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勇者様に迫る魔の手もとい巨乳。

「賢者さん!酒場ってところに連れてってよ!」


唐突にそんなことを言われた私はとても驚きました。

私の頭の中にはいくつかの選択肢が。


今ここで。

『こら♪子供がお酒なんてダ・メ・だ・ぞ(はぁと』


それとも、お酒をたくさん飲ませて酔い潰れた勇者様に。

『大丈夫ですか勇者様。ほら、私の部屋で休んでいってください』

からの頂きまーす!


もしくは

『何か用事ですか?』


これだ。流石に最初のはキャラが違うし私も少し恥ずかしいので。二つ目は、勇者様にお酒はやはりまだ早いという保護者的観点から。

ここは無難にいつも通りの常識人で行きましょう。


「何か用事ですか?」


「うん!王様がね、酒場で仲間を作った方がいいって!」


「勇者様…少しお待ち頂けますか?」


「え?うん、わかった!」


笑顔で頷く勇者様を抱き締めて挟んだ後、王宮に怒鳴り込む私でした。


「近衛は全て無力化してあります。何故勇者様にそんな要らぬ知恵を」


国王の"国王"に短剣を突き付けた状態で私は訊ねました。


「お、王として当然の助言をしただけじゃよ!」


「なんなら女王になっていただいてもいいんですよ!」


その時、後ろから声がしました。


「賢者さぁん!」


見ると、勇者様が手を振りながらこちらに走ってきます。


「…命拾いしましたね」


国王に耳打ちして、短剣を仕舞う私。そして笑顔で勇者様を抱き止めます。


「もうっ、待っててくださいと言ったじゃないですか」


「あのね、すぐに賢者さんに伝えたいことがあるんだ!」


あぁ、なんとかわいらしい。


「はい、何でしょう?」


勇者様の頭を優しく撫でながら、私は訊ねました。


「仲間になりたいって人が来たんだ!」


「そうですか、仲間…に…」


思わず手が止まった私を、勇者様は心配そうに見上げていました。


「賢者さん?」


「そ、そうですか!女性ではありませんよね?」


笑顔が引きつっているのが自分でもわかりました。その表情にやや戸惑いながら。


「あ、あの、わかんなくて…」


勇者様は答えたのでした。











そして。


「よぉ!あんたが賢者?」


勇者様に手を引かれて来た広場に待っていたのは、赤い鎧を来た戦士でした。

口調は荒く、素振りも粗暴ですので、性別がわからないと答えたのでしょう。ですが勇者様。

女性でさえそう居ない私と同レベルの巨乳の時点で気付いてください。この人は間違いなく女性です。


「え、えぇ。賢者です。あなたは戦士ですか?」


「おう!見ての通り戦士だ。前衛なら任せてくれよ!」


そう言って差し出した彼女の手を、私は笑顔で握りました。全力で。


「っ…!?随分気合い入ってんなぁ…」


「いえ、あまりにも綺麗な方でしたのでつい!」


「そりゃ嬉しいけどよ、あんたに言われてもどうもなあ…あんたこそ滅茶苦茶美人じゃねえかよ」


「あー、ありがとうございますー」


「お、おう」


その乳で勇者様をたぶらかそうとは、この悪魔め!

私は絶対に勇者様を渡しませんよ!


「ふ、二人とも仲良くしてね…」


勇者様がおどおどと言ったのでした。






「も、もう無理だよぉ…」


「おいおい、お前男だろぉ?ほら、あと二十回!頑張れ!」


早速この脳筋女は勇者様に特訓を始めたのでした。腹筋なんてさせやがって。勇者様のかわいいお腹が、お前の腹筋みたいに割れたらただじゃおきませんからね。


「ふぅっ!うぅん!」


「あと七回!」


あぁ、あんなに辛そうに腹筋をする勇者様。汗をかいて。

はい、これはこれでありですね。その点は感謝します。


「はぁっ…はぁ…」


「よおし、よくやった!」


しゃがみこんで勇者様の頭を撫でる戦士。それは私の特権です。


「今日はこれで終わりにするか!よし、賢者も飯食いに行こうぜ!」


「えぇ」


空かさず私は勇者様の隣へ。そして頭を優しく撫でます。


「よく頑張りましたね、勇者様」


「うんっ!」


やはりこの笑顔の前には全てが無力です。






その後、食事を終えた私達。

戦士が私を呼び出しました。勇者様はお風呂に入っていて、出来れば乱入したかったのに。


「賢者さんよ、あんたが勇者に対して何を望んでるかバレバレだぜ?」


「そういうあなたこそ、露骨過ぎるアプローチですよ」


路地裏で睨み合う私達。一触即発の空気が漂っています。


「お前も勇者を…」


「あなたも勇者様を…」


少しの静寂の後、私達は同じタイミングで言いました。


「弟にしたいんだな!」


「恋人にしたいんですね!」


二人の間に沈黙が訪れます。


「えっと、ちょっと待てよ。賢者さん、今なんて言った?」


「そういうあなたこそ、何と?」






「つまり、だ。私が勇者を弟にして、賢者さんがその恋人になったところで私達の間に喧騒は生まれないよな?」


「えぇ、全くもって問題ないでしょう」


私達はお互いの目的が違うことを知り、勇者様を愛でる会を設立したのでした。




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