初戦闘
戦闘描写は淡々となって行ってしまうので苦手です。
主人公無双回。
「あぢぃ〜、まじで疲れた」
かれこれ三時間は歩いている。魔王化をしていない時は前と変わらないスペックな訳だから、この日照りはキツイものがある。
幸い水は近くに小川を見つけたので、問題無い。今はその小川沿いに王都に向かっている。
検証した称号は、『破壊衝動』と『死の淵からの生還者』だ。
『破壊衝動』は3分ほどすると収まった。何を壊すかくらいは、選ぶ事は出来るみたいだ。
『死の淵からの生還者』の検証では魔王化した爪で、手の甲に傷をつけた。およそ1分で傷が完全に塞がってしまった。短期決戦ではあまり意味は無いが、長期戦ではかなり使える能力だろう。
次に魔法だ。〈イロージョン〉をその辺に落ちてた小石に使ってみる。
「〈イロージョン〉」
するとサラサラと、表面から砂のようになっていく。触っていないと効果は無いみたいだが、逆に言えば特殊なコーティングをされていたとしても触れさえすれば侵食出来る訳だ。
もう一つの黒魔法も使ってみる。
「〈リジェクション〉」
俺を中心に半径二メートル程度の、薄紫色をした少し厚みのある半球が現れる。大きさは自由に変更できるみたいだ。近づければ厚くなり、遠ざかると薄くなっていく。
「斥力だっけか?」
〈リジェクション〉を解除した石を投げてみると、薄紫色の壁を通り抜ける時に加速していた。
その後も色々試してみると、二つのことが分かった。
壁の厚みと斥力の強さは比例する。これは何と無く予想は出来ていた。
全く予想だにしなかったのは、こっちの使い方だ。この魔法、探知系の魔法としても使える。範囲を最大まで引き延ばし壁を極薄にすると、壁をなにが通り抜けているのかが分かるようになった。まぁ、中で何をしても分からないけど。『索敵』と、呼ぶことにした。
MPも半分くらい減った。最後におそらく攻撃魔法の〈プロミネンス〉を使用する。今の所遭遇して無いが、いつ出てくるか分からないからな。
「〈プロミネンス〉」
手のひらから鞭のように熱線が出ている。手を横薙ぎすると、当たった木々が真っ二つになる。凄まじい威力だがその分消費魔力も大きい。5秒程で魔力が四分の一削られた。
魔力も心もとなくなっているので、〈リジェクション〉を張ってその中で昼寝をすることにした。
〈リジェクション〉は、一度張ると込められた魔力が尽きるまで切れることは無い。もちろん任意で解除することは出来る。
三時間ぶっ続けで歩いた所為で、予想以上に疲労が溜まっていたようだ。〈リジェクション〉を張り終わると泥のように眠った。
♢
「ふあぁぁ。よく寝たな。」
少し寝すぎたようだ。一時間程度で起きるつもりだったのだが、辺りはもう暗い。〈リジェクション〉も切れている。
「月明かりだけでも十分だと思うけど、一応『魔王化』」
メキメキという音とともにツノが生えてくる。『魔王化』の状態を解く時に気がついたのだが、『魔王化』していると五感が半端無く研ぎ澄まされる。
これで、見えなくとも問題無い。
「ん? なんだか昼間より体が軽い感じがするな。もしかして魔物って夜行性なのか?」
ポーン…『はい、大抵の魔物は夜行性です。王都周辺 (日が昇って沈むまでに、移動出来
る距離)の主な魔物は、三種類でゴブリン、コボルド、オークです。
どれも夜行性で、昼間の間は自分の集落で暮らし夜になると狩りを始めます。しかし、量が増えるだけで昼間でもかなりの数がいます』
うーん残念だ。向こうの生き物は殺したらダメだったから、見つけたら殺そうと思ってたのに。
「あ、夜だからかなりいるハズだよな」
『サーチ』を限界まで広げて使う。すると、ギリギリの所で何かが引っかかった。オレはその方向に向かって駆け出す。
「クク、見つけたぞ! 誰でもいいから殺りたい気分なんだよなぁ‼︎」
先の方からギイギイ鳴き声が聞こえる。さらに進んで行くと、緑の肌をした子供のような背をした魔物がいる。多分ゴブリンだろう。
ゴブリンを見ると強烈な殺意がこみ上げてくる。
『魔王化』したせいだろうか?
六匹のゴブリンが、棍棒や鎌を振り上げて威嚇している。
「ひゃっはあぁぁーーーっっ!!!死ねぇぇぇ屑どもがぁーーっ‼︎〈プロミネンス〉っ」
手を横に凪いだことによって、三匹のクビが飛んだ。仲間を殺されたゴブリンは一匹で、棍棒を振りかぶって突っ込んでくる。
「〈リジェクション〉‼︎」
「ギッッ⁉︎」
ゴブリンが攻撃をしようと、ジャンプをした瞬間に発動する。すると、空中では抵抗することが出来ずに吹き飛ばされる。
飛んで行ったゴブリンは、木にぶつかり「ぐちゃり」と言う音を立てて潰れた。
数秒で半分以上の仲間が殺されたゴブリン達は、慌てて逃げ出す。
「逃げんな!オラッ‼︎」
「ギグゥ!ギイィィィィ‼︎」
残りの2匹を爪で切り裂く。自分での爪ながら、すごい威力だ。さながら気分は犬○叉である。
「イヒヒヒ、クククク」
こっちに来てからの始めての殺しだったせいなのか、声を上げると魔物が集まってくるからダメだということは分かり切ってはいるのだがどうにも抑えられない。『魔王化』の弊害か。
「フヒッ、フッフハハハハハアアァァァァァざいっごゔだぁーーー‼︎‼︎‼︎」
笑過ぎで喉がおかしくなる。気分が高まり制御が難しくなっていく。それから夜が明けるまで笑い声が止むことはなかった。
倒した魔物の数
・ゴブリン
61体
・コボルド
32体
・オーク
12体
レベル1→7