学期の課題提出や連絡事項が言われる。でも、そんな話より私はさっきの小倉君の自己紹介を聞いて気が気じゃなかった。
クラスメイトで、小倉で、漢字は分からないけれど下の名前まで一緒って……?
桃井君、エーデルシュタイン、小倉君。
もしかして、この世界、ギャルゲのヒロインが男になっているのではないか。
そう思ってしまうのも、仕方ないよね?
で、でも、私には関係ないし?きっとモブだし?
悪寒がしたので、LHRが終わった後誰にも話しかけずにダッシュで帰宅した。
そういえば確認するのを忘れていたと思い、その日の帰り家の表札を見ると『伊野瀬』だった。といことは私も将来的には伊野瀬になるのだろう。
――――私をこの世界に転生させた神様がいるというのなら一言申したい。
これ、全員性転換した配役ならむしろ乙女ゲームだよね!?
「伊野瀬って主人公のデフォルト名字だよ!!」
私の叫びは虚しく空に響いた。
貧乏性なので昔書いていたネタを初めだけリメイクしました。
書き溜めれれば連載にしようと思ってます。