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GL  作者: 結城游眞
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出逢い

 暖かい空気になり始め、学校の庭には大きな桜の木がたくさんの花を咲かせている春。

 私、ゆきなはある人に勇気を込めて告白しようと屋上でその相手を待っている。

 その人は、同学年のりょう。

 りょうは少し男っぽくて頼りになる女の子。

 私はその子に一目惚れをしてしまった。

あれは、入学して中学一年生と言うものに馴れてきた頃。

私は小学生から好きな昼休みに寄る図書室で彼女と出会った。

いつものように窓辺にある席で好きな本を読んでいる時、ガラッと戸が開く音がする。

トコトコと歩いてくる足音は私に近づいてきたのだが、私は本の世界の中へと入り込んで居たため気づかなかった。

 足音は目の前で止まり向かいの席へと腰を下ろす。

何かをするわけでもなくただ私を眺めている。

チャイムが鳴る5分ほど前に向かいに座っていた人はゆっくりとその場を離れた。

チャイムが鳴り私は本の世界から現実の世界へと戻されたのだ。

「やばい!!次、移動授業だ!!」

ふと、向かいの席へと目をやると一枚の手紙がおいてあった。

「まただ……なんで気付かないのだろ、私」

内容はたわいない事。

『いつも、気付かないなんて変なの。どんだけ集中力あるんだよ』

などといった内容。

私は返事をしたくても誰かもわからない相手にどう返事をしたらいいかわからなかった。

そんなある日、私は今まで読んでいた本が読み終わり現実の世界へ戻ってきた。

「おわった?」

 この声でようやく向かいに座っている人をみたのだ。そこにいたのはりょうだった。

これが、私とりょうの出逢い。

「えっ!?」

「驚いた?」

「うん」

「ゆきな全然気づいてくれないからかなり寂しかったよ」

「集中すると回りが見えなくなっちゃうから」

「そうだろうね。ほぼ毎日居たのにさ」

「そうなの!?」

「うそ。てか、こうやって話すの初めてだね」

 私は頷くだけ。

「休み時間でも一人で一人の世界に入り込んで話しづらかったよ」

「そうだったんだ、ごめん」

「いいよ。今、こうやって話できてるからさ」

「そうだね」

 久し振りに楽しく話をしているとチャイムが鳴った。

「行こっか」

 すっと立ち上がりそっと私の頭を撫でてくる。

 嫌ではなく妙に心地がよかった。

「あ、ごめん。つい」

 りょうは少し赤くなってる気がしたが、顔はすぐに背けそそくさと図書室を出る。

「いいのに、別に」

 私は髪を直しがら一人ポツリと呟き、りょうの後を追った。

 微妙な距離を保ちながら教室へ。

 教室はガヤガヤとまだ騒がしい。

 すると、りょうを見つけるやりょうは3人の女の子に囲まれてしまう。

「どこいってたの?」

 まずはあやか、あやかはギャルぽいんだけど、他の人とのギャルとは少し落ち着いている方だと思う。

 子供臭さが残ってるし、まだ勉強中です。って感じ

「最近、昼休み教室に居ないよね」

 次はりん。中学生の割には大人っぽくてだけど、たまに可愛いらしい笑顔をみせる。このグループの中のリーダ的存在かな。

 あと、大人しく人の話を聞いているのがみさき。みさきはあやかとは親友らしいから何も言わない。

 そしてまたチャイムが鳴った。



 授業が終わり帰りの支度をしていると

「ゆきな」

 私を呼ぶ声がするが聞こえない振りをした。

「ゆきな」

 今度は近くで声がする。

 ふと見上げると目の前にはりょうが居た。

「一緒に帰ろう?」

「あやか達は?」

「いいの」

 私は中学になってから初めて友達と読んでいいのかわからないが一緒に帰ることになった。

(寄り道しよっかな……)

 この時私は浮かれていた。

 りょうと初めての帰り道。

 友達と呼べる相手も居ない為、友達との距離感が上手く掴めずにいた。

 それに……。私は、若干長めの距離を離し歩いている。

「そんなに離れなくてもいいじゃん」

 くすくすと笑うりょう。

「う、うん」

 照れながらもりょうの後ろに付く。

 後ろなら、そう思っていたのだが、りょうは何も言わず私の隣に来た。

「これでようやく話が出来るね」

「う、うん」

「緊張してるの?」

「えっいや。うん……」

「緊張しなくていいのに、私だよ?」

「だから緊張するんだよ」

 なんて言えるはずもなく私はドキドキと鳴っている心臓の音を聞かれないように、気づかれないようにするのが精一杯だった。

「もう、駅だ……」

 りょうは少し沈んだ口調で言う。

「どこで降りるの?」

「○○駅で降りるよ」

「本当!? 私ひとつ前で降りるよ」

「まじで!?」

「今まで会わなかったのが不思議だね」

 私は照れたように笑うと

「ようやく笑ったね」

 りょうも笑った。

 私達は電車に乗りそこでようやく会話らしい会話をして私は電車を降りなくてはならない駅に着く。

「またね」

「またね」

 お互いに笑顔で手を振り別れた。

「今日は楽しかったな……あ。本屋寄るの忘れてた。まっ、いっか」

 私はるんるん気分で家へと帰る。


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